F1とのグローバル・ラグジュアリー・パートナーシップ締結で話題を振りまいた昨年のLVMH。グループ内の時計ブランドで、F1と最も緊密な関係を築いてきたタグ・ホイヤーは、今年の幕開けに新生「フォーミュラ1 クロノグラフ」を早速発表した。モータースポーツのスピリットを反映して生まれ変わった最新モデルとは?
![タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ](https://www.webchronos.net/wp-content/uploads/2025/02/no117_TAG_1.webp)
2025年はF1発足75周年、タグ・ホイヤーとF1との関係も40周年になる。F1開幕に合わせて発売予定のこのモデルは、レーシングカーの造形を思わせるチタンのケースや、シームレスに連続するラバーストラップ、全モデルに自動巻きムーブメントCal.16を搭載するなど、すべてが新しい。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。Tiケース(直径44mm、厚さ14.1mm)。100m防水。予価70万4000円(税込み)。
Photographs by Ryotaro Horiuchi, Keita Takahashi
菅原茂:取材・文
Text by Shigeru Sugawara
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年3月号掲載記事]
より軽快に、よりスポーティーに
昨年9月にタグ・ホイヤーのCEOに就任したアントワーヌ・パンはタグ・ホイヤーの新しい展開について「HOWは変わるが、WHATは変わらない」と語り始める。表現の仕方は違ったとしても、ブランドのアイデンティティーは変わらないという意味だ。この言葉は新生「タグ・ホイヤー フォーミュラ1 クロノグラフ」にもまさに当てはまる。
![アントワーヌ・パン](https://www.webchronos.net/wp-content/uploads/2025/02/no117_TAG_4.webp)
フランス・パリのHEC経営大学院を卒業。1994年、タグ・ホイヤーでキャリアをスタート。2002年、LVMHグループ ゼニス入社。その後、タグ・ホイヤー ジャパンのジェネラルマネージャー、ブルガリグループ ウォッチ部門のマネージング・ディレクターを経て24年9月にタグ・ホイヤーCEOに就任。
「タグ・ホイヤーは、40年前の1985年にマクラーレン・レーシングチームのスポンサーに就任し、翌年にフォーミュラ1を初めて発表しました。自動車のトップに位するF1を時計の形で入手可能にしたのは画期的でした。日本でも大成功を収めましたよね」
スティールケースにプラスティックベゼルを組み合わせ、ラバーストラップを装備した初代フォーミュラ1は、当時としては極めて斬新なスポーツウォッチで、世界中で人気の的になった。
「今もF1の世界との強い絆に変わりはありません。また、タグ・ホイヤーにはさまざまなクロノグラフを作ってきた歴史もあります。最新モデルのコンセプトは、もっと現代的でマシンのイメージに近いクロノグラフです。デザインにマシンの特徴が反映され、細部まで進化を遂げています」
今回のそれは、クルマの全面モデルチェンジに近い。具体的にはチタンを採用する完全に新しいデザインのケースおよびプッシャー、ケース形状と一体化したラバーストラップ、自動巻きクロノグラフムーブメントなどに表れている。コレクションの歴代モデルとは、ボディもエンジンも別物と言えるほどの変化だ。しかもこれまでになくスタイリッシュ。
さらに彼は、70万〜80万円台という価格も最新作のポイントだと続ける。
「このごろの高額化傾向はクレイジーだと思います。その点、新しいフォーミュラ1 クロノグラフは、コストパフォーマンスに優れている。大切なのは何より品質です。価格はあくまでも品質や革新への正当な評価でなくてはなりません」
ターゲットは、どのような人々を想定しているのかと問うと「マーケティングでプロファイリングする手法は古い」と即座に返すパン。「年代や男女を問わず、価値を共有する人たち、そして自分をもっと高めたいというマインドがターゲット」とのビジョンを明確に示した。
自分を超える特別なキャパシティーを引き出してくれるのがこの時計だとしたら、手に入れる価値は大いにありそうだ。