年末の風物詩「NHK紅白歌合戦」は、2024年で第75回を迎える長寿番組である。昨秋、ジ・アルフィーの出場が発表されると、SNSでは「41年間お待ちしていました!」「1983年の時も見ていました」といった、長い歴史を刻んできたバンドならではの古参ファンからの熱いメッセージが寄せられた。今回はセンターでギタリスト&ボーカルを務める坂崎幸之助の愛用時計に着目した。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年1月5日掲載記事]
パワフルなステージを披露する日本記録保持バンドグループ
41年ぶりに紅白の舞台に返り咲いたことで話題を呼んだジ・アルフィーの3人。2024年の紅白歌合戦では「星空のディスタンス」を披露し、多くのファンを魅了した。なお、1983年の初出場時に演奏した楽曲は「メリーアン」だった。
ジ・アルフィーの結成は1973年だ。今日までさまざまなことをメンバーそろって乗り越えてきた。単独バンドグループによる日本最多累計コンサート数2900回を数えるジ・アルフィーだが、2024年5月に倉敷市民会館で開催した春ツアーが、その記念すべき2900回目のコンサートだった。メンバーは3人とも古希を目前とする年齢だが、変わらずパワフルなステージを披露していることが素晴らしい。
3人の関係性も変わらず、「あと50年頑張ります(笑)」とインタビューで語るなど、高校時代からずっと一緒に過ごしてきた学生時代のままのやりとりが見られた。ジ・アルフィーは1973年に桜井賢と、都立墨田川高校に在学していた坂崎幸之助、明治学院高校のまた別のバンドにいた高見沢俊彦、コンフィデンス(三宅康夫、桜井賢、坂崎幸之助、高橋志郎によるグループ)のオリジナルメンバーだった三宅康夫の4人で結成された。1975年に三宅康夫が脱退し、3人となり、現在に至る。元々はフォークグループだったが、やがてロックの要素を取り入れるようになった。
自身のインスタグラムのプロフィール欄には「ジ・アルフィーの真ん中メガネ」というユーモアのある自己紹介を記載する坂崎幸之助は、バンドではギター、ボーカルを担当し、その他ライブではブルースハープ、パーカッション、フラットマンドリンを演奏する姿も確認できる。プロモーションビデオではリュートギターを演奏したこともある多彩な楽器を自在に操ることができるマルチプレイヤーである。
幼少期には落語家を志したこともあるほど話術に長けており、ステージ上のMCなどでは軽妙なトークでファンを楽しませている。またカメラが大好き、という坂崎幸之助は東京カメラクラブのメンバーに招かれるほどの腕前があり、多方面に才能を発揮している。
スペシャルな思い入れがあるコルム「バブル」を愛用
自動巻き(ETA Cal.2892-A2)。21石。2万8800振動/時。SSケース(直径44.0mm)。20気圧防水。生産終了品
「今日は腕時計のコレクション自慢で失礼(絵文字)」というコメントと共に投稿されていたのがコルムの「バブル」である。2002年のフォークル(ザ・フォーク・クルセダーズ)新結成の際に松山猛さんからプレゼントしてもらったお宝です。とコメントが記載されている。
時計愛好家として知られる松山猛。日本の作詞家、ライター、編集者である。ザ・フォーク・クルセダーズおよびサディスティック・ミカ・バンドのバックグラウンドを支える人物だ。「イムジン河」の訳詞者であり『ブルータス』などの雑誌の立ち上げにかかわり、日本の音楽およびファッションをリードしてきた重鎮である。坂崎幸之助とは「K's TRANSMISSION」で放送された「イムジン河」の特番がきっかけで交流が深まったのではないかと推察される。
バブルの特徴として、厚さ8mmのドーム型サファイアクリスタルの風防が挙げられる。高硬度を誇るサファイアクリスタルを立体的に成形するには、高度な技術が要求される。ダイアルをあえて立体的に歪めるバブルは、様々な角度で変わる表情を楽しむことができる。
ケースサイズは直径44mmと存在感のあるサイズであるが、長いキャリアを築くミュージシャンにとっては、一際目を引くアイテムも難なく着けこなせるだろう。投稿画像の背景には年季の入ったカメラレンズが写っている。古き良き時代の丁寧な手仕事と個性あふれるユニークな雰囲気が好きなのではないだろうか。