2024年新作モデルのうち、注目のダイバーズウォッチを5本選出して紹介する。昨今の技術の底上げにより、プレスリリースを賑わす新モデルの実用性は非常に高いレベルにある。このような背景の下、アイコニックなモデルを祖とするストーリー性のあるモデルや、ユーザーの要望に応えた新作、超高性能モデル、新テイストの新作などを取り上げる。
Text by Shinichi Sato
[2024年12月16日公開記事]
魅力的なモデルが多く並ぶダイバーズウォッチから2024年注目の新作5本を紹介
ダイバーズウォッチは、その名の通りダイビングに必要な性能が与えられたモデルであるが、その普及当初より、防水性能や信頼性の高さがミリタリー用途、あるいはスポーツに適したモデルとして用いられるようになった。そして、ミリタリーやスポーツのテイストをベースとしたファッションに取り入れられるようになり、腕時計の人気ジャンルとして、あるいはアイコニックなファッションアイテムとして現代では広く認知されている。また、昨今の技術の底上げにより、近年のモデルの完成度は高く、どのモデルも“間違いない”のと同時に、いずれも魅力的なので、選ぶのが難しいと思うユーザーも多いのではないか?
そこで今回は、アイコニックなモデルを祖とするストーリー性のあるモデルや、ユーザーの要望に応えた新作、超高性能モデル、新テイストの新作などを計5本紹介しよう。
オリエントスター「M42 ダイバー 1964 2nd エディション F6 デイト 200m」
自動巻き(Cal.F6N47)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。Tiケース(直径41mm、厚さ14.3mm)。200m防水。国内限定200本。19万2500円(税込み)。
オリエントは、星雲や星団、銀河にちなんだモデル名とデザイン、コンセプトとする「Mコレクションズ」を展開している。その中で「オリエントスター M42」はダイバーズウォッチのコレクションだ。M42はオリオン座の散光星雲で、ギリシャ神話の勇者オリオンは海神ポセイドンの子とされていることから着想を得ている。
今般紹介するのが「M42 ダイバー1964 2nd エディション F6 デイト 200m チタン リミテッド」だ。本作のベースは、1964年に登場した「カレンダーオートオリエント」である。ダイバーズウォッチ黎明期に誕生したカレンダーオートオリエントは、ミラーブラックダイアルにドットとバーのインデックスの組み合わせと、リュウズガードを持たないケースが特徴であった。
2024年はカレンダーオートオリエント誕生60周年にあたり、それを記念する限定モデルが本作である。そのデザインは、カレンダーオートオリエントをベースに、12時位置にパワーリザーブ表示を追加して現代的にアレンジしたものだ。記念限定モデルの特別な意匠は、ベゼル上のスケールや文字盤上の表示、各種針がゴールドカラーとなり、レギュラーモデルではブラックのサンレイ仕上げであった文字盤は光沢を抑えたチャコールグレーに改められている点となる。
ケース径41mm、厚さ14.3mmとそれなりのボリューム感がありつつ、チタン製であることで113gと軽量な仕立てとなっており、さらに、ISO 6425規格に示された200mスキューバ潜水用防水時計の要件を満たした現代的な性能を有する。特殊ダイバーズウォッチを作り慣れているセイコーエプソンの血脈が感じられる手堅い仕上がりである。
グラスヒュッテ・オリジナル「SeaQ」
自動巻き(Cal.39-11)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径39.5mm、厚さ12.15mm)。200m防水。152万9000円(税込み)
グラスヒュッテ・オリジナルの「SeaQ」は、2019年に発売が開始されたダイバーズウォッチコレクションだ。発表当時、クラシカルなドレスウォッチを得意とするグラスヒュッテ・オリジナルが発表した本格派のダイバーズウォッチとして、大きな話題を集めたものだ。それもそのはずで、搭載されるムーブメントCal.39-11が、グラスヒュッテリブ仕上げを施した3/4プレートにスワンネック微調整機構といったグラスヒュッテ・オリジナルの伝統的なムーブメントのディティールを備えていたためだ。
ただ、従来モデルのステンレススティールモデルではソリッドバッグ仕様しか用意されておらず、魅力的なディティールを備えたこのムーブメントを鑑賞することができなかった(18Kゴールドモデルにのみサファイアクリスタル製ケースバックが用意されていた)。ステンレススティールモデルでもムーブメントを鑑賞したいとの声が各所から挙がっていたのか、今年、サファイアクリスタル製ケースバック仕様の発売が開始された。しかも、従来モデルのユーザーは、今般発表されたサファイアクリスタル製ケースバックに有償で交換可能となっている。
改めてSeaQについて見てゆこう。クラシカルなダイバーズウォッチのフォーマットに、文字盤とベゼルの光沢感がモダンでエレガントなエッセンスとなっているデザインである。文字盤デザインは、偶数時は大型のアラビックインデックス、奇数時はバーインデックスとすることで、文字盤上をすっきりとさせながら視認性を高めている。時針はペンシル型、分針は先端に大型の三角形を備える形状で、この組み合わせがSeaQのアイコンである。ケースサイズはスポーツウォッチとしては程よい大きさの直径39.5mm、厚さ12.15mmである。また、性能面も不足はなく、ダイバーズウォッチの認証基準DIN 8306およびISO 6425に準拠した性能を有している。
ゼニス「デファイ リバイバル A3648」
自動巻き(Cal.エリート 670)。27石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径37mm、厚さ15.5mm)。600m防水。105万6000円(税込み)。
ゼニスは今年、1969年の歴史的なモデルを復刻した「デファイ リバイバル A3648」を発表した。オリジナルモデルの「デファイ A3648」は、「デファイ」コレクションおよび、そのダイバーズモデルとしても最初期のモデルとなる。ゼニスが近年取り組む、アイコニックな過去のリファレンスの復刻の中でも、ヴィンテージ ダイバーズウォッチが復刻されるのは本作が初である。
直径37mmのステンレススティールケースは、初代「デファイ」のシグネチャーである角張ったフォルムを踏襲し、オリジナルモデルに見られた14面のステンレススティールベゼルも受け継がれている。このベゼルは逆回転防止仕様となっており、かつてプレキシガラスで作られていたインサートはサファイアクリスタルで製作されている。
デファイ A3648の特徴であり本作のアイコンにもなっているのが、ブラックとオレンジのコントラストだ。ベゼルにはブライトオレンジに刻まれたブラックの目盛りが再現され、マットブラックの文字盤はオレンジカラーの針とミニッツトラックがコントラストを効かせている。4時位置のリュウズもオリジナル譲りのアイコンだ。ブレスレットは、ゲイフレアー社がオリジナルモデルのために製造していた5連ブレスレットを再現したもので、本作のヴィンテージテイストを生み出すのに欠かせないアイテムだろう。
本作ではサファイアクリスタル製ケースバックを採用しながらオリジナルモデル同様の600mの防水性能を備える。1969年当時、この防水機能はまさに偉業であり、本作がこれを踏襲するのは必然である。また、600mに相当する1969フィートは、A3648を含む「デファイ」ウォッチコレクションが発表された年という象徴的な数字である点も、本作にストーリー性を加えるのに一役買っている。
ロレックス「オイスターパーペチュアル ロレックス ディープシー」
自動巻き(Cal.3235)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYGケース(直径44mm、厚さ17.7mm)。3900m防水。751万800円(税込み)。
2008年発表以来、長らくオイスタースティール製モデルのみがレギュラーラインナップされてきたロレックス「オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシー」は、2022年にRLXチタン製で1万1000mという非常に高い防水性能を備えた「オイスター パーペチュアル ロレックス ディープシー チャレンジ」が追加されたのを機に、ラインナップの拡充が図られている。
今般取り上げる「オイスターパーペチュアル ロレックス ディープシー」Ref.136668LBは、オイスタースティール製モデル同様の3900mの防水性能を備える18Kイエローゴールド製モデルである。ゴールドの色調に映えるブルーラッカーダイアルと、ブルーのセラクロム製ベゼルインサート、ブルーのセラミックス製耐圧リングが組み合わされ、鮮やかかつ華やかな仕上がりとなっている。18KYG製ブレスレットは従来モデルと異なって中コマがポリッシュされてエレガントさが加えられている。ブレスレットの長さ調整を可能とするグライドロックエクステンションシステムを搭載するバックルも18KYG製だ。
エクストリームな環境に対応したモデルにてゴールド製の本作を選ぶ需要がどこにあるのかについて筆者には疑問が残るものの、性能は従来モデル同様の深海潜水が可能であり、外観品質も高く、着用感にも配慮したバックルが与えられているなど文句を付ける隙が無い。ロレックスの技術力を体感するには好適な選択肢であると言えるだろう。
オメガ「シーマスター ダイバー 300M」
自動巻き(Cal.8806)。35石。2万5200振動/時。SSケース(直径42mm、厚さ13.8mm)。パワーリザーブ約55時間。30気圧水。100万1000円(税込み)。
オメガの「シーマスター ダイバー 300M」は、極めて高い実用性を備えたモデルとして高く評価されている。ブラックを基調とした定番デザインに加え、爽やかな印象のブルーモデル、セラミックケースを採用してNATOストラップを組み合わせたミリタリーテイストのあるモデルなど、選択肢が多いのも特徴だ。
今年追加されたのは、メタリックな外装が目を引く新作である。全体はシルバーカラーに統一されており、ドレスウォッチを思わせるようなエレガントな色調である。ステンレススティール製の直径42mmのケースには、グレード5チタン製のベゼルが組み合わされる。このベゼルには、レーザー加工によってダイビングスケールが浮き彫りになっており、測時の機能を実現しながら本作特有の質感を生み出すのに一役買っている。
また、風防には従来のレギュラーモデルと異なるドーム型サファイアクリスタルを採用し、メッシュブレスレットの組み合わせが用意された。これらはいずれも「シーマスターダイバー 300M 007エディション」で採用されていたもので、本作にヴィンテージテイストを加えている点にも注目だ。
ムーブメントは、最高レベルの耐磁性能と、悪条件下でも安定した精度が得られることをテストした上で出荷されるマスター クロノメーターのCal.8806が搭載される。スペック上でこれを上回る性能を有するムーブメントおよび搭載モデルは数少なく、本作やオメガの各モデルを選択する大きな理由となり得るだろう。