1857年創業の仏軍用航空時計メーカー、ドダーヌの血統を受け継ぐラボアが、約40年の休眠を経て復活を遂げた。1940年代の航空クロノグラフをモチーフにしたケース径39mmの「ヘリテージ・クロノグラフ」は、サーモンダイアルと確かな機械式クロノグラフ性能で、時計愛好家たちを魅了している。
仏軍用時計の名門ドダーヌから誕生した気高き血統
フランスの時計メーカー、ラボアが、2014年に再始動した。休眠状態に入って以降、10年ぶりのことだ。同社のカタログには、サーモンダイアルを備えた39mmのスティール製クロノグラフが収録されているが、これはヴィンテージの意匠を現代に再解釈した逸品である。50mの防水性能を備え、ラジューペレ製の手巻きムーブメントを搭載し、約60時間のパワーリザーブを実現している。
1940年代のラボア社製航空クロノグラフの意匠を継承。サーモンダイアルが目を引く。手巻き(ラジューペレ Cal.LC-450)。パワーリザーブ約60時間。ステンレススティールケース(直径39mm、厚さ10.5mm)。50メートル防水。62万7000円(税込み)
ラボアの歴史は、その源流を探ると1857年に設立されたドダーヌにまでさかのぼる。ドダーヌは、アルフォンス・ドダーヌと義理の父フランソワ-ザビエル・ジュベールによって創設された。ふたりは、スイス国境に面したフランスのラ・ラスにて、ドゥーズ渓谷の水力を活用した時計製造工房を設立した。その後、三代目当主となったレイモンド・ドダーヌが1929年に工場をブザンソンへ移転。そして1934年、新たなブランドとしてラボアを設立したのである。
多くの歴史あるブランドと同様に、ラボアも一度は市場から姿を消したものの、2014年初頭に、運命的な出会いがあった。現オーナーのトム・ヴァン・ウィジリック氏とその妻イヴリン夫人が、クリスティーズのオークションでラボアの存在を発見したのである。
愛好家たちとの協創で完成した渾身のヘリテージモデル
時計愛好家でもあるウィジリック氏は、米国のクラウドファンディング、キックスターターを通じて復興計画を始動。ブランドの権利をドダーヌ家から取得し、時計愛好家たちの意見を反映させながら、針やケースバックなど、細部にまでこだわったデザインを検討していった。その結果、2022年についに1940年代製造の航空クロノグラフをモチーフとしたプロトタイプが完成したのである。
細身のインデックスとパルスメーターを備えたバイコンパックスダイアル。3時位置に30分積算計、9時位置にスモールセコンドを配した水平レイアウトが、ヴィンテージクロノグラフらしき気品を感じさせる。
このヘリテージ・クロノグラフは、脈拍スケールを備えており、1940年代の同社のアイデンティティを見事に体現している。ダイアル外周のGRADUE POUR 30 PULSATIONSとは、30回カウント用目盛り付きの意味だ。
バイコンパックスダイアルは素晴らしく仕上げが施されており、すっきりとした印象を与えるノン・デイトダイアルを採用している。特にこのサーモンカラーは、際立って魅力的な仕上がりだ。ダイアルは反射防止加工を施したドーム型サファイアクリスタルによって保護されている。このデザインは、1940年代のラボア製ツーインダイアル・クロノグラフの、細身のローマン数字インデックスと30分積算計(3時位置)、スモールセコンド(9時位置)という特徴的なレイアウトを現代に継承している。
サファイアクリスタルバックからのぞくラジューペレ製手巻きムーブメントCal.LC-450。ブルーのコラムホイールやコート・ド・ジュネーブ装飾など、スイス伝統の仕上げが施されている。
伝統と革新が織りなす至高のクロノグラフ
ムーブメントには、ラジューペレの手巻きCal.LC-450を採用。コラムホイールを含むクロノグラフ機構は、サファイアクリスタルバックを通して見ることができる。24石を備えた手巻きムーブメントは、約60時間という余裕あるパワーリザーブを実現。ブルーのコラムホイール、丹念に研磨されたネジ、コート・ド・ジュネーブ装飾など、細部にまで贅沢な仕上げが施されている。さらに高い精度を追求するため、5姿勢での調整が行われていることも見逃せない。
このヴィンテージテイストに満ちた魅力を現代に継承したクロノグラフには、ピンバックル付きのブルースウェードレザーストラップが装着され、全体の雰囲気を引き締めている。仏軍用航空時計メーカーとしての誇り高き血統を受け継ぎながら、現代の技術と美意識を融合させた本作は、早くも時計愛好家たちの注目の的となっている。