スイスとの国交樹立160周年に、ライターの柴田充が選ぶ【2024年新作時計ベスト5】

FEATUREその他
2024.12.25

2024年に発表された新作時計の中から、時計のプロがベスト5を選ぶ企画。今回の選者はライターの柴田充だ。今年はスイスとの国交樹立160周年であることから「日本と関わる時計」を選びつつ、個人的に食指が動いたモデルもピックアップしたという。

ジラール・ペルゴ ロレアート


1位:グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」

クワイエットラグジュアリーはファッションの世界だけではない。主ゼンマイを巻く手間を鳥のついばむ動きと音の楽しみに変えた。さらにハイビートの精度とチタンの軽量さを備え、次世代の手巻き式を示唆する。

グランドセイコー エボリューション9

グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」Ref.SLGW003
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。日常生活用防水。152万9000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617


2位:ジラール・ぺルゴ「ロレアート 藍色 ジャパン エディション」

これまでも葛飾北斎の名画をクロワゾネで描いたり、ジャパンブルーを細部に採用したりするなど、日本文化が息づくジラール・ぺルゴの限定モデルはレアな仕様で人気が高い。新作は藍色をテーマにしており、フランケ装飾のエナメル文字盤の美しさに目を見張る。

ジラール・ぺルゴ「ロレアート 藍色 ジャパンエディション」Ref.81010-11-3310-1GM
自動巻き(Cal.GP01800-1730)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。SSケース(直径42mm、厚さ10.68mm)。サンレイ モチーフ ギョーシェ仕上げのグラン・フー ブルー エナメル文字盤。100m防水。日本限定100本。258万5000円(税込み)。(問)ソーウインド ジャパン Tel.03-5211-1791


3位:モリッツ・グロスマン「37アラビック ジャパンリミテッド」

世界唯一のブティックが来年10周年を迎えるのを祝して発売されたこのモデルは、程よいサイズとモダンクラシックなスタイルに用の美が宿る。これも日本との深い信頼関係があってのことだ。ケースの磨きは質感を立体的に表現しており、驚くべきレベル。

モリッツ・グロスマン「37アラビック ジャパンリミテッド」 Ref.
手巻き(Cal.102.1)。22石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(直径37mm、厚さ9.2mm)。世界限定18本。予価605万円(税込み)。2025年以降順次入荷予定。(問)モリッツ・グロスマン ブティック Tel.03-5615-8185


4位:ハミルトン「カーキ フィールドチタニウム エンジニアド ガーメンツ リミテッドエディション」

ファッションブランドとのコラボというと、ネームバリュー先行のものも多いが、これは小径サイズにチタンを採用。カレンダーを省き、コラボの表記もない。エンジニアド ガーメンツらしさをくんだハミルトンの英断だ。

ハミルトン×エンジニアド ガーメンツ

ハミルトン「カーキ フィールド チタニウム エンジニアド ガーメンツ リミテッドエディション」Ref.H70235130
自動巻き(Cal.H-10)。25石。パワーリザーブ約80時間。Tiケース(直径36mm、厚さ10.6mm)。10気圧防水。16万9400円(税込み)。(問)ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7371


5位:オメガ「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」

復刻が登場する度、内容はより精査されてきた。はたしてどこで手を打つべきか。その最終結論かもしれない。手巻き式Cal.3861を積み、風防もサファイアクリスタルガラスに。決定打はオリジナルサイズに近づいたことだ。

オメガ スピードマスター 310.30.40.50.06.001

オメガ「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」Ref.310.30.40.50.06.001
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径39.7mm、厚さ13.4mm)。50m防水。121万円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087


総評

今年、日本とスイスは国交樹立160周年を迎えた。それは、スイス時計が初めて正式上陸した記念すべき年でもある。以降スイス時計は日本に浸透し、今年6月の日本への輸出金額は北米に次ぐ世界第2位を記録したほど。中国不況やインバウンドなどが重なったフロックだったとしても感慨深い。その一方で今後の日本のプレゼンスや果たすべき役割も自覚する。そんな視点から選んだ「日本と関わる時計」だ。

ヴィム・ヴェンダースの『パーフェクトデイズ』が描いた現代の時代観に重なったのがグランドセイコーの手巻き式ハイビートだ。そしてジラール・ペルゴの日本限定は、ブランドの最高峰コレクションであるエタニティのみのエクスクルーシブな仕様で日本との固い絆を表現した。モリッツ・グロスマンの日本上陸10周年を記念した限定モデルには、日本からの提案でしみじみとした情趣が伝わる。そして買いそびれて悔しい思いをしたのがハミルトン。エンジニアド ガーメンツ率いる鈴木大器氏のこだわりが存分に注がれる。最後のオメガは、日本とはとくに関連はないが、個人的に食指をそそられているため。

秋には日本をテーマにしたフィリップスによる時計オークションTOKI-刻-が香港で開催された。落札者はアジアや中東中心だったようだが、欧米でも関心は高い。日本から世界への発信とともに、来年のベスト5には国産ブランドが並ぶことを予感するのだ。



選者のプロフィール

柴田充

柴田充

1962年生まれ。時計をはじめ、クルマやファッションなど男性の趣味の世界をテーマに、ライフスタイル誌や時計専門誌で編集執筆。


【2024年新作】グランドセイコー Cal.9SA4搭載モデルを深掘り。ずっと巻き上げていたくなるんですよ!

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