昨年、読者から多くの関心を集めた「オメガの広報担当者が、売上本数の多い人気モデルの中から個人的なおすすめを厳選する」という企画。本年も協力を得て、記事にすることができた。選出したのはメンズ向けに5本である。人気、担当者の主観ともに1位となったのは、“いつもの「スピードマスター ムーンウォッチ」”ではない⁉︎
Text by Chieko Tsuruoka(Chronos-Japan)
[2024年12月31日公開記事]
オメガの広報担当者が、人気モデルを対象におすすめを選ぶ
時計市場で高いプレゼンスを示してきたオメガ。その成功にはさまざまな要因があるものの、優れた技術力と開発力を強みに、高品質かつ高性能な腕時計を製造してきたというのは大きい。また「スピードマスター」や「シーマスター」など、自社のアーカイブを基にしたコレクションを打ち出すことで長い歴史とストーリー性を持つというイメージを与えつつ、そのコレクションに多彩なバリエーションを加えることで、時計愛好家から初めて高級腕時計を購入するという層に至るまで、幅広いファンを獲得している。
もっとも多彩であるがゆえに、どのモデルを購入して良いのか迷ってしまうこともあるだろう。そこで今回、オメガの広報担当者に、売上本数ランキングTop20の中から「個人的におすすめしたい5本」をピックアップのうえ、順位付けしてもらった。本コンテンツは昨年から行っており、多くの読者からの関心を集めたため、今年も掲載している。昨年と同様の顔触れかと思いきや、意外なメンツがそろう結果となった。
第1位「スピードマスター ムーンウォッチ」の白文字盤
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。50m防水。125万4000円(税込み)。
第1位は不動の人気! 黒文字盤の「スピードマスター ムーンウォッチ」!……かと思いきや、確かに同じコレクションではあるものの2024年3月にローンチされたばかりの白文字盤のモデルが挙がった。なお、1位というのは広報担当者の意見だけでなく、売上本数としてもナンバーワンとのこと。
スピードマスター ムーンウォッチは1957年に登場したオメガのクロノグラフモデルで、1965年にNASAの公式装備品に採用され、1969年のアポロ11号では月面着陸時に携行されるなど、宇宙開発のサポートを行ってきたストーリーを持つコレクションだ。長らく黒文字盤のモデルがラインナップされてきており、今年に入って新たに追加された白文字盤の存在は、大きなインパクトをユーザーに与えた。本作のリリース前年の11月、ダニエル・クレイグがニューヨークで開催された「プラネットオメガ」で本作を着用しており、当時はまだカタログ未掲載で、「あれはどのスピードマスターなのか」と話題になったことも、このインパクトに無関係ではないだろう。
そんな本作の文字盤は、まさに純白。ポリッシュラッカーのため、ツヤツヤとした光沢を備えており、これまでの黒文字盤のモデルにあったツール感は廃され、ラグジュアリーなテイストとなっている。白文字盤はフラットだとのっぺりした印象になってしまうこともあるが、本作の文字盤、そしてインダイアルには段差が設けられているため、立体感を有している。また針やインデックスは黒、クロノグラフ秒針の先端は赤となっているため判読性も高い。インデックスはプリントではなく、アプライド式だ。
スペックは従来に同じ。ムーブメントも従来モデル同様に手巻きのCal.3861を搭載しており、トランスパレントバックから観賞することができる。黒文字盤よりも価格は高くなるとはいえその差はわずか。本作の登場によってスピードマスター ムーンウォッチに別の表情が加わり、好みの1本を選べるという要素が加わったのは、ユーザーにとってありがたい。
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。50m防水。123万2000円(税込み)。
ちなみに、昨年人気ナンバーワンだったスピードマスター ムーンウォッチのサファイアクリスタル風防を備えたRef.310.30.42.50.01.002は、今年の売上ランキングでは第2位だったとのことだ。
第2位「シーマスター ダイバー300M パリ2024エディション」
自動巻き(Cal.8800)。35石。2万5200振動/時。パワーリザーブ約55時間。SS×18Kムーンシャイン™ゴールドケース(直径42mm、厚さ13.7mm)。300m防水。137万5000円(税込み)。
売上本数では黒文字盤や青文字盤の「シーマスター ダイバー300M」が上位にくるものの、“オリンピックイヤー”ということで、目立って人気急上昇したのがこの「シーマスター ダイバー300M パリ2024エディション」だ。もっとも、オリンピック関連モデルは複数出ている。そんな中で本作の人気が高いことを、広報担当者は「オリンピックモデルであることが強調されすぎていないのが良いのでは? デザインとして好き、かっこいいという声をもらいますし」と分析していた。
確かに本作はシーマスター ダイバー300Mの意匠はそのままに、いかにも「オリンピックモデルです」といった装いではなく、すぐにこの国際的なスポーツ大会との関連性が分かるディテールは秒針の先端やケースバックにあしらわれたパリ 2024のエンブレムくらいだ。
半面、「オリンピックモデル」という主張は大きくなくとも、特別な仕様ということは十分感じられる。レギュラーモデルはセラミックス製のベゼルインサートが用いられる個体が多い一方で、本作は18Kムーンシャイン™ゴールド製となっており、さらにフロスト加工をベースにポリッシュされたダイビングスケールが浮き彫りにされることで、独創性を感じられる意匠となっているのだ。
ちなみにこのモデルを1週間程度借りて、着用したことがある。着用中、このベゼルを何度も見てしまうほど、本作を特徴づける大きな要素となっていた。ツヤのあるホワイトセラミックス文字盤や、サテン仕上げが基調となりつつもポリッシュとコンビネーションさせたことできらめきを見せるケース・ブレスレットと相まって、ラグジュアリーなダイバーズウォッチとして完成された1本である。本作を見たことのある読者にとっては、第2位も納得の結果と言えるのではないだろうか。
第3位「コンステレーション メテオライト」Ref.131.30.41.21.99.001
自動巻き(Cal.8900)。2万5200振動/時。パワーリザーブ約60時間。SSケース(直径41mm、厚さ13.4mm)。5気圧防水。149万6000円(税込み)。
「幅広い年代からバランスよく売れている」ということで、第3位として紹介するのが「コンステレーション」だ。掲載モデルは2024年2月にラインナップに追加された、メテオライトのムオニオナルスタを使った文字盤である。「星座」を意味するコンステレーションに、宇宙から飛来した隕石を使うことに、粋な計らいだと感じる。
コンステレーションについて簡単に説明を加えると、1952年に誕生した自動巻きクロノメーターモデルだ。高精度であることの象徴として、ケースバックにはクロノメーターコンクールが行われていたジュネーブ天文台のモチーフと星座があしらわれる。
そんなコンステレーションは長い歴史の中で、何度かアップデートされてきた。現行モデルになったのは2019年で、以降、バリエーションを順調に拡充している。メテオライト文字盤モデルも、そんなバリエーションの中のひとつであり、さらにこのメテオライトモデルだけで4型20種も同時リリースされたのだから、さすが幅広いニーズに応えてきたオメガだ。
「コンステレーションって、“オジサン”が着けてるってイメージありませんでしたか? でも2019年以降、モダンなバリエーションが増えて、また自動巻きムーブメントを搭載したモデルはマスター クロノメーターにもなって、20代、30代の顧客からも選ばれるようになっています」。そう広報担当者が語るように、近年のコンステレーションにはこのメテオライト文字盤をはじめ、“ピーコックブルー”や深みのあるブラウンカラーを備えた文字盤など、オシャレで洗練された意匠をまとったモデルが多くラインナップされており、冒頭でも記したように、年代を問わずに支持されるのもうなずける顔触れだ。本当にバリエーションが多く、またスピードマスターやシーマスターほど定番ではないので、「ひとと被らないオシャレな腕時計」を選べるメリットもある。
URL:https://www.omegawatches.jp/watches/constellation/constellation/catalog
掲載したモデル以外にも、本当に多くのモデルがそろっているので、一度公式ホームページや店頭でその名作の数々を見て、出来れば実機を触ってみてほしい。
第4位「スピードマスター ムーンウォッチ」Ref.310.62.42.50.99.001
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18Kムーンシャイン™ゴールドケース(直径42mm、厚さ13.2mm)。5気圧防水。499万4000円(税込み)。
第1位と同じくスピードマスター ムーンウォッチより、2022年にラインナップに加わった18Kムーンシャイン™ゴールドケースのモデルが第4位にランクイン。第2位として紹介したシーマスター ダイバー300M パリ2024エディションにも使われている18Kムーンシャイン™ゴールドをケースと文字盤に使った、贅沢な1本だ。
18Kムーンシャイン™ゴールドというのはオメガが2019年から用いている独自のイエローゴールド合金で、シルバー、銅、パラジウムが加えられており、このパラジウムの含有量を増やすことで酸化を抑え、かつ一般的な18Kイエローゴールドよりも淡く、特徴的な色味を備えている。ちなみにこの独自ゴールドによって、オメガはダークブルーの空に輝く月の光を表現しているとのこと。確かに明るすぎない落ち着いた色合いのこのゴールドは、太陽ほど主張しない、夜空に浮かぶ月の明るさを表している。
さらにインダイアルやベゼル、そしてラバーストラップがブラックであるため、この18Kムーンシャイン™ゴールドとコントラストを成しているということも、他のスピードマスター ムーンウォッチのバリエーションとは違ったアクセントとなっている。
なお、昨年版のオメガの「広報担当者が人気モデルからおすすめを厳選」企画では、そのラインナップのほとんどがステンレススティール製モデルであった(第5位にセラミックス製モデルがランクイン)。しかし今年はゴールド製モデルの人気が高まっているとのこと。コンビモデルのほか、本作のような金無垢モデルも人気の上位に食い込んできているという。18Kムーンシャイン™ゴールドという独自合金とともに、オメガらしさも、ラグジュアリー感も楽しめる1本と言える。
第5位「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」Ref.310.30.40.50.06.001
手巻き(Cal.3861)。26石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。SSケース(直径39.7mm、厚さ13.4mm)。50m防水。121万円(税込み)。
2024年10月に発表されたばかりの「スピードマスター ファースト オメガ イン スペース」が、早くも今年の第5位となった。このモデルは、初めて宇宙へ携行されたオメガのスピードマスター「Ref.CK 2998」のリバイバル。Ref.CK 2998はスピードマスターではセカンドモデルにあたり、1962年10月3日に開始されたNASAのマーキュリー計画のシグマ7ミッションで、宇宙飛行士のウォルター・“ウォーリー”・シラー個人の持ち物として彼が着用のうえ、携行されていた。
現行スピードマスター ムーンウォッチのブラックとは異なる、CVDコーティングによるブルーグレーカラーの文字盤はRef.CK 2998のディテールが忠実に再現されており、アルファ型の時分針や12時位置の立体的なロゴ、“PROFESSIONAL”の印字を廃するなどといった仕様が見られる。セラミックスではなく、アルミニウム製のベゼルインサートにはタキメータースケールがあしらわれており、もちろん“ドットオーバー90”も再現された。
文字盤のみならずケースフォルムもセカンドモデルを復刻しているため、リュウズガードを持たずラグもシャープで、ケース径は39.7mmとコンパクトとなっている。
一方で機能は最新。経年変化を思わせるヴィンテージ調の蓄光塗料はスーパールミノバで、またプラ風防”のようなドーム型風防はサファイアクリスタル製である。さらにムーブメントも、現行モデルと同様に手巻きのCal.3861が搭載されている。スピードマスター ファースト オメガ イン スペースは2012年にも一度リバイバルされており、今回はコーアクシャル脱進機を備えたマスター クロノメーター認定モデルとして、オメガの最先端の性能を獲得しているのだ。
広報担当者は「コンパクトなサイズ感と、リュウズガードのないスッキリしたフォルムがスピードマスター ムーンウォッチとしては新鮮」と評価しており、同コレクションのストーリー性も相まって、2025年も引き続き大きな注目を集めるモデルとなるだろう。