ジャガー・ルクルトの「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」は、ラウンド型ケースという伝統的な意匠を採用しつつ、高級時計にふさわしい装飾や仕上げが施された腕時計だ。加えて、自動巻きクロノグラフムーブメントの搭載や、1000時間も費やす品質検査を行うなど、伝統を受け継ぎつつも、数々の革新の末に生まれた腕時計である。

Ref.Q4138180はディープブルーを文字盤の地とし、ミニッツスケールにライトブルーを採用した、ツートン配色のモデルである。文字盤はサンレイ仕上げだ。「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」そのものは、2020年に初めて発表されており、このモデルは2024年に登場したカラーバリエーションである。自動巻き(Cal.759)。36石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径40mm、厚さ12.05mm)。5気圧防水。299万2000円(税込み)。
ジャガー・ルクルト:写真 Photographs by Jaeger-LeCoultre
岡本美枝:翻訳 Translation by Yoshie Okamoto
Edited by Yousuke Ohashi (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年3月号掲載記事]
伝統と革新から生まれた「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」
「ウォッチメーカーの中のウォッチメーカー」の異名を持つ、名高いジャガー・ルクルト。誇りを持ってその名を名乗り、比類なき伝統と卓越性を矜持としているブランドだ。スイス・ジュウ渓谷を本拠地とするこのブランドは、ジュラ山脈の雄大な景観からインスピレーションを受け、深く根差したイノベーションの精神を原動力とし、高級時計作りの神髄を極めるべく日々、努力を続けている。時計師、エンジニア、デザイナー、熟練職人らが緊密に協力し合い、卓越したタイムピースを生み出している。
1833年の創業以来、このブランドは430件を超える特許を取得し、1300以上ものムーブメントを開発してきた。その功績は、ミニッツリピーターやトゥールビヨンなど、高級腕時計製造の最高峰と言える複雑機構をはじめ、メティエ・ラール™と呼ばれる独自の装飾技法までと数多い。今日、ジャガー・ルクルトは精緻で革新的な腕時計作りによって、時計愛好家にとっては外せないブランドとなっている。。アイコニックピースの「レベルソ」は世界で最も有名な腕時計のひとつであり、ブランドの中核を成す。また、2024年にアップデートされた「デュオメトル」や、名品ぞろいの「マスター」コレクションは、ブランドのレパートリーの広さを象徴する。

ジャガー・ルクルトの歴史は、画期的なイノベーションの数々に彩られたものだ。1833年、アントワーヌ・ルクルトは高精度の時計を製造する工房を立ち上げる。1844年にはミクロン単位で測定できる史上初の計測器、ミリオノメーターを開発。1847年には鍵のいらないリュウズ巻きの時計を発明するなど、早くから時計作りの基準を確立してきた。
1903年、フランス人時計師エドモンド・ジャガーが、自身の発明した薄型ムーブメントの製品化を打診。3代目であるジャック=ダヴィド・ルクルトはこの挑戦を見事に果たし、1907年に発表された世界最薄懐中時計などの傑作へとつながっていく。このパートナーシップの成功により、1937年にはブランド名はジャガー・ルクルトへと変更された。
マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー

「マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダー」は、ブランドの誇る最高峰の時計技術がもたらした結晶のひとつだ。このモデルでは、「マスター・コントロール」コレクションの、タイムレスなエレガンスと、精緻を極めた機構が、ごく自然に融合されている。30年以上、新しい基準を打ち立て続けてきたこのコレクションは、ブランドの伝統との深い結び付きと、絶え間ないイノベーションの追求を体現している。
「マスター・コントロール」コレクションは、マスター・コントロールテストをクリアした、初のコレクションだ。これはブランドが「1000時間コントロール」と呼ぶ、1000時間かけて行う厳格な品質検査であり、スイス公式クロノメーターの検定基準をはるかに上回る。現在、この品質検査はジャガー・ルクルトのすべての製品に行われるようになっており、ブランドが顧客に約束する品質の象徴となった。21世紀の今日も、マスター・コントロールは機械式時計製造への敬意と、伝説的な複雑機構を体現し続けている。
マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダーは2020年に発表された。タイムレスなデザインと、洗練されたプロポーションを備えた腕時計だ。「メモボックス」や「フューチャーマティック」などの、1950年代から60年代に発表された伝説的な腕時計に敬意を表するデザインである。明瞭なケースのラインと、洗練されたディテールは、文字盤上のクロノグラフとカレンダーを引き立てる、効果的な要素だ。マスター・コントロールの重要なデザインコードである、ドーフィン針や、アラビア数字インデックスといった特徴に、アロー型のアワーインデックスが追加されている。
直径40mm、厚さ12.05mmのステンレススティール製ケースは、シンプルなエレガンスが魅力的だ。サテン仕上げのケース側面、ポリッシュ仕上げのベゼルやリュウズ、ダイナミックに湾曲したラグなどのディテールが、この腕時計に洗練された印象を与え、長方形のクロノグラフプッシャーが、タイムレスなスタイルに現代的なニュアンスを添えている。
搭載されているジャガー・ルクルトが自社開発・製造するムーブメント、Cal.759は、動力の連結に垂直クラッチを、クロノグラフ機構の制御にコラムホイールを採用。そこにトリプルカレンダーとムーンフェイズ表示機構を組み合わせた。約65時間のパワーリザーブを備え、エレガンスと洗練された技術を兼ね備えたこのムーブメントは、サファイアクリスタルを採用した裏蓋から眺めることができる。コート・ド・ジュネーブ装飾や青焼きネジ、そして「JL」のエンブレムに型抜きされたゴールド製ローターは、まさに眼福だ。スイス・ジュウ渓谷のル・サンティエにあるマニュファクチュールで開発、製造、仕上げ、組み立てが行われた、最高レベルのクラフツマンシップの賜物と言えるだろう。
ディープブルー文字盤の新作
2024年には、カラーバリエーションとして、ディープブルーの文字盤を備えた、ステンレススティール製のモデルが登場した。深い色合いが印象的なサンレイ仕上げのディープブルー文字盤は、見る者の目を引きつけてやまない。3時位置の30分積算計と9時位置のスモールセコンド、そして12時位置の曜日・月表示窓と6時位置のムーンフェイズ表示および指針式の日付表示が、それぞれ対応することで調和が生まれている。なお、文字盤を縁取っているのは医師が心拍数を測るときに使用するパルスメーターであり、現代でも重視される伝統的なディテールのひとつだ。
マスター・コントロール・クロノグラフ・カレンダーは、ストラップを簡単に交換可能なインターチェンジャブルシステムを採用。ステンレススティール製ブレスレットを備えたモデルでは、高級感のあるブルーのカーフレザーストラップも付属するため、シーンに応じて付け替えることができる。

近年発表された他のカラーバリエーションも紹介しよう。ピンクゴールド製ケースにブラック文字盤を備えたモデルは、2023年に発表された。20世紀のカラフルな文字盤をモチーフに、ヴィンテージ感を再解釈した腕時計だ。ブラック文字盤でありながら、曜日や月表示、インダイアルの数字の一部にレッドの色を差すことで、これらの要素を際立たせている。
2022年、マスター・コントロールの誕生30周年を記念して、シルバーグレー文字盤にブルーのアクセントを加えたモデルが登場。また、堅牢で汎用性の高い、デイリーユース用腕時計への需要の高まりを受け、インターチェンジャブルシステムを備えた、ステンレススティール製ブレスレットも初めてラインナップに加えられた。これらのバリエーションはどれも、クラシカルなDNAを失わずに絶え間なく進化するブランドの姿勢を反映している。クリアで洗練された審美性は、タイムレスで汎用性の高い腕時計を求める声に応えるものだ。