2024年に発表されたパイロットウォッチより、傑作5本を取り上げる。視認性に優れる簡潔なデザインが魅力のパイロットウォッチだが、ひとつひとつ注目すると、その中に込められたブランドの個性が見えてくる。
Text and Photographs by Tsubasa Nojima
2024年12月30日掲載記事
2024年も個性派パイロットウォッチが勢ぞろい!
20世紀初頭から、飛躍的な進化を遂げてきた航空機。これによって人の移動や物流がより便利になり、戦争はそのあり方を変えた。そんな航空史の発展を陰で支えてきた存在こそ、パイロットウォッチである。単に時刻を知るだけではなく、経過時間や現在地の割り出しにも活躍し、パイロットの安全な航行をサポートしてきた。
プロフェッショナル向けの生粋のツールウォッチとして誕生してきた背景から、そのデザインはストイックなものが多いが、各社が工夫を凝らし必要とされる機能を洗練させていった結果、これまで多くのアイコニックピースが世に送り出されてきた。一見シンプルながらも奥深いパイロットウォッチ。2024年に発表されてきたモデルから、個性の際立った傑作を紹介しよう。
オメガ「スピードマスター パイロット」Ref.332.10.41.51.01.002
「スピードマスター」コレクションに加わった新作パイロットクロノグラフ。スピードマスターはモーターレーサーや宇宙飛行士だけでなく、戦闘機のパイロットにも愛されてきた歴史を持つ。本作はそんな背景を基に開発された高性能なモデルだ。
1970年代の雰囲気が漂うカラーリングのダイアルには、マットなブラックをベースとして、オレンジ、イエロー、ライトブルーをちりばめている。3時位置には時分同軸の積算計が配され、クロノグラフ使用時の計測時間を簡単に読み取ることができる。9時位置にはスモールセコンド、6時位置には日付表示が配され、シンメトリーなレイアウトが特徴だ。クロノグラフ秒針の先端は飛行機を模した形状を採用し、パイロットウォッチらしさを強調する。
ケースは、スピードマスターのファーストモデルにオマージュを捧げたデザイン。すっきりとしたシャープなラグが特徴だ。ムーブメントは、コーアクシャル脱進機を搭載した機械式自動巻きクロノグラフのCal.9900を搭載している。
1957年のファーストモデルをモチーフとしたケースに、計器感のにじみ出るようなダイアルを組み合わせた新しいスピードマスター。時分同軸積算計によって、最大12時間まで計測することが可能。自動巻き(Cal.9900)。54石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径40.85mm)。100m防水。146万3000円(税込み)。(問)オメガ Tel.0570-000087
ブレゲ「タイプ XX 2067」Ref.2067ST/92/SW0
2023年に発売された「タイプ XX 2067」に今年、ステンレススティールブレスレット仕様のバリエーションが加わった。ブレスレットはヘアライン仕上げを主体とした3連のコマで構成されており、スポーティな印象だ。ひとつひとつのコマを小さくすることで装着感を向上させ、さらにクラスプに微調整機構であるイージーフィットシステムを搭載し、腕回りを簡単に調整することが可能である。
タイプ XX 2067は、かつての民生用モデルにならったデザインを持つ。3時位置に配された大型のインダイアルは、15分積算計として機能し、ミリタリーモデルにはなかった12時間積算計が6時位置に配されている。視認性に優れたアラビア数字のインデックスやシャープな針にはアイボリーカラーの蓄光塗料が塗布され、ヴィンテージ感を強める。
本作に搭載されているCal.728は、機械式自動巻きクロノグラフムーブメントだ。頑強かつ作動の確実性に優れたフライバック機構が搭載されている。シースルーバックのため、ムーブメントを鑑賞することが可能だ。
民生用パイロットクロノグラフの「タイプ XX」を復刻したモデル。3時位置に配された大型のインダイアルは15分積算計。ベゼルの目盛りは、経過時間の管理やセカンドタイムゾーンの表示に使うことができる。自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。336万6000円(税込み)。(問)ブレゲ ブティック銀座 Tel.03-6254-7211
ベル&ロス「BR-03 ホライゾン」Ref.BR03A-HRZ-CE/SRB
航空機に搭載されているコックピットクロックに着想を得た、スクエア型ケースが特徴の「BR-03」シリーズ。本作はそのラインナップに加わった数量限定モデルである。目盛りが配され、ブルーとブラックに色分けされたダイアルは、航空機の姿勢を表示するための計器、「アーティフィシャル・ホライゾン(人工水平儀)」をモチーフとしている。アーティフィシャル・ホライゾンは、中央を横切るオレンジのバーを航空機、ブルーを空、ブラックを地上に見立て、航空機の姿勢を表している。
本作では、ダイアルのブルーの半円に配された三角のマーカーを時針として扱い、ホワイトの針を分針、ブラックとホワイトの縞模様の針を秒針としている。
ケースは、耐傷性に優れるブラックセラミックス製。マイクロブラスト加工によってマットに仕上げられている。ストラップはブラックのラバー製のほか、オレンジのベルクロタイプが付属する。
ムーブメントは、約54時間のパワーリザーブを備えた機械式自動巻きのCal.BR 327を搭載している。
アーティフィシャル・ホライゾン(人工水平儀)をモチーフとしたユニークなデザインが魅力の1本。オールブラックの外装に鮮やかなブルーが際立つ。自動巻き(Cal.BR 327)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。セラミックスケース(直径41mm、厚さ10.6mm)。100m防水。世界限定999本。64万9000円(税込み)。(問)ベル&ロス 銀座ブティック Tel.03-6264-3989
ロンジン「ロンジン パイロット マジェテック パイオニア エディション」Ref.L2.838.1.53.2
「ロンジン パイロット マジェテック」は、かつてロンジンがチェコスロバキア空軍へ納入していたパイロットウォッチの復刻モデルである。2024年には、クールなダークトーンにまとめ上げた数量限定モデルである本作が追加された。レギュラーモデルでは、アラビア数字インデックスや針にアイボリーカラーの蓄光塗料を塗布することでブラックのダイアルとの高いコントラストを生んでいたが、本作ではインデックスや針をグレーとすることで、印象を一変させている。
ボリューミーなクッション型のケースは、素材にチタンを採用することで取り回しやすさを向上させている。細かな刻みの付いたベゼルは双方向に回転し、三角形のマーカーを針に合わせることで、経過時間を測定することができる。リュウズはねじ込み式を採用し、日常使いに十分な10気圧防水を備えている。
Cal.L893は、シリコン製ヒゲゼンマイを搭載したロンジン専用の機械式自動巻きムーブメント。約72時間のロングパワーリザーブを誇る。
2023年の「ロンジン パイロット マジェテック」をベースに、ダークトーンのカラーリングとチタン製ケースを与えた数量限定モデル。クラシカルなパイロットウォッチがモダンに再構築されている。自動巻き(Cal.L893.6)。26石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径43mm、厚さ13.3mm)。10気圧防水。世界限定1935本。74万3600円(税込み)。(問)ロンジン Tel.03-6254-7350
ブライトリング「スーパーアベンジャー B01 クロノグラフ 46 ナイトミッション」Ref.SB0148101B1X1
ジェット機のパイロット向けに誕生した堅牢なパイロットウォッチコレクション、「アベンジャー」。2023年にリニューアルされたことでも記憶に新しいアベンジャーだが、そのクロノグラフモデルに、直径46mmの大型ケースとブラックのカラーリングをまとった“ナイトミッション”が追加された。
ナイトミッションでは、外装に通常モデルと異なる素材を用いている。ダイアルにはブラックカーボン、ミドルケースとベゼルにはセラミックス、ケースバックやリュウズ、プッシャーにはチタンが採用されている。ストラップはミリタリー調のグリーンのカーフレザー製だ。アベンジャーの魅力であるタフさも健在であり、セラミックス製ケースが高い硬度を備えているだけではなく、300mもの防水性を誇る。
ムーブメントは、ブライトリングの誇る自社製機械式自動巻きクロノグラフムーブメントであるCal.01を搭載する。Cal.01は、登場以来改良を重ね、年々完成度を高めてきたムーブメントだ。優れた信頼性を発揮する頑強なクロノグラフ機構は、メンテナンス性に優れる構造を持つ。
無骨さが際立つ力強いデザインが魅力の「アベンジャー」。本作は、その中にラインナップする直径46mmのケースを採用したクロノグラフモデルだ。ケースには、耐傷性に優れるセラミックスを採用している。自動巻き(Cal.01)。47石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。セラミックスケース(直径46mm、厚さ15.3mm)。300m防水。128万1500円(税込み)。(問)ブライトリング・ジャパン Tel.0120-105-707