グランドセイコーの「62GS」モデルに新作が登場した。ケースに18Kピンクゴールドを採用した暖かな印象を与える腕時計だ。このモデルのテーマは、桜が咲いてもまだ寒く、雪が桜に積もった「桜隠し」である。これからの桜の季節にぴったりなグランドセイコーだ。
18Kピンクゴールドを採用した温かな「62GS」モデル
ヘリテージコレクションの新作Ref.SBGH368は、愛好家から高い評価を受けている「62GS」直系のモデルである。62GSは1967年、グランドセイコー初の自動巻きムーブメントを搭載した腕時計だ。1960年にグランドセイコーが誕生して以来、セイコーは最高の製品をいかにして顧客に届けるかということに苦心し続けている。自動巻きムーブメントを搭載するということも、その苦心のうちのひとつだったのだ。

自動巻き(Cal.9S85)。37石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約55時間。18Kピンクゴールドケース(直径38mm、厚さ12.9mm)。10気圧防水。440万円(税込み)。
近年グランドセイコーは62GSを再解釈したモデルを多数発表している。Ref.SBGH341や、チタン製のRef.SBGH343が挙げられるだろう。なお、ケースサイズはどちらも38mmだ。新作であるRef.SBGH368は、限定品以外では初となるピンクゴールドをケースに採用した62GSなのである。なお、ケースサイズは38mm。このサイズは歴史的な62GSモデルのサイズに近い小径モデルだ。
「62GS」らしいディテール
次はこのモデルのディテールに迫ろう。まずは幅広でフラットなサテン仕上げのドーフィン型の時分針。加えて3時位置に配された大きなフレームの付いた日付表示。そしてファセットが効いたアプライドアワーマーカーだ。12時位置のものはダブルインデックスとなっている。

すべてのディテールはオリジナルの62GSに見られたものであり、ケースのわずかに丸みを帯びた外縁の形状も同様だ。しかしながらリュウズは4時位置ではなく、3時位置に配されたものだ。
グランドセイコーのトレードマークとも言える、歪みのないザラツ仕上げをRef.SBGH368にも採用。ただし、ケースは18Kピンクゴールドであり、ステンレススティールやチタンとは異なる。そのため、今作については新たな技術開発が必要となった。
桜隠しをテーマにした文字盤
デザイン面で最も注目したいのは文字盤だ。デザイナー、技術者、そして職人が作り上げたグランドセイコーの文字盤表現には毎回驚かされる。近年、文字盤は雪や白樺をテーマにしたものが続いていた。

しかしながらRef.SBGH368は、東北地方の遅い春に見られる、雪が桜を覆い隠す「桜隠し」をテーマとしている。ピンクゴールドのケースと相まってか、朝日を浴びた「桜隠し」をイメージした腕時計だ。グランドセイコーを手掛ける匠は、この情緒あふれる風景を、いかに上質な質感のコッパーピンクカラーの文字盤に再現するかを、よく理解している。
Cal.9S85
62GSの歴史的存在感を継承し、Ref.SBGH368は自動巻きムーブメント、自社製Cal.9S85を搭載している。ハイビートのムーブメントであるため、振動数は毎時3万6000振動だ。1960年代にグランドセイコーが自らに課した基準に準拠し、精度は日差-3秒から+5秒である。

主ゼンマイに採用されているのは自社開発スプロン合金をベースに新たに開発したものだ。このおかげで約55時間のパワーリザーブを保持する。ヒゲゼンマイには5年をかけて開発された新素材は採用されており、以前の素材に比べて耐衝撃性は約2倍、耐磁性は約3倍に向上した。シースルーバック仕様のため、ムーブメントが稼働する様子を鑑賞可能だ。ケースの厚さは12.9mmで、防水性は10気圧。ボックス型の無反射防止加工を施したサファイアクリスタル製風防が、文字盤上を覆っている。
本作は2025年4月の発売を予定しており、価格は予価440万円(税込み)だ。