カシオ計算機は、2025年1月に新シリーズ「FINE METALLIC SERIES」をリリースした。今回はその中から、デジタル-アナログ表示を持つ「2100」シリーズのゴールドカラーモデル「GM-2100YMG-9AJF」を着用レビューする。樹脂の柔らかな着け心地と統一感のある金属調のルックスを兼ね備えた、G-SHOCKのファッショナブルな魅力を一際実感できる1本だ。
Photographs & Text by Kento Nii
[2025年3月11日公開記事]
新シリーズ「FINE METALLIC SERIES」
2024年、時計産業参入の50周年を迎えたカシオ計算機。同年中にはこれを祝う多くの限定モデルや、「カシオトロン」、あるいは“オリジン”と呼ばれる「DW-5000C」の復刻版といった、多彩なモデルがリリースされ、多くのカシオファンが沸き立った1年であった。そして、コレクションのさらなる拡充が期待されているこの2025年に、早速登場した新コンセプトシリーズが「FINE METALLIC SERIES」だ。
本シリーズの特徴は、「タフシリコーンバンド」と呼ばれる新たな樹脂製バンドの採用による、滑らかな着用感と金属調の外観の両立だろう。この樹脂製バンドは、スケルトンの樹脂の裏側にゴールドまたはシルバーカラーの蒸着処理を行い、シリコン樹脂を張り合わせることで、メタルの質感に近い輝きと肌触りの良さを両立した複層構造のバンドだ。FINE METALLIC SERIESでは、このバンドと、インナーケースをステンレス製のベゼルで覆ったメタルカバードデザインのケースを組み合わせることで、ファッショナブルなフルメタリック調の外観を実現しているのである。

今回インプレッションを行うのは、スリムな八角形デザインを持つ「2100」シリーズに属する、GM-2100YMG-9AJFだ。今やG-SHOCKのニュースタンダードとなった2100シリーズのスタイルは、「“フルメタル”G-SHOCK」や「MR-G」といった多彩なコレクションで見られるようになっており、新たなFINE METALLIC SERIESの一員に選ばれたのも、その人気の高さあってのものと考えられる。

クォーツ。樹脂+SSケース(縦49.3.×横44.4mm、厚さ11.8mm)。20気圧防水。4万5650円(税込み)。
“フルメタル”G-SHOCKでも人気の高いゴールドカラーを採用し、20気圧防水や優れた耐衝撃性を備えた本作は、カジュアルなコーディネートに選ぶ普段使い用の“金色”ウォッチとして、魅力的な選択肢のひとつとなってくれることだろう。価格は4万5650円(税込み)で、“フルメタル”G-SHOCKの同型同色モデル「GM-B2100GD-9AJF」と比べると、4万円ほど安く購入することができるゴールドカラーモデルだ。
ゴールドを強調したカラーリング
まずは、ゴールドカラーに包まれたそのデザインを確認していく。ダイアルはブラックとゴールドカラーが生み出す王道的なコントラストが映えており、載せられたゴールドカラーの針とインデックスが存在感を放っている。また、各種表記にもゴールドカラーが採用されており、視認性とともに腕時計全体の一体感が追求されているのが分かる。

ダイアル外周の見返し部に施された深い彫りは、ミニッツトラックとデザインのアクセントを兼ねる要素だ。メタルカバードデザインの同型モデルでも見られる仕様で、表情に奥行きを与えている。さらに、これらを囲むゴールドカラーのベゼルはヘアライン仕上げ、ケースサイドはポリッシュとヘアラインが使い分けられており、2100シリーズの他のメタルモデルと同様に、樹脂モデルにはないメリハリの効いた外観を楽しめる意匠に仕上がっている。
普段、樹脂製のG-SHOCKやシルバーの“フルメタル”G-SHOCKを愛用している筆者からすると、本作の着用レビューは非常に新鮮であった。腕を動かすたびに存在感を放つトータルゴールドカラーのG-SHOCKは、眺めているだけでワクワクさせてくれる。もし、合わせるコーディネートを選ぶのなら、アメカジだろうか、ストリートだろうか。ラフなサーフスタイルのアクセントにするのも良いかもしれない。そういった風に考えられるのも、気軽に使える金色ウォッチである本作ならではの魅力と断言できるだろう。
滑らかなタフシリコーンバンド

本作のフルメタリック調の要である、「タフシリコーンバンド」にも注目したい。着け心地は言わずもがな良好だ。金属にはない柔軟性を持つシリコン樹脂は手首に柔らかくフィットするため、ヘッドが振られるような感覚もない。金属調を備えつつこの軽やかな着け心地を実現している点は、初めて着用した際に驚いたポイントであった。
その一方で、このバンドとステンレススティール製のブレスレットを見比べると、チープさが否めないのもまた事実だ。しかしながら、フルメタリック調の質感と良好な着用感の両立を、アンダー5万円という価格で実現したのは大金星と言えるのではないだろうか。しかも、樹脂製のバンドは傷付くことを気にせず使いやすく、金属アレルギーの人も選びやすいというメリットも挙げられる。実用性と美観を兼ねたその仕様から、他のコレクションへの採用や、さらなるカラーリング展開に期待したいところである。
ファッション性>機能性
カラフルなメタリックカラーダイアルを備える「GM-2110」シリーズなど、ファッション性を意識したG-SHOCKは、機能性が控えめになる傾向にある。本作もまた同様だ。タフソーラーを持たない1次電池式のモデルであり、電波受信機能も持ち合わせていない。その分価格が抑えられており、気軽に金属調のG-SHOCKを楽しめるモデルに仕上がっているのである。とは言っても、ストップウォッチ機能や日付、曜日表示、ワールドタイム機能といった、G-SHOCKらしい機能性の多くはしっかりと備わっているため、実用アイテムらしい魅力も確保されたモデルと言えるだろう。
気軽にフルメタリックG-SHOCKを楽しめる新たな選択肢
2025年1月に登場した新シリーズ、「FINE METALLIC SERIES」より、「2100」のデザインを踏襲したゴールドカラーモデル「GM-2100YMG-9AJF」を着用レビューした。
これまで、“フルメタル”G-SHOCKやMR-Gといったコレクションの特権であった「金属調G-SHOCK」の外観を、新開発のバンドで再現した本作。インプレッションを通して感じたのは、決して本作はそれらの廉価モデルではないということだ。着用感や軽やかさを意識しつつ、機能性を抑えることで最大限のコストパフォーマンスを追求した本作は、G-SHOCKのファッショナブルな魅力を広げる、新たな選択肢と言えるだろう。
G-SHOCKはすでに途方もない種類が登場しているわけだが、今回のメタリックな樹脂バンドモデルのような、ありそうでなかったデザイン、仕様のモデルが例年のようにリリースされ続けている。アイデアの尽きない開発陣の発想力に脱帽するだけでなく、G-SHOCKのデザインの受け皿の広さにも驚かされるばかりである。