多様化した今年のレディースウォッチを振り返りつつ、時計・宝飾ジャーナリストの野上亜紀が選ぶ【2024年新作時計ベスト5】

FEATUREその他
2024.12.30

2024年に発表された新作時計の中から、時計のプロがベスト5を選ぶ企画。今回は時計・宝飾ジャーナリストの野上亜紀が、「主にはレディースモデルにおけるこの1年の簡単な振り返り」として選出したモデルを紹介する。今年の傾向を踏まえつつ、「少々驚かされた」として野上が選んだ1位のモデルとは?


1位:オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク ミニ フロステッドゴールド クォーツ」

直径38mmの「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」からレディース向けラインナップを拡充する一方で、この直径23mmの「ロイヤル オーク」登場には少々驚かされた。1997年に誕生した直径20mmモデルの系譜であるが、ケースとブレスレットに施されたフロステッドゴールド仕上げのみによる輝きで、実はダイヤモンドが用いられていないという点も秀逸。

オーデマ ピゲ ロイヤル オーク ミニ

オーデマ ピゲ「ロイヤル オーク ミニ フロステッドゴールド クォーツ」Ref.67630BA.GG.1312BA.01
クォーツ(Cal.2730)。4石。18KYGケース(直径23mm、厚さ6.6mm)。50m防水。495万円(税込み)。(問)オーデマ ピゲ ジャパン Tel.03-6830-0000


2位:カルティエ「タンク ルイ カルティエ ウォッチ」

『クロノス日本版』本誌でも紹介されたが、このミニモデルは男性に向けての提案もされている、最新のジェンダーレスウォッチとも言える存在だ。転じて、ブレスレットの装いを魅力とするレディースウォッチのアイコン「パンテール」のラージモデルが展開されたという逆のパターンも実に興味深い。

© Sasha Marro © Cartier
カルティエ「タンク ルイ カルティエ ウォッチ」Ref.WGTA0212
クォーツ。18KYGケース(縦24×横16.5mm、厚さ6.2mm)。日常生活防水。120万1200円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00


3位:エルメス「エルメス カット」

今までにないデザインとして話題を呼んだ、ユニセックスモデル。一見シンプルに見えながらも、実は非常に複雑な形状である。計算され尽くしたフォルムに、クリエイティブ・ディレクター、フィリップ・デロタル氏の手腕が光る。

© Joël Von Allmen
エルメス「エルメス カット」Ref.W403249WW00
自動巻き(Cal.H1912)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG×SSケース(直径36mm)。10気圧防水。216万7000円(税込み)。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300


4位:ゼニス「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」

1969年の原点を思わせるヴィンテージ感(このパンダモデルは個人的にもかなりツボ)もさることながら、女性用ではまだまだ数の少ない小径クロノグラフがうれしい。このモデルは女性向けのアプローチでもあり、昨今メンズ・レディースのカテゴライズを廃した実にゼニスらしい展開だ。

ゼニス「クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー」Ref.03.3400.3610/38.C911
自動巻き(Cal.エル・プリメロ3610)。35石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径38mm、厚さ14mm)。5気圧防水。183万7000円(税込み)。(問)ゼニス ブティック銀座 Tel.03-3575-5861


5位:オメガ「コンステレーション」

おお、コンステレーションがピカピカ……、と新鮮な気持ちになった1本。オールポリッシュ仕上げもさることながら、2008年のフルモデルチェンジ時のデザインを施した文字盤にもセドナゴールドをあしらうことでさらにジュエリーライクな仕立てに。

オメガ コンステレーション

オメガ「コンステレーション」Ref.131.55.25.60.52.001
クォーツ(Cal.4061)。18Kムーンシャイン™ゴールドケース(直径25mm、厚さ8.1mm)。30m防水。389万4000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087


総評

今年はレディースウォッチの流れが、少し変わった。ここ数年直径36mmを超えるようなサイズアップが続き、男女問わず装うことができるジェンダーレス化の傾向が続いていたが、今年は反対にサイズダウンしたモデルも多く見られるようになったのである。サイズダウンというよりは、むしろミニモデルと呼ぶにふさわしい。さらにジュエリー化、かつアクセサリー化への傾向が強くなったと言えるだろう。しかしただダイヤモンドなどの宝石を添えるというのではなく、地金をより輝かせる細工など、“ジュエリーウォッチ”の定義がより多層的になったという点が非常に興味深い。中にはミニモデルのターゲットを女性ばかりではなく男性にも向けた、幅広い展開を狙ったものもある。性別を問わないこの傾向は、新たなジェンダーレスの形と捉えることができるのかもしれない。この「ベスト5」の企画で選んだ時計はすべて、主にはレディースモデルにおけるこの1年の簡単な振り返りである。女性用腕時計の勢いは変わらず健在であり、そしてさらに多様化しているということを指し示すであろう。



選者のプロフィール

野上亜紀

野上亜紀

時計・宝飾ジャーナリスト。『クロノス日本版』『クロノスファム』をはじめ、専門誌や女性誌、ライフスタイル誌など、幅広い媒体で編集および執筆を行なっている。ジュエリーやレディースウォッチのみならず、メンズウォッチにも造詣が深い。


需要高まるジェンダーレスなサイズ感。時計・宝飾ジャーナリストの野上亜紀が選ぶ【2023年発表の時計ベスト5】

FEATURES

私に合う自動巻き時計は何? ワーキングスタイル別におすすめモデルを診断【レディースウォッチ編】

FEATURES

一生もののレディース腕時計7選。女性が末永く愛用できるモデルを選ぼう

FEATURES