隊員以外は入手困難? ウブロのフランス特殊部隊向け「クラシック・フュージョン クロノグラフ」

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2024.12.26

 ウブロ「クラシック・フュージョン クロノグラフ」の、GIGN(国家憲兵隊治安介入部隊)特注バージョンの存在が確認された。GIGNとは、フランスのテロ等の対策にあたる特殊部隊であり、この腕時計はその隊員および元隊員に向けられたものである。この特注モデルのディティールと、GIGNという組織を紹介しよう。

GIGNウブロ

Originally published on MONTRES DE LUXE
[2024年12月26日公開記事]

GIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)によるウブロ特注モデル

 フランの憲兵隊に属する、対テロ活動などを行う特殊部隊GIGN。同部隊創立50周年を記念した腕時計を製作するブランドに、ウブロが選ばれた。数ある時計ブランドの中からウブロが選ばれた理由は、GIGNが今まで依頼したことのないブランドに依頼したかったからである。

 そして過去に発表された数多くのモデルから、50周年記念にふさわしいモデルを選定。腕時計に求める要望をアイデアとして言葉にするのは簡単だが、それを実際の腕時計に落とし込むのは容易なことではなかった。その要望とは、軽く、丈夫であり、視認性に優れたものであるという性能面に加えて、ウブロのDNAと、GIGNのDNAを融合させるというデザインおよび精神的な面もあったのだ。

「クラシック・フュージョン クロノグラフ」を特注モデルに選定

 そして選ばれたのが「クラシック・フュージョン クロノグラフ」であった。このGIGN特注モデルを、前ウブロCEOリカルド・グアダルーペの言葉を借りて表現するとするならば、「伝統と革新の巧みな融合」と呼べるだろう。その心は、時代に対応するために常に組織を革新しつつも、自己の歴史を見失わないGIGNという組織と重なるからだ。

厳選された素材と時計製造技術の融合であるGIGN50周年記念モデル。この腕時計は現役のGIGN隊員、もしくは元隊員に向けて製作されたものである。5気圧防水を備え、直径42mmのケースは、グレード5チタン製だ。風防はサファイアクリスタルを採用している。

GIGNのロゴマークが配されたインダイアル

GIGNウブロ

サンレイ仕上げが施された、あざやかなブルーの文字盤。3時位置のインダイアルに施されたロゴが特注品であることを物語っている。

次に文字盤に目を向けてみよう。秒表示のためのインダイアルは3時位置に配されおり、GIGNのロゴマークがあしらわれたものだ。9時位置に配されたインダイアルは30分積算計である。秒針には特徴的なウブロのマークがかたどられている。

GIGN特注であることを物語る裏蓋

 この腕時計に搭載される自動巻ムーブメントCal.HUB1153は、約42時間のパワーリザーブを有する。裏蓋はトランスパレント使用であるため、ムーブメントを鑑賞することができる。GIGNのロゴマークが配されたケースバックと、ウブロのロゴがあしらわれたローターが、この腕時計の見どころのひとつだ。

GIGNウブロ

特注モデルらしく、GIGN50周年を記念する旨や、エディションなどさまざまな刻印が裏蓋には施されている。

 また、このモデルにはブルーのラバーストラップが組み合わされており、スティール製フォールディングクラスプと合わせて、堅牢で快適な着用感を実現している。

 質実剛健で無骨な特殊部隊GIGN。この部隊のために、ウブロはシック、そしてスポーティなうえに軽量なモデルを提案した。同隊の名を冠した腕時計は多数あるが、その中でも有数のスマートなモデルではないだろうか。

GIGNウブロ

特注モデルの化粧箱に施されたGIGNのロゴ。


GIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)とは

2023年のサン・ミッシェルの日にGIGNのデモンストレーションが行われた。その光景を伝える公式インスタグラムの投稿。

 フランスの特殊部隊であるGIGNとは一体どのような組織なのだろうか? その成立から現在にいたるまでの歴史と、GIGNが活躍した事件を振り返ろう。

成立から今にいたるまでのGIGNの歴史

 1970年代、ヨーロッパでは多発する人質事件に頭を抱えていた。その最たる例は1971年のフランス北東部・クレルヴォー刑務所での事件や、1972年のドイツ・ミュンヘンでのミュンヘンオリンピック事件である。このような「テロとの戦い」に備える必要性が生じたのだ。

 1973年の11月3日、応募から選ばれた50名の憲兵がパリ市南部のメゾン=アルフォールに集結。クリスチャン・プルートーが指揮する憲兵隊の精鋭部隊GIGN 1のための新たな選別試験のために集まった。

GIGNの数々の活躍を伝える写真をまとめたスライドショーの投稿だ。

 そうして1974年3月1日、GIGN(フランス国家憲兵隊治安介入部隊)が結成された。パリ近郊のヴァル=ド=マルヌ県を拠点するGIGN 1と、フランス南東部スペイン国境沿いのランド県を拠点とするGIGN 4のふたつの組織で当時は構成されていた。

 1984年以降、GIGNは組織が大きくなり、GSING(国家憲兵隊特殊介入群)に発展的解消を遂げたのだった。その中にはEPIGN(空挺介入中隊)、GSPR(要人警護部)、GISA(活動指導安全部)という組織が含まれていた。

 時は流れて2007年。国家憲兵隊は、テロの脅威に備えるため大規模な改革に着手。1984年に別れた4つの組織が統合され、新たなGIGNが復活。2021年からは3.0プログラムを開始し、地方支部への移管、VIPの警護を担当する隊員を中央レベルへ移管するなど、さらなる変革を遂げた。

 上記の体制となった現在のGIGNでは、フランス本土、海外領土、国外の現場で、約1000人の男女が専門技術を駆使し問題解決にあたっている。変化しつつあるテロの脅威や、増加する一方の組織犯罪に同部隊は立ち向かうために、同じく国家憲兵隊に属する別部隊である調査旅団や調査部門とともに、日々戦っているのだ。

 また、サイバー犯罪や治安維持、国際紛争の舞台でフランスの利益保護のための活動を行うなど、話題性の高い問題にも取り組んでいる。

GIGNが活躍した数々の事件

GIGNの公式インスタグラムによる、ジブチのロワイヤダで起こったバスジャック事件を解説する投稿。

 同部隊は創設以来、600人近くの人質を開放し、1000人以上の犯罪者を無力化した。毎年、GIGNは100件ほどの作戦を含む200以上に任務を遂行しており、その中には特に有名なものも含まれる。

 その例を挙げよう。アラビア半島にほど近いアフリカ東部の国、ジブチのロワイヤダを舞台とした1976年に起こったバスジャック事件や、ニューカレドニアに属するウベア島で1988年に起こった人質事件がそれだ。

 1994年に起こった、エールフランス8969便ハイジャック事件を覚えている人もいるのかもしれない。この事件の解決のために、GIGNは持ちうるスキルと危機管理能力を総動員した。2015年、パリで大規模なテロが発生した時には、憲兵隊ではなく警察の特殊部隊であるRAIDとGIGNは協力し、同年1月9日に起こった二重人質事件に対処したのである。

 そして、GIGNは2024年のパリオリンピックの期間中、RAIDや警察の捜査介入部であるBRIと協力し、前例のない規模と複雑さを誇るイベント警備を担当するために、広範囲にわたり出動が要請された。



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