経営者の「虚栄心を満たす輝き」。ロレックス「スカイドゥエラー」ミントグリーン文字盤を着用レビュー

2025.02.18

時計専門誌『クロノス日本版』の発行人であり、小誌を発行する出版社の代表取締役でもある松崎壮一郎が、2023年に登場したロレックスの「オイスターパーペチュアル スカイドゥエラー」Ref.336934の、ミントグリーン文字盤モデルを着用レビューする。ロレックスを買い続けてきた松崎が感じた、本作の美点、そして気になる点とは?

松崎壮一郎:写真・文
Photographs & Text by Soichiro Matsuzaki
[2025年2月18日公開記事]


緑が好きだから、ロレックスを買い続けてきた

 子供の頃から緑色が好きだった。

 緑色の時計を買ったのは、ロレックスの「サブマリーナー デイト」Ref.16610LV、通称“カーミット”が最初だ。その後も緑色がコーポレートカラーのロレックスを、国内・海外問わず、買える機会があれば買っている。

 好きが高じて『クロノス日本版』を創刊する際、送本用の紙袋の色も緑色にした。これは創刊20年を経る今でも使い続けているが、ロレックスの広告は入れてもらえていない。きっと弊誌は、過去にロレックスに対して、何かやらかしたのだろう。


ミントグリーン文字盤の「スカイドゥエラー」を借りて着用

 そんな筆者は先月から、ある時計好きの友人に頼み込んで、ロレックスの複雑時計「オイスターパーペチュアル スカイドゥエラー(以下スカイドゥエラー)」Ref.336934を貸してもらっている。ミントグリーン文字盤でオイスターブレスレット仕様の本機は、友人いわく「デイトナに次ぐ一番人気」だそうだが、ジュビリーブレスレットを選んだ方が大人っぽくて良かったろうと思う。

ロレックス スカイドゥエラー

ロレックス「オイスターパーペチュアル スカイドゥエラー」Ref.336934
自動巻き(Cal.9002)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。SS×18KWGケース(直径42mm、厚さ13.8mm)。100m防水。

 昨年の秋から直径40mm、厚さ12.5mmのサブマリーナーを着用していたせいか、スカイドゥエラーを手首に載せてみての最初の感想は「大きい」そして「分厚い」だった。直径42mm、厚さ13.8mmのこのモデルは、スペック以上に大きく厚い印象を与えるように思う。

 このスカイドゥエラーが発表されたのは2012年。「世界を旅する旅行者のために」、年次カレンダーとデュアルタイム機能を搭載したロレックス初の複雑モデルであり、初出時はホワイト、エバーローズ、イエローと、3種の18Kゴールドケースだけの発表だった。しかし2017年に、待望のSSケースが発表される。この年に私は都内の有名百貨店にSS製スカイドゥエラーの黒文字盤を注文し、めでたく購入可能となったのだが、その大きさと厚さにたじろいでしまい、あろうことかまたいでしまった。そう、キャンセルしたのだ。


虚栄心を満たす輝き……重さは少し気になるか?

ロレックス スカイドゥエラー

ロレックスのアイコニックなフルーテッドベゼルに、高い機能性を付加したリングコマンドシステム。デザインとしての輝きと優れた実用性を両立するベゼルと言える。

 キャンセルから8年を経た2025年、“高級焼き鳥”を餌に友人に貸してもらっているこのスカイドゥエラー。SSケースだがベゼルは18Kホワイトゴールドというゴージャスな仕様を、私はとても気に入っている。「デイトジャスト」より幅広なフルーテッドベゼルがキラキラと光を反射する様は、私の虚栄心を満足させるに余りある輝きだ。

 問題は時計の重さである。ブレスレットは堅牢で頼もしいが、装着時のヘッドが重い。この重量は、44mm径のケースを持つパネライより重く感じる。もっとも、特許取得済みのイージーリンクシステムによって、バックル部分で工具を使うことなくブレスレットサイズを5mmほど調節が可能だ。そのため重さが気になっても、手首回りぴったりに調整のうえ巻きつければ、快適な装着感を得ることができる。

ロレックス スカイドゥエラー

バックルに内蔵されたイージーリンク。リンクを引き出してスライドさせることで、約5mmのサイズ調整が可能だ。


優れた実用性にも満足

 高精度クロノメーターに認定されたロレックスのムーブメントの、ケーシング時に±2秒という超絶な精度は、借りて2カ月を過ぎた今でも申し分がないと感じる。3時位置のサイクロップスレンズに覆われたデイト表示は、深夜12時を過ぎて20秒以内にカシャッと切り替わる。A.ランゲ&ゾーネほどの瞬転式とまではいかないものの、素晴らしい機能である。パワーリザーブは約72時間。十二分に現代的なスペックである。

 また、ロレックス独自の年次カレンダー機構「サロスシステム」やデュアルタイム機能の操作を司るリングコマンドシステム、これが実に使いやすくて良い。説明書を読んだ当初はチンプンカンプンだったが、慣れると分かりやすいシステムである。肝はベゼルが左方向3段階に動く点にある。ベゼルを回転させることで、リュウズの「設定モード」が切り替わるのだ。このシステムは利便性と同時に、おもちゃを動かすような楽しさをプラスしている。

ロレックス オイスター パーペチュアル スカイドゥエラー

多機能なスカイドゥエラーは、時分針とデイト表示の小窓のほか、デュアルタイムディスク、インデックス外周に設けられた月表示の小窓が搭載されている。なお、当月は小窓から赤いディスクが見える仕様となっている。

 設定方法はロレックスの公式ホームページで公開されている。難点は、視覚的に理解しやすい操作マニュアル動画を、このホームページから探しにくいことだが、https://www.rolex.com/ja/watches/sky-dweller/featuresをスクロールしていけば、下の方に設置されている。もっとも、YouTubeにはスカイドゥエラーの操作方法に関する動画がさまざまなチャンネルから多数アップされているので、参考にしやすい。

 簡単に操作方法を解説すると、まずねじ込み式のリュウズロックを外し、一段引く。秒針停止能が付いているため秒針は止まる。そしてベゼルを左方向に3ステップ回す。この状態でリュウズを回すと、分針に連動して24時間表示のホームタイムディスクが動くので、「ROLEX」のロゴの下に設置された三角マークに現在の時間を、分針で分を合わせる。神経質な人は、電波時計を見ながら秒まで合わせたいところだ。筆者もそうしている。

 移動先のローカルタイムは、この状態からベゼルを右に1ステップ動かし、リュウズを回す。すると時針だけが単独で動くので、現在地の時刻に合わせられる。時針は操作禁止時間帯がないため、飛行機の中でのローカルタイム設定はいつでも自由自在だ。

 年次カレンダー設定で重要な月と日付は、ベゼルをさらに右方向に1段階だけ回し、リュウズを回して日付と月を合わせる。すべて終了したら、ベゼルを最初の位置(ニュートラル)まで戻し、リュウズをねじ込めば良い。

 つまり飛行機内で移動先の時刻に修正する場合は、ベゼルを左に2段階回して時針を操作し、終わったらまたベゼルを12時位置に戻せばよい。ベゼルの位置をニュートラルに戻し忘れて使っても、リュウズさえねじ込んでいれば誤動作はないため、安心である。


モデルチェンジしたスカイドゥエラー

ロレックス Cal.9002

現行スカイドゥエラーに搭載されている、自動巻きムーブメントCal.9002。高精度に加えてパワーリザーブ約72時間、耐磁性能や耐衝撃性能を備えた、信頼性の高いムーブメントとなっている。

 現行スカイドゥエラーは、2023年にモデルチェンジしていることも解説しておく。

 本作に搭載されるムーブメントは、2012年に初出のCal.9001から進化したCal.9002。2023年に発表された新型機である。磁気と熱変化に強いブルーパラクロムヒゲゼンマイを採用したうえで、高性能なパラフレックスショック・アブソーバにマイナーチェンジされているため、耐衝撃性も向上している。

 以前のモデルとの変更点として、文字盤6時位置の「Swiss」と「Made」の間に2個の王冠マークがプリントされた点も挙げられるが、老眼では読めもしない。


年次カレンダーとして「買い!」な1本

 ロレックスの「オイスターパーペチュアル スカイドゥエラー」Ref.336934の、ミントグリーン文字盤を着用レビューした。本作は、年次カレンダー搭載モデルとして「買い」な1本である。

 年次カレンダーといえば、1996年に特許を取得したパテック フィリップが有名だ。同社から2006年に発表された、デイデイト表示とムーンフェイズ付きの「年次カレンダー」Ref.5396のケースは直径38.5mmで、厚さは11.2mm、30m防水。販売価格は税込み912万円(18Kローズゴールド製モデルの場合)である。一方のスカイドゥエラーのケースは、径42mm、厚さ13.8mm。ユーザーの体格によって印象が変わるが、この大きさがパテック フィリップのそれとは違ったスポーティーな印象をもたらしている。SS製ケースで年次カレンダーを搭載したモデルをお探しの諸兄にとって、本作の244万2000円(税込み)という販売価格は現実感があるだろう。今のところスポーティな外観の年次カレンダーは、ロレックスしか作っていないのだから。



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