『ウォッチタイム』アメリカ版の編集者マーティン・グリーンがフレデリック・コンスタントの新作「クラシック モネータ ムーンフェイズ」をレビュー。控えめながらも高級感あふれる、クワイエット・ラグジュアリーな本作。その登場もクワイエット(静か)なものだったが、実際に手にしてみると、その魅力は想像以上のものであった。
実際のレビューで実感した「クラシック モネータ ムーンフェイズ」の隠れた魅力
アメリカ版『ウォッチタイム』編集部のメールボックスには、毎日沢山のプレスリリースがメールで届く。そんなメールの中には、読む前から異彩を放つものを時折見出すことができる。フレデリック・コンスタントの新作「クラシック モネータ ムーンフェイズ」は、私の心を捉えて離さない腕時計なのだ。
絶妙なバランス、魅力的な外観、そして語りかけてくるようなディティール。私のこのレビュー記事は、今挙げた要素以上の魅力を、この腕時計が持っていることを証明できたと思っている。
フレデリック・コンスタントは、この腕時計が好意的に迎えられている、という事実には気づいていないのではないだろうか。このモデルは当初アメリカ市場での発売が予定されていなかったくらいなのだ。だが、幸いにもブランドは販売戦略の方針を転換した。
「クラシック モネータ ムーンフェイズ」は、少なくとも経験豊かなコレクターにとっては、刺激的な腕時計には思えないだろう。そして誌上でもそれほど気を引く要素はない印象受ける。だが、いざ腕に装着してみるとその状況は一変してしまうのだ。
クォーツ(Cal.FC-206)。SSケース(直径37mm、厚さ7.6mm)。5気圧防水。19万8000円。
この腕時計はディティールを見よ!
本作は「ディティール主導」の腕時計とも呼ぶべきもので、施されたディティールが相互に共鳴することによって、その魅力を確かなものにしている。この腕時計の構成は、他の多くの腕時計と比べるとシンプルな方だろう。時刻表示のための2本の針。それに加えて、ヒストリカルな印象を与える、6時位置のムーンフェイズというものである。
最小限に抑えられたロゴなどのテキストは最小限に抑えられ、マットなゴールドで印刷されている。ムーンフェイズの周囲も、同様にゴールドで縁取られたものだ。なお、ムーンフェイズは、文字盤全体に比べわずかにへこんでおり、奥行きを与えるよい要素となっている。
「かがやき」こそが魅力の秘訣
文字盤そのものは抑え気味の光沢が施されており、剣形の時針・分針と、矢尻形のインデックをより際立たせたものだ。これらはよくポリッシュされている。そのため、どれかひとつは必ず光を反射してかがやき、他のものはやや暗いトーンになるという表情を実現しているのだ。
この「かがやき」こそが、この腕時計を他の腕時計と分ける重要な要素だ。チャプターリングは、コインの縁のような形状をしており、光を見事に反射する。ちなみに、本作のクラシック モネータ ムーンフェイズという名称は、このパーツに由来するのだ。
小さくとも印象的な腕時計を実現
本作の直径は37mm。しかしながら、チャプターリングの輝きのおかげで、実際よりも大きな印象を覚える。この37mmというサイズを選択したために、絶妙に抑制の効いたラグジュアリー感を実現した。このことは、大きなサイズの腕時計でなくとも、印象的なものを生み出すことができると、雄弁に物語っている。
ただし、リュウズだけは、もう少し大きくしてもよかったかもしれない。とはいえ、クォーツムーブメントを搭載した腕時計のため、頻繁に使うことはなく、それほど気にしなくても済むポイントだ。
あえてクォーツを採用した理由
自動巻きムーブメントが搭載されていればよかったのに、と思う向きもあるだろう。フレデリック・コンスタントの「マニュファクチュール」コレクションには、「自動巻き」を搭載した優れた腕時計が多数ラインナップされているのだ。
この腕時計の狙いは、それではないように思える。まずはラグジュアリーウォッチの入門機という目的だ。もしくは、見た目が良いにもかかわらず、手軽に扱える腕時計を提供する、という目的もあるのかもしれない。ちなみに、クォーツムーブメントは、この腕時計をスリムで洗練された外観にする助けにもなっていると付け加えておこう。
高品質なストラップ、そして価格とバリエーション
ストラップは高品質なレザー製。驚くほどリアルなアリゲーターの型押しが施されている。また、フレデリック・コンスタントの紋章があしらわれたバックルは、シンプルかつ堅牢なつくりだ。
本作は3色のバリエーションで展開される。この記事で紹介したブラック文字盤のモデル、それに加えてシルバー文字盤とブルー文字盤のモデルだ。いずれの価格も19万8000円(税込み)であり、2025年1月時点で発売中だ。