2024年に発表された新作時計の中から、時計のプロがベスト5を選ぶ企画。今回はライター/編集者として活躍するロック福田こと福田豊が選んだ5本を紹介する。福田が優勝! と称したのは、歴史的なカレンダーウォッチであるIWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」。また、IWCを除く4本すべてが国産時計だった点も注目だ。
優勝:IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」
「ダ・ヴィンチ・パーペチュアル・カレンダー・クロノグラフ」の進化の到達点というべきセキュラー・パーペチュアルカレンダーモデル。しかもその進化が、既存のパーペチュアルカレンダー機構にわずか8つのパーツを追加したのみ、という簡潔さもIWCらしく素晴らしい。間違いなしに優勝! の歴史に残る大名作。SSケースの普及版が出たら買えるかしら(それでも無理かな)。
自動巻き(Cal.52640)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約168時間。Ptケース(直径44.4mm、厚さ14.9mm)。5気圧防水。要価格問い合わせ。(問)IWC Tel.0120-05-1868
1位:大塚ローテック「6号」
世界的に注目されている日本のマイクロブランドの、世界的に注目されているモデル。というのはともかく、King Crimson『Red』のジャケット裏のメーターを思わすデザインが筆者の好み。さらにレトログラード針の帰零用バネにギターの1弦(しかもERNIE BALLのSuper Slinky)を使用というのが完全にツボ。本気で買おうか検討中。
自動巻き(Cal.9015+自社製ジャンピングアワーモジュール)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径42.6mm、厚さ11.8mm)。44万円(税込み)。(問)大塚ローテック https://otsuka-lotec.com
2位:NAOYA HIDA & Co.「NH TYPE 5A」
NAOYA HIDA & Co.初の角型モデル。ムーブメントは旧プゾー(現ETA)のCal.7001を仕立て直した角型で、角型ケースには角型ムーブメント、という正しさがよい。そして、大きなムーブメントが小さなケースに入っている、というのが最高。飛田さんならではの、巻き心地と音へのこだわりも素晴らしい。買えるなら、ぜひ買いたいと思う。
手巻き(Cal.2524SS)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(全長33mm、全幅26mm、厚さ9.1mm)。3気圧防水。330万円(税込み)。(問)NAOYA HIDA & Co.naoyahidawatch.com
3位:グランドセイコー「エボリューション9 コレクション 手巻メカニカルハイビート36000 80 Hours モデル」
今年のWatches and Wondersの大話題作のひとつ。傑作ムーブメントであるCal.9SA5を手巻きにしたCal.9SA4は、巻き上げ時の感触や音が心地よく、裏面に覗くコハゼが小鳥にように動く様子が目にも楽しい。そしてこれも、大きなムーブメントが小さなケースに入っている、というのが最高。本気で欲しいと思っている。
手巻き(Cal.9SA4)。47石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約80時間。ブリリアントハードチタンケース(直径38.6mm、厚さ9.95mm)。日常生活用防水。152万9000円(税込み)。(問)セイコーウオッチお客様相談室(グランドセイコー) Tel.0120-302-617
4位:シチズン「『CITIZEN』ブランド時計 100周年記念 懐中時計」
今年は「CITIZEN」の名を冠した時計の発売100周年で、それを記念した限定作。やはり傑作ムーブメントであるCal.0200をベースに手巻きに新設計したCal.0270が大きな見どころ。そしてこの限定モデルは既に完売だろうが、この手巻きムーブメントが搭載されるであろう、次の新作腕時計が楽しみ。それをぜひ欲しいと思っている。
手巻き(Cal.0270)。18石。2万8800振動/時。Tiケース(直径43.5mm、厚さ13.4mm)。日常生活用防水。世界限定100個。完売。(問)シチズンお客様時計相談室 Tel.0120-78-4807
総評
IWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」を除いて、すべて日本のブランドの時計だが、特に意味や理由はない。いつものように「欲しい」と思うモデルを選んだら、たまたまそうなっただけだ。
この5本以外にも、カルティエのプリヴェ「トーチュ 」モノプッシャークロノグラフやローラン・フェリエ「クラシック・ムーン」、パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス 5738/1」、ピアジェ「ピアジェ ポロ 79」は欲しいと思う(けど、きっと買えない)。
パテック フィリップ「キュビタス」も大いに気になっているが、まだ実機に触れたことがないので選外とした。実際に見て触れば(いつものパテック フィリップのように)必ずや素晴らしいモデルなのだろう。でも、これもきっと買えないだろうな。
なお、よくご存じであろうが、優勝のIWC「ポルトギーゼ・エターナル・カレンダー」は今年のGPHGの最高位の「金の針賞」を受賞。ギネス世界記録認定の「最も精密なムーンフェイズ腕時計」でもある。
そして、1位の大塚ローテック「6号」もGPHGの「チャレンジ ウォッチ賞」を受賞したモデル。創業者兼代表の片山次朗氏は先の11月に「現代の名工」に選出されている。
選者のプロフィール
福田豊
ライター、編集者。もともとは建築家であったが、ひょんなことから、出版界に移籍。『エスクァイア日本版』広告営業、編集部の後、現職。『LEON』『ENGINE』『GQ』『クロノス日本版』などの雑誌やwebで、ファッション、時計、クルマ、旅など、男性のライフスタイル全般について執筆。webマガジン『FORZA STYLE』で時計を担当。動画連載「ロック福田の腕時計魂!」に出演中。https://www.instagram.com/fukuda1959/?hl=ja