クロノグラフに注力するルイ モネのムーブメントは、これまでコンセプトが手掛けた最新鋭のものが中心だった。しかし20本限定で販売される新作は、これまでとは趣の違う、オールドムーブメント搭載機だ。
[クロノス日本版 2025年1月号掲載記事]
バルジュー88を搭載したルイ モネ「スピード オブ サウンド」
ギネスで世界初と認定を受けたクロノグラフの開発者、ルイ・モネ。その名を現代に受け継ぐだけあり、ルイ モネというブランドにとってクロノグフは大きな軸のひとつだ。その大多数にはムーブメントサプライヤー、コンセプトとの協業によって開発されたエクスクルーシブムーブメントが用いられており、今日のブランドイメージを高めるのにひと役買っている。
そんな同社のクロノグラフに、趣の異なる新作が追加された。それが「スピード オブ サウンド」と名付けられた限定モデルだ。最大の特徴はバルジュー 88を搭載している点。これはブランドCEOのジャン=マリー・シャラーが親交の深い元クロード・メイランCEOアンリ・ベルネイから譲り受けたデッドストックだという。それをうかがわせるのが、ムーブントの彫金だ。メッキをかけたブリッジにサークル状のパターンを彫っていく手法は、まさに同社の十八番である。
20本限定で販売されるモデル。文字盤にはヤン・フォン・ケーネルがデザインしたギヨシェパターンが施され、さらに3つのインダイアルに月隕石とアルタイ隕石がセットされる。手巻き(Cal.バルジュー88)。17石。1万8000振動 / 時。パワーリザーブ約40時間。Tiケース(直径40.7mm、厚さ16.27mm)。3気圧防水。世界限定20本。1210万円(税込み)。
懐しいバルジュー 88を載せたスピード オブ サウンドだが、ダイアルレイアウトを大幅に変更している点も見所のひとつだ。本来、このムーブメントでは時分秒針とクロノグラフのほか、ポインターデイトと曜日、月のカレンダー、そしてムーンフェイズが設けられている。しかしスピード オブ サウンドでは煩雑になりがちなバルジュー 88の文字盤を簡素化し、代わりに3つのインダイアルに隕石を用いることでルイモネらしさを強調したのだ。ただし、宇宙をインスピレーション源とするブランドらしく、カレンダー機構を完全に取り払いながらも、ムーンフ ェイズだけはしっかりと残されているうえ、ムーンディスク上には月隕石がセットされている。このあたりの遊び心もまた、ルイ モネの魅力だ。