日本、そして世界を代表する著名なジャーナリストたちに、2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回はYoutubeチャンネル『ウォッチ情熱応援団』のメインMC、団長がすべて実機を触ってみて「これぞ機械式! 楽しい!」と感じた5本を紹介する。団長の臨場感あふれる、時計ヘンタイらしい各モデルへのコメントは必見だ。
1位:オメガ「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」
1963年10月に行われたマーキュリー計画シグマ7ミッションにて、宇宙飛行士のウォルター・シラーが使用した私物の「スピードマスター CK 2998」へのオマージュ作品。
デザイン面では、サファイア風防のカーブのさせ方が素晴らしい。
ヴィンテージのヘサライト(強化樹脂)風防のデザインに限りなく近づけられており、オメガの本気を感じました。
機械は最新の“ムーンウォッチ”と同じCal.3861を搭載。
ソリッドバックなので動きこそ見えませんが、カムがグルっと大きく回転し、水平クラッチがガシャン! と噛む様を想像しながらプッシャーを操作する、その感触がもう、たまらなく好きです。
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径39.7mm)。5気圧防水。121万円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
2位:IWC「ポルトギーゼ オートマチック42」
私、このモデルは発表時から騒いでおります。笑
こんなにケースギリギリにまでムーブメント詰め込んだモデル、他にはないですよね。
触れるんじゃないか? と錯覚するほど、サファイアクリスタルバックから機械までの距離が近い。
この作り、機械好きにはド刺さり間違いないかと。
フェイス面は前作からほとんど変わっていないこともポイントです。
名作が名作たるゆえんは、ベースデザインを変えることなく進化し続けられることなのではないでしょうか。
「ポルトギーゼ」はまさにその典型かと。
進化させるべきポイントはしっかりと進化させ、ヘリテージな部分は分からないくらいこっそりと改良する。
その匙加減、IWCは本当に上手ですよね。
自動巻き(Cal.52011)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。SSケース(直径42.4mm、厚さ13mm)。5気圧防水。196万3500円(税込み)。(問)IWC Tel.0120-05-1868
3位:ブレゲ「タイプ XX クロノグラフ 2067RK」
ブレゲのコレクションの中でもっとも硬派なモデル「タイプ XX」シリーズ。
なんとなく予想はしてましたけど、ゴールドの展開が仲間入り。
でも予想できなかったのは、針や文字盤のデザインまで変えてきたことでした。
SSモデルはもうTHEがつくツールウォッチでしたが、こちらのゴールドは、サンレイ仕上げのブルー文字盤に、金の縁取りを施したインデックス、針の形状もペンシル型へと変更して、ここにも金の縁取りを追加。
ベゼルもブルーセラミックスを使用し、金の印字を施すことで非常に華やかな印象に仕上がっています。
さらにブレゲのロゴも金文字のアプライドという贅沢。
ブレゲにとって、ブランドカラーのブルーをまとわせるということは、こういうことなんだなと。
実に見事なバリエーション展開。
自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KRGケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。572万円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
4位:ブランパン「フィフティファゾムス レッドゴールド 42.3mm」
2023年にモデル誕生70周年を記念して登場した「Act.1」という限定モデルがありまして、その時に採用されたのが42.3mm径というケースサイズでした。
今回の新作で、そのサイズがレギュラー化されたということで、これまで45mm径では大きすぎると諦めていた方には、とてもうれしいリニューアルだったのではないでしょうか。
単に大きさを変えただけではなく、文字盤のデザインを変更している点は、やはり最高峰のダイバーズウォッチ。
ディテールにまったく抜かりがない。
また「フィフティ ファゾムス」には過去40mm径のサイズがあったり、「フィフティ ファゾムス バチスカーフ」という派生モデルには38mm径のサイズがあったりもするのですが、どちらも同ブランドのドレスウォッチ・「ヴィルレ」用の機械が使用されています。
対して今回のこの42.3mmのモデルに搭載されているのは、オリジナルの45mmに同じくCal.1315という機械。
つまり今回の新作は、派生ではなく正統進化。
世界最古のブランドが歩む、次なる歴史への序章となる作品なのです。
自動巻き(Cal.1315)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約120時間。18KRGケース(直径42.3mm、厚さ14.3mm)。300m防水。各509万3000円(税込み)。(問)ブランパン ブティック 銀座 Tel.03-6254-7233
5位:ショパール「L.U.C XPS フォレスト グリーン」
名前の通りのフォレストグリーンと、ブラウンカラーのカーフレザーの組み合わせがかっこいいバリエーション。
日付を持たないシンプルな3針スモセコ仕様と、計器のようなインデックス周りのデザインで、ヴィンテージな風合いをも感じさせる、今話題のクワイエットラグジュアリーな腕時計。
フェイス面の穏やかな雰囲気に対し、裏面から見える自動巻きローターは22Kゴールド素材、歯車類もゴールドカラーで仕上げられており、時を刻む様子を贅沢に楽しむことができます。
独特な形状のラチェット式自動巻きで、ローターが回る度にカラカラっと腕に伝わる振動も楽しい。
自動巻きで7.2mmというケースの薄さもさすがショパールですよね。
80%以上がリサイクル素材によって作られる独自のルーセントスティールにも注目。
自動巻き(Cal.L.U.C 96.12-L)。29石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。ルーセントスティールケース(直径40mm、厚さ7.2mm)。30m防水。174万9000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
総評
長く続いたラグジュアリースポーツウォッチのトレンドは、作り手のみならず、間違いなく私達一般ユーザーの審美眼をも養ったことでしょう。
外装が良いことは、もはや当たり前になったように感じています。
ということで、昨年はデザイン面で目を引いた時計を選択した私も、今年はまた機械推しに逆戻りしました。
特に今、個人的にブームなのは、特定のジャンルに限らず「触って楽しい時計」です。
今回の5モデルも、すべて実機を触ってみて「これぞ機械式! 楽しい!」と思えたものを選ばせていただきました。
ちなみに触って楽しいというのは、操作するのも楽しいし、操作しなくても楽しいし、というだいぶ大きな枠組みで判断しております。
もちろん「タイプ XX」のように、リセットボタンを押している時、ダイレクトに機械とつながっている感じが楽しすぎる! みたいなわかりやすいものもありますが、もっと自然なものでもいいのです。
自動巻きの様子が見えるとか、音が聞こえるとか。
時刻合わせする時の針の動きが好きとか。
デイトのクイックチェンジの音がいいとか。
ブレスレットのコマが動く感じが好きとか。
回転ベゼルの指触りがいいとか。
……全然自然じゃないですね。
だいぶヘンタイな話になってきたのでこのくらいにしておきます。
まとめると、デザインや外装の作りに不安がない時代だからこその、贅沢な嗜好なのかもしれませんね。
ウォッチ情熱応援団 団長のプロフィール
腕時計の面白さを伝えるYoutubeチャンネル・ウォッチ情熱応援団のメインMC。
モノづくりに憧れ、東証一部の電機メーカーへ研究職として就職。しかしマスプロダクトではなく『手仕事』への興味を自覚したことで職人の世界へ転身。
『クラフトマンシップへの賞賛』をテーマに年間およそ300本、6年間で2,000本を超える動画を投稿。累計再生回数は5,820万回(2024年12月時点)を超える。