いち早く2025年の新作発表が行われている、LVMH ウォッチ ウィーク。2023年にルイ･ヴィトンのウォッチメイキングアトリエ「ラ・ファブリク・デュ・タン ルイ・ヴィトン」傘下となったダニエル・ロートからは、ドレッシーな「エクストラ プラット スースクリプション」が登場している。
ダニエル・ロートの2025年新作は「エクストラ プラット スースクリプション」
1990年代のブランド創設時の原点をたどるかのように、ダニエル･ロートが2作目のモデルとして 2針のみのドレスウォッチを発表した。「エクストラ プラット スースクリプション」である。前作の「トゥールビヨンスースクリプション」と同様、本作も同ブランドが2023年より傘下となった「ラ･ファブリク･デュ･タン ルイ･ヴィトン」によって開発、製造されたものだ。
手巻き（Cal.DR002）。21石。2万8800振動／時。パワーリザーブ約65時間。18KYGケース（横35.5×縦38.6mm、厚さ7.7mm）。30m防水。世界限定20本。4万5000CHF。
ダニエル･ロートは本作を通じて、そのルーツと創業者にオマージュを捧げるという。トゥールビヨン スースクリプションで確立された、特徴的なフォルムを踏襲するこの新作モデルは、スタイルとクラフツマンシップの面においては 1990年代のオリジナルモデルに忠実だ。しかし機構面は一新されており、本作のために特別に開発された手巻きムーブメントCal.DR002を搭載している。
製作したのはラ･ファブリク･デュ･ タン
「ダニエルとは旧知の間柄だったので、ウォッチメイキングに対する彼の哲学とビジョンを忠実に守りたかった」と語るのは、「ラ･ファブリク･デュ･タン」の創業者であるミシェル･ナバスとエンリコ･バルバシーニだ。「『エクストラプラット スースクリプション』は2針のシンプルなウォッチ。ダニエルならきっとそうしていた通り、最高の外観上そして技術上の基準に沿って実現されているが、今回は自社のマニュファクチュールで製作を行った」。
オリジナルをたたえて
トゥールビヨンスースクリプションの独特なスタイルを受け継ぐエクストラプラット スースクリプションは、18Kイエローゴールド製のケースをまとい、ハンドメイドのクル･ド･パリのギヨシェ装飾が施された 18Kイエローゴールド製のダイアルが組み合わされている。
エクストラ プラット スースクリプションは、1990年代のオリジナルモデルの洗練されたフォルムを忠実に守りつつ、トゥールビヨン スースクリプションと同じ寸法となっており、ケースサイズは横35.5×縦38.6mm。しかし、ケースの厚さはトゥールビヨン スースクリプションよりさらに 薄く、7.70mmに。これは、厚さわずか3.1mmの超薄型ムーブメントCal.DR002を搭載したことによるものである。
ケースデザインはオリジナルに忠実でありながら、ダニエル･ロートのビジュアルコードに合わせて、やや手直しされている。18Kイエローゴールド製のケースは、アイコニックなダブルエリプス形状を維持しつつ外周に沿ってひだ装飾が完璧に中央に配置され、均整なバランスに。一方、ラグは視覚的な一貫性を持たせるためにわずかな丸みを帯び、下向きにアーチを描いて優れた装着感をかなえてくれるのだ。
ギヨシェダイアルにも注目
ギヨシェ模様のダイアルも同じく伝統にならい、昔ながらのアルチザン的な手法で製作。ダイアルはベース部分とその上に貼られたチャプターリングのふたつのパーツで構成され、どちらも18Kイエローゴールド製。そして、ラ･ファブリク･デュ･タンが自社で抱えるギヨシェアトリエにおいて修復されたアンティークの機械を用いて、手彫りが施されている。
新開発のムーブメントCal.DR002
ラ･ファブリク･デュ･タン ルイ･ヴィトンがダニエル･ロートのために考案した2作目のムーブメントであるCal.DR002は、ダニエル･ロート氏本人とスイスのハイウォッチメイキングをたたえるものだ。Cal.DR002は、トゥールビヨン スースクリプションに搭載されたCal.DR001の独特なビジュアルスタイルを踏襲ながらも、エスクトラ プラット スースクリプション向けにいちから開発された。
Cal.DR002は、ケースと同じ“ダブルエリプス”形状の独特なフォルムのムーブメントを採用。型破りなフォルムにも関わらず、このムーブメントは構造面でも装飾面でも、伝統的なハイウォッチメイキングの特徴をすべて装備する。クラシカルなムーブメントにインスパイアされたブリッジの流麗な輪郭は、アングラージュと呼ばれる丸みを帯びたポリッシュ加工の面取りで仕上げられ、熟練の職人にしかできない鋭い角も併せ持っている。
ムーブメントのクラシカルな趣にも関わらず、Cal.DR002の技術的基盤は洗練されている。2万8800振動／時のテンプはフリースプラング機構となっており、4本のアームで構成され、それぞれが調整のための可変慣性錘を備えることで、長期間にわたる卓越した安定的な計時性能を保証。また、単一の大型の主ゼンマイは、約70時間のパワーリザーブを実現し、3日間、つまり週末を通して動き続ける利便性を備えている。
注目すべきディテール
ダニエル･ロートについて
ダニエル･ロートという独立時計師の名前は、ジョージ･ダニエルズや F.P.ジュルヌ、フィリップ･デュフォーといった 20世紀の偉大な独立系時計メーカーと頻繁に並び称されている。実際、彼は伝統的なウォッチメイキングにおけるこうした偉大な人物たちの同時代に生き、時にはその協力者を務めていた。ロートはフランスの時計職人の家庭に生まれ、早くからオーデマ ピゲなどで修業を積んだ。すぐにブレゲに採用されて、1976年に同ブランドの再開発を率い、ル･ブラッシュにブレゲ初の工房を開設してスイスにこのブランドを再確立。その後 12年間にわたってブレゲの将来を決定付けた彼の影響力は、計り知れないものだった。1988年、ロートは、大手ブランドの安定した仕事を離れて自らの名を冠したブランドを立ち上げた最初の時計師のひとりとなった。間もなく最高水準の基準を定めたこの名時計師は、ブランドを特徴付けるデザインとなるユニークなダブルエリプスケースに収められた、トゥールビヨン腕時計の製作に取組みはじめた。1988年、ロンドンのアスプレイから、特殊な秒表示を備えた 25個の手巻きダブルフェイス･トゥールビヨンの製作を依頼されたことで、自身のブランドとビジョンの立ち上げ資金がもたらされた。
1989年、この特徴的なトゥールビヨンは「2187 / C187」として生産されることとなった。その後間もなく、ロートは伝説的なレマニア 2310をベースにした2レジスター･クロノグラフである「C147」や、ヴィーナス179ムーブメントを用いた一連のラトラパンテを装備したスペシャルピースを発表。忘れてはならないのは、当時、小さなブランドはもとより、主要なスイス･メーカーのカタログにも手巻きのクロノグラフは見かけられなかった。ロートはその後さらに、いずれも今やロートのアイコンとなった長円形のケースに収められた、「C107 ウルトラシン自動巻き」や「C127 レトログラード」、「C117 パーペチュアルカレンダー」を製作。C117 パーペチュアルカレンダーの瞬間ジャンプ機構は、フィリップ･デュフォーらとの直接のコラボレーションによる成果だった。
