ながめるだけでも楽しい!? 重厚長大な時計洋書を『ウォッチタイム』編集長がセレクト

FEATUREWatchTime
2025.01.22

『ウォッチタイム』ドイツ版編集長ダニエラ・プッシュが、一度は読みたい時計関連の書籍を7冊セレクトした。どれも大判で重量級であり、写真、もしくは図版を多数収録した「見応え」のある本ばかりだ。語学が分かればもちろん読み応えもあるだろう。『ウォッチタイム』はドイツのメディアなので、紹介される本は当然ドイツ語、場合によっては英語の本だ。日本国内では洋書店から入手せざるを得ないが、それだけの価値はあるだろう。

書籍

Originally published on watchtime.net
Text by Daniela Pusch
[2025年1月22日公開記事]

一度は読みたい7冊の時計に関する書籍

 時計に関する重厚な数々の書物から、一度は読んでみたい魅力的な7冊紹介しよう。これらの書籍は、休暇中に容易に読めるようなものではない。だが、今回紹介した書籍をひもといている時間は、素晴らしい時間以外の何物でもないはずだ。目を見張る腕時計写真に心を奪われるもよし、ウォッチメイキングという小さな宇宙を体現したアートを奥深く掘り下げるもよしである。

『The Connoisseur’s Guide to Fine Timepieces』

『The Connoisseur’s Guide to Fine Timepieces』はヨーロッパの時計製造会社の伝統とクラフツマンシップを題材としており、素晴らしいウォッチメイキングを伝える、より抜かれた150本以上の腕時計を紹介する本だ。さまざまなスタイルの腕時計がめくるめく誌面に登場する。

 例えばコンプリケーションウォッチ。それに加えて、アイコニックなデザインからクラシックなもの、はたまたアヴァンギャルドなものや、希少なヴィンテージピースも含まれる。そして、有名ブランドのものから、独立系職人の手によるものまで、その振れ幅は広い。素晴らしい写真や、微に入り細を穿つ解説をもって、腕時計の歴史と革新性を紹介する。時を超える存在である高級時計の魅力を伝えるこの本は、コレクターや愛好家にとって信頼できる情報源としても有効だ。

The Connoisseur’s Guide to Fine Timepieces

『The Connoisseur’s Guide to Fine Timepieces』
幅28 × 高さ35cm | 言語:英語 | 304ページ | ケース入りハードカバー | ISBN:9781649803351 | 著者:Robin Swithinbank | 出版社:Assouline | 195ユーロ

『The Watch Book Hanhart』

 ギズベルト・L・ブルーナーによる図版入りのこの本は、ドイツの伝統的腕時計ブランドであるハンハルトに光を当てた書籍だ。目を見張る写真と、丹念につむぎあげられたテキストによって、1882年以来続く高品質な腕時計、そしてストップウォッチを専門とするハンハルトの歴史を紹介する。

 初期の機械式ストップウォッチから、パイロット・クロノグラフ「417ES」やカルト的な人気を誇る腕時計「レースマスター」にいたるまで、140年以上におよぶサクセスストーリー中での、マイルストーンと挑戦を取り上げている。この本はただドイツのウォッチメイキングの記念碑的存在ではなく、時計愛好家や、コレクターを魅了する現代史のひとつでもあるのだ。

The Watch Book Hanhart

『The Watch Book Hanhart』
幅24.5 × 高さ31.4cm | 言語:英語およびドイツ語 | 224ページ | ハードカバー | ISBN:9783961716258 | 著者:Gisbert L. Brunner | 出版社:teNeues | 80ユーロ

『Der Uhren-Knigge』

 ステファン・フリーゼネッガーによるこの書籍では、腕時計のスタイルとエチケットを取り上げる。著者が勧めるスタイルのルールを紹介し、コラムニストかつ腕時計の専門家である著者が、読者が求める質問に答えを下してゆくのである。

 本書の中ではこのようなテーマが取り上げられる。とある場面で適切なスタイルの腕時計とは? スタイルを崩してしまう要因は? 腕時計が自分自身の外観や、今後のキャリアに与える影響はあるのか? フリーゼネッガーは日常やフォーマルな機会、そして腕時計の購入時も含めて、なぜスタイルが腕時計にとって中心的な役割を果たすのかを力説するのだ。

Der Uhren-Knigge

『Der Uhren-Knigge』
幅16.9 × 高さ23.7cm | 言語:ドイツ語 | 160ページ | ハードカバー | ISBN:9783987021060 | 著者:Stefan Friesenegger| 出版社:GeraMond | 24.99ユーロ

『Van Cleef & Arpels Collection 1906-1953』

 1906年のパリ・ヴァンドーム広場への最初のブティック出店から、ヴァン クリーフ&アーペルは、ジュエリー・時計製造・装飾芸術において、重要な歴史を刻んできた。このブランドは自らのコレクションを2冊に分けて集約した。1953年までに発表された厳選された700点の作品が、文献や文脈に沿った図版とともに、2冊分冊のうち、最初の1冊に収められている。

 それぞれのチャプターは、時代やスタイルに変化を及ぼしたアイコニックな宝飾品からスタート。紹介されるコレクションを通して、読者をミュージアムのクリエイティブな世界へといざない、20世紀前半のデザインと文化シーン全体への理解を与えてくれる。

Van Cleef & Arpels Collection 1906-1953

『Van Cleef & Arpels Collection 1906-1953』
幅21 × 高さ28cm | 言語:英語(フランス語版、中国語版もあり) | 678ページ | ハードカバー | ISBN:9782365113892 | 執筆者:Émilie Bérard, Mélodie Le Lay, Cécile Lugand, Marion Mouchard, Solène Taquet | 出版社:Atelier EXB | 220ユーロ

『Citizen The Essence of Time』

 日本国内での時計の国産化を目的とした尚工舎時計研究所によって、1924年に最初のシチズンの名を冠した懐中時計作られた。シチズンという名称は、当時の東京都知事後藤新平によって、永く広く市民に愛されるように命名されたものである。それ以来、シチズンは、着用する人にとって真に価値のある時計を製作するというゴールを目指し、日々歩み続けてきた。

 現在のシチズンは、世界でも有数の規模を誇る時計メーカーとなり、さまざまなデザイン・技術・革新性を持つ時計のセレクションを世に送り出し続けている。シチズンの時計生産の歴史は、20世紀、そして21世紀における、時計作りの進化を反映したものだ。『Citizen The Essence of Time』は、1世紀にわたる同社のマイルストーンを紹介することで、世界中の人々にとって時間的体験は、人間にとってかけがえのないものであると伝え、同社のたゆまぬ高精度・革新・創造性を見せてくれる本だ。

Citizen The Essence of Time

『Citizen The Essence of Time』
幅27.94 × 高さ35.56cm | 言語:英語 | 240ページ | ケース入りハードカバー | ISBN:9781649803627 | 著者:Jack Forster | 出版社:Assouline | 195米ドル

『Rolex The Impossible Collection』

 1世紀以上にわたって、ロレックスは世界的にかなりの人気を誇る、伝説的な時計ブランドである。2017年に1780万ドル(約27億7370万円、1米ドル=155.83円、2025年1月22日現在、以下同)で落札されたポール・ニューマンの「デイトナ」など、記録的なオークションによって、ロレックスは最も収集熱が高い時計ブランドでもあり続けているのだ。

 この本の第2版では、初掲載となる稀少な腕時計の写真を多数掲載。専門家であるファビエンヌ・レイボーによるセレクションを、芸術的な装丁で楽しむことができる。1900年代初頭の最初の時計や、1931年に発表された最初の「オイスター パーペチュアル」、1953年のエドモンド・ヒラリー卿によるエベレスト登頂の際の「エクスプローラー」、そしてジェイムズ・ボンドの映画でジョージ・レーゼンビーが着用した「サブマリーナ」などの希少なタイムピースを皮切りに、高い価値と技術的革新性を備えたロレックスの腕時計が多数収められた本だ。

Rolex The Impossible Collection

『Rolex The Impossible Collection』
幅38 × 高さ46cm | 言語:英語 | 196ページ | ケース入りハードカバー | ISBN:9781649802835 | 著者:Fabienne Reybaud | 出版社:Assouline | 1400ユーロ

『500 Years 100 Watches』

 ふたりの時計収集の専門家によって編纂されたこの本は、5世紀にわたるウォッチメイキングの変遷に光を当て、100点の特別なタイムピースを紹介している。過去500年に誕生した、重要かつ芸術的である並外れた腕時計の数々を1冊にまとめあげたものだ。

 世紀ごとに年代順に並べられた時計は、技術的な精度、ユニークなデザイン、歴史的な重要性という特徴に基づいて紹介されている。初期的な形状をしたアストロラーベ文字盤を備えた、印象的なエリザベス時代の時計や、17世紀のエメラルドセットの時計、初期のリピーター時計や、永久カレンダー時計、トーマス・マッジによる最初のレバー時計、重要な精密時計、ブレゲとパテック フィリップの複雑なモデルを紹介するセレクションだ。

 そのほかのハイライトとしては、ウィンストン・チャーチル卿の「ワールドタイム ビクトリー ウォッチ」や、インド共和国の独立記念日を象徴するロレックス、宇宙に行ったオメガの「スピードマスター」、ロジャー・W・スミスの時計が該当する。この本は愛好家、コレクター、そしてウォッチメイキングの芸術と科学に興味のある人なら、誰でも満足するに違いない。

500 Years 100 Watches

『500 Years 100 Watches』
幅30 × 高さ24cm | 言語:英語 | 304ページ | ハードカバー | ISBN:9783791379753 | 著者:Alexander Barter, Daryn Schnipper | 出版社:Prestel | 65米ドル



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