特に新型コロナウイルス禍において高い人気を誇り、常時品薄という状態も珍しくなかった“ラグスポ(ラグジュアリースポーツウォッチ)”。今やその熱は落ち着きつつあるように見えるが、持ち前の汎用性の高さから、まだまだ人気は健在だ。今回は2024年新作からラグスポ5本にスポットを当て、その進化に注目してみたい。
Text by Tsubasa Nojima
[2024年12月29日公開記事]
進化を続ける“ラグスポ”に注目!
一時期、異常なまでの人気ぶりを見せた“ラグスポ(ラグジュアリースポーツウォッチ)”。その定義は諸説あるが、特にブレスレットとケースが一体型となったようなデザインを採用した時計は、発表と同時に注目を集め、常時品薄という状態も珍しくはなかった。その頃に比べ需要は落ち着いてきたものの、まだまだ人気は衰えず、各社も新コレクションの投入や、既存コレクションのブラッシュアップなどによって、その期待に応えている。そんな今だからこそ、2024年に発表されたラグスポを振り返り、その魅力について再確認してみたい。
エルメス「エルメス カット」Ref.W403249WW00
2024年に登場した「エルメス カット」は、男女とも使いやすいラグジュアリースポーツウォッチだ。ブレスレットにはインターチェンジャブルシステムが備わっており、簡単にケースから脱着することができる。自動巻き(Cal.H1912)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KRG×SSケース(直径36mm)。10気圧防水。216万7000円(税込み)。(問)エルメスジャポン Tel.03-3569-3300
2024年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで発表されたエルメスの新コレクション「エルメス カット」。ブレスレットからシームレスに流れるようなフォルムを作るケースは、平面の円と立体の丸みを合わせたようなフォルムに仕上げられている。サテンとポリッシュを組み合わせた立体的な仕上げや、1時位置に配されたリュウズなど、躍動感のあるデザインが特徴だ。本作では、ベゼルやブレスレットなどの一部に18Kピンクゴールドを用いることで、よりラグジュアリーな印象を強めている。
ダイアルには、専用書体のアラビア数字インデックスが並び、蓄光塗料を充填することで夜間での視認性を高めている。時分針はバトン型。秒針には丸いポインターを加えることで、判読性を向上させている。
本作はシースルーバックを採用しており、内部に搭載されたヴォーシェ製の機械式自動巻きムーブメント、Cal.H1912を鑑賞することができる。地板にはペルラージュとスネイル仕上げ、ローターと受けにはHを組み合わせたパターンが施されている。
カルティエ「サントス ドゥ カルティエ デュアルタイム」Ref.WSSA0076
デュアルタイム機能を搭載した、「サントス ドゥ カルティエ」の新作。アンスラサイトグレーカラーのダイアルが上品な印象をもたらす。自動巻き(セリタSW330ベース)。2万8800振動/ 時。パワーリザーブ約48時間。SSケース(縦47.5×横40.2mm、厚さ10.01mm)。10気圧防水。145万2000円(税込み)。(問)カルティエ カスタマー サービスセンター Tel.0120-1847-00
カルティエを象徴するコレクションのひとつである「サントス ドゥ カルティエ」。そのデュアルタイム機能搭載モデルとして発表されたのが、本作だ。クールな雰囲気を醸し出すアンスラサイトグレーのダイアルにはサンレイ仕上げが施され、6時位置には第2時間帯を表示するサブダイアルが配されている。ローマ数字インデックスやバトン型の時分針は、コレクションに共通する意匠だ。
ケースはステンレススティール製。デザインはサントス ドゥ カルティエらしい角形を採用し、サテン仕上げとポリッシュ仕上げを使い分けることにより、上品さとスポーティさを両立させている。
ケースからシームレスにつながるステンレススティールブレスレットは、ベゼルと同様にネジがアクセントとなっている。本作のブレスレットには、便利なふたつの機能が搭載されている。ひとつがコマを簡単に取り外すことができるスマートリンクサイズ調整システム、もうひとつがケースから簡単に分離することができるクイックスイッチ交換可能システムだ。
ショパール「アルパイン イーグル XL クロノ」Ref.295393-5002
18Kエシカルローズゴールド製ケースを採用したフライバッククロノグラフウォッチ。ダイアルのカラーは、“ベルニナグレー”。自動巻き(Cal.Chopard 03.05-C)。45石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18Kエシカルローズゴールドケース(直径44mm、厚さ13.15mm)。100m防水。1085万7000円(税込み)。(問)ショパール ジャパン プレス Tel.03-5524-8922
クロノグラフを搭載したスポーティーな「アルパイン イーグル XL クロノ」に加わった新作。ケースとブレスレットには、不当な労働などによって採集されていない100%倫理に適った方法で調達された、エシカルゴールドが用いられている。
イーグルの虹彩をモチーフとしたダイアルは、スイスとイタリアの国境に連なる標高4000m以上のベルニナ山や、荘厳な自然が広がるベルニナ山脈の岩々に着想を得た“ベルニナグレー”カラー。3時位置に30分積算計、6時位置にスモールセコンド、9時位置に12時間積算計を配している。クロノグラフにはフライバック機構が搭載されているため、計測時にリセットボタンを押下することによって、帰零と再計測を瞬時に行うことが可能だ。
搭載するCal.Chopard 03.05-Cは、C.O.S.C.公認クロノメーターを取得した高精度を誇り、約60時間のパワーリザーブを備えた機械式自動巻きムーブメントである。その仕上げは、シースルーバックを通して鑑賞することが可能だ。
ヴァシュロン・コンスタンタン「オーヴァーシーズ・オートマティック」Ref.4520V/210R-B967
2024年のヴァシュロン・コンスタンタンを象徴する、グリーンダイアルの「オーヴァーシーズ」。上品かつ温かみのあるカラーリングが魅力だ。自動巻き(Cal.5100)。37石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。18KPGケース(直径41mm、厚さ10.69mm)。15気圧防水。897万6000円(税込み)。(問)ヴァシュロン・コンスタンタン Tel.0120-63-1755
ヴァシュロン・コンスタンタンの誇るラグジュアリースポーツウォッチ、「オーヴァーシーズ」コレクションに加わった新作。2024年は「オーヴァーシーズ・オートマティック」だけではなく、デュアルタイムモデルやクロノグラフモデル、レディースモデルまで、18Kピンクゴールド製ケースにグリーンダイアルを組み合わせた新作が追加された。
ダイアルのグリーンは、深みをたたえた色味が特徴だ。見る角度や光源の違いによって異なる表情を見せてくれる。中央はサンバースト仕上げ、フランジにはベルベット仕上げを施すなど、細部にまで手の込んだ仕上げが与えられている。
ケースは、ブレスレット一体型のデザインだ。マルタ十字をモチーフとしたデザインのベゼルが取り付けられ、ブレスレットへの連続性を生んでいる。ブレスレットのほか、レザーストラップとラバーストラップが同梱しており、インターチェンジャブルシステムによって簡単に交換することができる。
ムーブメントは、ジュネーブ・シールを取得した機械式自動巻きのCal.5300を搭載。シースルーバックからは、22Kイエローゴールド製のローターを鑑賞することができる。
パルミジャーニ・フルリエ「トンダ PF マイクロローター」Ref.PFC914-1020021-100182-JP
ゴールデン・シエナカラーのダイアルが柔らかな印象をもたらす新作。シースルーバックからは、卓抜した仕上げが施されたムーブメントを楽しむことができる。自動巻き(Cal.PF703)。29石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。Pt×SSケース(直径40mm、厚さ7.8mm)。100m防水。要価格問合せ。。(問)パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com
「至上の純粋主義者」に向けて開発された、ミニマルなデザインが魅力の「トンダ PF マイクロローター」の新作。ダイアルには控えめなインデックスとブランドロゴが配され、スケルトン仕様のふたつの針がインデックスを指し示す。バーリーコーンのギヨシェ装飾が施されたダイアルは、柔らかな雰囲気のゴールデン・シエナカラーを採用。
ブランドを象徴するローレット加工が施されたベゼルは、プラチナ製だ。ミドルケースとブレスレットにはステンレススティールが採用され、堅牢性も十分。ラグジュアリースポーツウォッチらしく、厚さ7.8mmの薄型ケースと100mの防水性を両立させていることも、魅力のひとつである。
本作はシースルーバック仕様のため、ケースバックからムーブメントを楽しむことが可能だ。搭載されるCal.PF703は、マイクロローター式の機械式自動巻きムーブメントであり、受けに施されたストライプ装飾や面取りなどの仕上げ、マイクロローターや歯車、テンプの動きを存分に鑑賞することができる。