ブライトリングの年間売り上げデータを基にした2024年の人気モデルTOP5を紹介する。今回はレディースモデル編だ。「プロフェッショナルのための計器」を提供することを標榜し、特にクロノグラフを得意とするブライトリング。一方で、2017年にジョージ・カーンがCEOに就任して以来、よりシンプルでさまざまなシーンに取り入れやすい3針モデルや、レディース向けのコンパクトなモデルの拡充が図られている。今回のランキングは、女性のみならず、時計ファンが現在のブライトリングのスタンスを知るうえで重要なデータとなるのではないだろうか?
Text by Shinichi Sato
[2024年12月26日公開記事]
ブライトリングのレディースモデル、 2024年の人気TOP5を発表
1884年の創業以来、プロフェッショナル向けの計器を製造してきたブライトリング。とりわけ航空技術が急速に発展する1930年代より航空機向け計器を製造した歴史を持ち、パイロットウォッチの代名詞のひとつ「ナビタイマー」が人気コレクションとなっている。近年では、プロフェッショナルな現場を支える機能を有しながらエレガントさも兼ね備えたコレクションとして「クロノマット」を再定義し、それに合わせてレディースモデルとしてコンパクトな3針モデルの充実も図っている点が注目だ。また、高い防水性能を備える「スーパーオーシャン」についても、防水性能を維持しながらシティユースにもマッチするポップなカラーリングや、クールなホワイトのワントーンモデルがラインナップされるなど、コレクションの幅が広がっている。
今回はそんなブライトリングの年間売り上げデータを基にした、2024年のレディースモデル人気TOP5を紹介する。
第5位:クロノマット オートマチック 36 ヴィクトリア・ベッカム
自動巻き(Cal.10)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KYGケース(直径36mm、厚さ10.01mm)。10気圧防水。世界限定100本。414万1500円(税込み)。
第5位にランクインしたのは、「クロノマット オートマチック 36 ヴィクトリア・ベッカム」の中でも、エレガントで煌びやかな18Kイエローゴールドケースに、シックで引き締まったミッドナイトブルー文字盤の組み合わせのモデルだ。
本作は、2008年立ち上げのファッションブランドであるヴィクトリア・ベッカムとブライトリングが共同でデザインしたモデルである。ミッドナイトブルー文字盤の本作の他に、爽やかなペパーミント、柔らかな印象のサンドのそれぞれの文字盤色が用意されている。また、ステンレスススティールケースモデルとして、ネイビーブルー、ペパーミント、ドーヴグレーの組み合わせもラインナップされている。秒針とブレスレットには、ヴィクトリア・ベッカムのイニシャルである“VB”があしらわれている点も本作のための特別なディティールだ。
さて、「クロノマット」は、イタリア空軍のアクロバット飛行チームのために製造されたモデルを元に、今日でもプロフェッショナル向けクロノグラフとして人気を集めているコレクションだ。2020年には、レディース向けラインとして、本作のベースとなった「クロノマット オートマチック36」の他、「クロノマット32」が追加されている。これらはクロノマットをシンプルな3針のデザインに落とし込みつつ、回転ベゼル、ベゼル上には取り外して配置を変更可能な「ライダータブ」、円柱状の部品を連ねたような「ルーローブレス」といったアイコニックな意匠を採用しているのが特徴である。ツールウォッチを由来とする武骨さと、エレガントさを両立させたデザインは現在のブライトリングらしいもので、この点が評価されたことによるランクインだと考えられる。
番外編:人気の高まりを見せるクロノマットの小径3針モデル
クォーツ(Cal.72)。3石。SSケース(直径32.0mm、厚さ8.4mm)。10気圧防水。59万4000円(税込み)。
先に述べたように、クロノマットはクロノグラフモデルとして長年人気を集めてきたが、クロノマット オートマチック 36 ヴィクトリア・ベッカムをはじめとした3針モデルの登場により、ラインナップの拡充が図られている。その中でも人気の高まりを見せるのが「クロノマット 28」である。
クロノマット 28は、クロノマットのデザインコードを引き継ぎながらケース径を28mmに改めたレディースモデルだ。2024年秋の発表であり、本年のTOP5にはランクインしなかったが注目度は高く、その売り上げを伸ばしている。特にブルーあるいはピンクのマザー・オブ・パール文字盤を採用する2モデルの人気は高く、2025年にはランクインすることが予想される注目株だ。それぞれ、インデックスにはラボグロウンダイヤモンドが配され、ブルーとピンクの淡い色調により、ストイックなツールウォッチとはひと味違う、柔らかで華やかな印象に仕立てられている。
第4位:ナビタイマー32
クォーツ(Cal.77)。3石。SSケース(直径32.0mm、厚さ8.0mm)。5気圧防水。59万4000円(税込み)。
第4位にランクインしたのは「ナビタイマー32」だ。「ナビタイマー」はブライトリングが1930年代より航空機向け計器を製造し、航空産業に貢献してきた歴史を色濃く反映しているコレクションである。その中でも、回転計算尺をベゼルに配するクロノグラフモデルは、ブライトリングだけでなく、パイロットクロノグラフの代表的モデルのひとつとなっている。
本作のような3針のナビタイマーは2018年に男性向けモデルとして初登場しており、2017年にジョージ・カーンがCEOに就任したことを考えると、新生ブライトリングがいち早く取り組んだラインナップと考えられる。本作は、レディースモデルとしてマザー・オブ・パール文字盤、インデックスにダイヤモンドを配したモデルで、時計の仕上がり厚さが8.0mmに抑えられている点も、エレガントさを生み出すひとつの要因であろう。丸みのある凹凸が設けられたベゼルと、斜めのラインが取り入れられた5連式のブレスレットは、コレクションに共通する意匠として取り入れられ、直径32mmとコンパクトな本作にインパクトを加えている。
第3位:ナビタイマー オートマチック36
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径36.0mm、厚さ11.4mm)。3気圧防水。69万8500円(税込み)。
第3位に輝いたのは「ナビタイマー オートマチック 36」である。第4位に引き続いてナビタイマーからランクインしており、人気の高さがうかがえる。本作はケース径36mmモデルであり、ナビタイマーの特徴である回転計算尺を備えている点にも注目だ。文字盤はドレッシーな装いにも合うシルバーカラーに、ゴールドカラーのインデックスと時分秒針が組み合わされる。クロノグラフモデルではストイックなツールウォッチらしさを生み出していた凹凸のあるベゼルも、本作ではエレガントさを加える装飾のように取り入れられている点が面白い。
今回はレディースモデルとして本作に注目しているが、ケース径36mmというサイズ感から、ブライトリングファンの男性が普段はクロノグラフモデルを、スーツスタイルに本作を選ぶような使い分けにも適しているのではないだろうか。あるいは、パートナーと本作をシェアするような使い方にもマッチしそうだ。
第2位:スーパーオーシャン オートマチック36
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS×18Kレッドゴールドケース(直径36.0mm、厚さ12.2mm)。300m防水。89万1000円(税込み)
第2位に輝いたのは、高い防水性能を備える「スーパーオーシャン オートマチック 36」のオンラインブティック限定モデルだ。
「スーパーオーシャン」は、スキューバダイビングが流行した1960年代に販売されていた「スーパーオーシャン スローモーション」のデザインを受け継いだコレクションで、マリンスポーツにも適する300m防水を備える。スーパーオーシャン スローモーションの特徴であった針先の大きなスクエアのポインターが本作でもアイコンとなっている。
本作はステンレススティール製で、ケース径36mmとダイビングウォッチとしてはコンパクトに仕立てられている。ここに、18Kレッドゴールド製ベゼルとリュウズが組み合わされ、ホワイトのセラミックス製ベゼルインサートとホワイトの文字盤により爽やかで華やかな仕上がりである。そして目を引くのがカラフルなインデックスと針で、蓄光塗料のスーパールミノバが虹色のグラデーション状に塗布されている。
ブライトリングの各モデルは、プロフェッショナル向けの計器であるというバックボーンから頑強でマッシブなデザインや、歴史的なモデルから受け継いできたシックなテイストでまとめられていることが多いが、本作は一段とポップな仕立てであることが人気につながったのではないだろうか。文字盤カラーと合わせてホワイトのラバーストラップが組み合わされている点も、本作のテイストに合ったコーディネートである。
第1位:スーパーオーシャン オートマチック36
自動巻き(Cal.17)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SSケース(直径36.0mm、厚さ12.2mm)。300m防水。63万8000円(税込み)。
第1位に輝いたのは第2位に引き続いて「スーパーオーシャン オートマチック36」である。こちらはホワイトのワントーンでまとめられたモデルで、スポーティーかつクールでエレガントな都会的な印象を備えている点が特徴だ。
ベゼルインサートにはホワイトのセラミックスが用いられており、発色が良く、素材由来の艶が魅力となっている。また、インデックスや針にもホワイトのスーパールミノバを塗布してカラーリングの統一感を生み出している。組み合わされるのはホワイトのラバーストラップである。ホワイトのモノトーンではあるが、セラミックスや、針やインデックスの縁取りとケースのシルバーカラー、マットな、そして型押しが施されたラバー等、質感がさまざまである点が人気の秘訣であろうか。
防水性能が高くマリンスポーツに好適なモデルであり、クールな印象にまとめられた本作が第1位となった結果から、ブライトリングを選ぶ女性ユーザー像がうかがえるのではなかろうか。