ロレックスの「オイスター パーペチュアル GMTマスター II」は、1955年にGMT機能を備えるプロフェッショナル向けのタイムピースとして誕生し、現在まで幾度とないアップグレードが行われてきた。今回は本コレクションの現行ラインナップについて、代表的なモデルを一挙に紹介する。
Text by Kento Nii
[2024年12月21日公開記事]
ロレックスの現行GMTマスターIIを一挙紹介!
「オイスター パーペチュアル GMTマスター II(以下、GMTマスター II)」は、「GMTマスター」の後継にあたるコレクションだ。
航空産業の発展が進む1955年に登場したGMTマスターは、米国の航空会社、パン・アメリカン航空からの依頼に応える形で製作された経緯を持つ。優れた視認性を誇るとともに、GMT針と回転ベゼルを使うことで、ローカルタイムと第2時間帯を同時に表示できるGMT機能を備えたことで、同社のオフィシャルウォッチに採用されただけでなく、一般ユーザーからも高い支持を集めてきた。
その後GMTマスターは防水性や操作性の向上といった改良が重ねられ、1982年には、後継機としてGMTマスター IIが登場する。その最大の変更点には、ローカルタイムの時針を単独で、なおかつ秒針を止めることなく操作できるようになったことが挙げられるだろう。これにより、GMTマスターIIは、第2時間帯だけでなく、第3時間帯の表示をも可能としたのである。
GMTマスターが生産終了となったものの、GMTマスター IIはさまざまなカラーリング、素材を採用したモデルが豊富にラインナップされている。ひときわカラフルなコレクションとして、ブランドの中でも存在感を放つタイムピースである。
GMTマスター IIの特徴
現行のGMTマスター IIの特徴には、当然ながらその回転ベゼルが挙げられる。紫外線と腐食に強いハイテクセラミックスである、セラクロム製のインサートが採用されており、ツヤのある質感と優れた耐傷性が与えられているのだ。
また、このセラクロム製インサートが持つ、昼夜で分けられたバイカラーも特筆すべきポイントだ。コレクションを象徴するレッドとブルーの組み合わせをはじめ、豊富なカラーコンビネーションが展開されており、その色合いはさまざまな愛称の由来にもなっている。現在のGMTマスター IIの高い人気に、大きく貢献した意匠と言えるだろう。
GMTマスター IIの種類
以下に、GMTマスター IIの現行ラインナップにおける代表的なモデルを、ケースに使用されている素材ごとにピックアップして紹介する。
ステンレススティールモデル
GMTマスター Ⅱのステンレススティールモデルには、ロレックスのその他のモデルと同様に、オイスタースチールが採用されている。この素材は、航空宇宙や化学産業でも使用される904Lスチールの1種であり、腕時計に卓越した耐食性と堅牢性を与えるものとなっている。
Ref.126710BLNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40mm)。100m防水。
Ref.126710BLNRは、クールなブラックとブルーのバイカラーを持つことから、“バットマン”の愛称で親しまれるステンレススティールモデルだ。ダイアルはブラックで、ベゼルと同じくブルーに染められたGMT針が、表情に涼しげなアクセントを加えている。豊富なカラーリングが展開されるGMTマスター Ⅱの中でも、特にオンオフ問わずに使える1本だろう。
ブレスレットはジュビリーブレスレットとオイスターブレスレットから選択が可能だ。いずれもそのクラスプは、特許取得済みのセーフティーキャッチ付きオイスターロッククラスプを備えており、誤操作によって開かないようになっている。また、イージーリンク(エクステンションリンク)システムによって、クラスプ部分で約5mmのサイズ調整が可能となっている。
ムーブメントは、Cal.3285を搭載する。高精度クロノメーター認定の下、ケーシング後で日差-2~+2秒の高精度を誇っており、ブルー パラクロム・ヘアスプリングと高性能パラフレックス ショック・アブソーバの採用によって、優れた耐磁性と安定性も与えられている。また、パワーリザーブは、約70時間を有している。
なお、GMTマスター IIの現行のラインナップでは、共通して本ムーブメントが採用されている。
Ref. 126720VTNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径40mm)。100m防水。
グリーンとブラックのバイカラーを持つステンレススティールモデル。特筆すべきは、3時位置ではなく9時位置にリュウズが配置されている点だ。左利きに向けられたかのようなその設計から、“レフティ”と称されることもあり、2022年の登場時には大きな話題を集めた。
本作は、他のモデルと同様のCal.3285を180度回転させてから搭載しているのにもかかわらず、ロレックスが定める精度基準をクリアしている。ムーブメントの向きをひっくり返すというのは、姿勢差誤差の問題から、精度との両立が難しい。そのため本作は、ロレックスの時計製造技術の高さをうかがえるモデルとも言える。
ブレスレットは、上述モデルと同様に、ジュビリーブレスレットまたはオイスターブレスレットが用意されている。
コンビモデル
ロレックスにおいて、18Kゴールドとオイスタースチールを組み合わせたコンビモデルは「ロレゾール」と呼ばれ、1930年台初頭より、さまざまなコレクションで採用されてきた。現行のGMTマスター IIでは、18Kイエローゴールドと、18Kエバーローズゴールドをそれぞれ用いた、2種のロレゾールモデルが展開されている。
Ref.126713GRNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×18KYGケース(直径40mm)。100m防水。
Ref.126713GRNRは、2023年に登場したイエローロレゾールモデルだ。ブラックのダイアルには同色のゴールドで縁取られた針とインデックスが載せられ、ベゼルにもブラックとグレーのバイカラーを持つインサートが採用されたことで、腕時計全体で目を引くコントラストが演出されている。さらに、エレガントなジュビリーブレスレットが採用されており、往年の“コンビモデル”のような風格も楽しめる1本に仕上がっている。
Ref.126711CHNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SS×18Kエバーローズゴールドケース(直径40mm)。100m防水。
18Kエバーローズゴールドを使用したロレゾールモデル。このゴールドは、耐食性に優れるロレックス独自のピンクゴールドであり、男女問わず合わせやすい、温かみのある色調もその魅力に挙げられる。本作では、上述のイエローロレゾールモデルと同様の構成が採られ、ベゼルにはゴールドの色調と調和するブラックとブラウンのセラクロムインサートが備わっている。全体に落ち着いた色気が漂う1本だ。
18Kゴールドモデル
GMTマスター Ⅱは、イエロー、ホワイト、エバーローズの3種の18Kゴールドを使用したモデルも用意されている。中には特別なダイアルが採用されているモデルもあり、目の肥えた腕時計愛好家も満足させる顔触れがそろう。
Ref.126718GRNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KYGケース(直径40mm)。100m防水。
ケース、ブレスレットに18Kイエローゴールドを使用したモデル。その表情はロレゾールモデルと同様に、ブラックとゴールドのコントラストが際立っており、輝きに満ちたケースは手元で圧倒的な存在感を演出する。腕時計において、最も一般的な貴金属であるイエローゴールドを採用していることもあり、腕時計のステータス性や高級感を追求するうえで、これ以上なくふさわしい1本と言えるだろう。
Ref.126715CHNR
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18Kエバーローズゴールドケース(直径40mm)。100m防水。
Ref.126715CHNR は、18Kエバーローズゴールドを使用した金無垢モデルだ。ベゼルインサートは、ロレゾールモデルと同様のブラウンとブラックの組み合わせで、通常の18Kピンクゴールドに比べて少し優しい色味によって、腕時計全体が温かみのある輝きで覆われている。ちなみに、このベゼルインサートの配色には、“カフェオレ”や“ルートビア”といった愛称が付けられている。
Ref.126719BLRO
自動巻き(Cal.3285)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KWGケース(直径40mm)。100m防水。
18Kホワイトゴールド製のケース、ブレスレットを備えるRef.126719BLROは、スタンダードなブルーダイアルのほか、GMTマスターⅡで唯一、メテオライトダイアルを採用したモデルだ。そのダイアルは自然由来の独自のテクスチャーを持ち、“ペプシ”と呼ばれる親しみ深いバイカラーを持つ本作を、特別なモデルに仕立て上げている。その唯一無二の仕様から、多くの愛好家から支持を集める1本だ。