お笑いタレントとして26年を超えるキャリアを積む椿鬼奴。東京NSC4期生で、女優としても「家政夫のミタゾノ」「グランメゾン東京」「#コールドゲーム」「ミス・ターゲット」といった人気ドラマに出演している。そんな“奴姐さん”の腕元に光るのは、極めてシンプルなチープカシオだ。その自然体な時計選びには、渋谷区・代官山元住人で無類のパチンコ好きという、彼女の多面的な魅力と変遷がにじみ出る。高級ブランドを知る審美眼を持ちながらも、選んだ3300円の腕時計には、いつの時代も人々を魅了する大人のエスプリが宿っている。
Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年3月9日掲載記事]
親しみやすさが魅力の人気者。芸人仲間からファンまで広がる“奴”の輪
誰からも愛されるお姉さん的存在である椿鬼奴。自身のインスタグラムでは、くったくのない笑顔とともに芸人仲間とのオフショットがズラリと並ぶ。お笑いトリオ、グランジの佐藤大と結婚した2015年以降は、夫婦そろっての投稿も多く、結婚10周年を経て変わらず仲の良い様子が微笑ましい。
元々は渋谷区・代官山にて裕福な生活を送っていた椿鬼奴だが、バブル崩壊がきっかけでライフスタイルが一変。株で大損した父親は、借金返済のために自宅マンションを売却し、その後、両親は離婚したという。
椿鬼奴が20歳の時に母親、弟と共に家を出て、3人で横浜市日吉に引っ越し。アルバイトをしながら学生生活を続け、インターネットカフェ店員を経て、ペットフード輸入販売会社の社長令嬢である友人の誘いで正規雇用職を獲得した経歴を持つ。
ものまねと漫談を始めたきっかけは、まさかの「お稽古ごと感覚」
OLとして働いていた時期には「OL生活に彩りを」と考え、フィットネスクラブや英会話スクールに通っていたが、それらに飽きた頃に前述の友人が資格スクールの月刊情報誌『ケイコとマナブ』(リクルート刊)に載っていた吉本興業の芸人養成所を偶然見つけ、勧められたことがきっかけで、本格的に芸人を志すこととなった。
休日はほとんどパチンコ店にいるというほどのパチンコ好きとしても知られており、現在出演しているレギュラー番組の中には「スロパチTV」(テレビ神奈川、テレビ埼玉、青森朝日放送)がある。
周囲からは年上、年下関わらず「奴さん」「奴姐さん」と呼ばれ親しまれ、先輩であるダウンタウンの松本人志からもそう呼ばれていることが知られている。
デジタル数字に親しみ!? 遊び心をチープカシオで表現
そんな椿鬼奴のインスタグラムの投稿に、腕時計を着用する姿を発見した。
いわゆるチープカシオのスタンダードなモデルで、コーディネートを選ばないシンプルかつクラシカルなデザインが特徴だ。自身で簡単にバンドの長さ調整ができるので、カップルで共有することもできそうである(椿鬼奴夫婦の場合は夫の体格が大きく、共有ではなく自分専用の腕時計として使用しているかもしれないが)。昭和を感じさせるベゼルデザインが今となっては新鮮で、大人の遊び心を漂わせる。
チープカシオが著名なスタイリストやモデルといったファッション業界人からも評価が高い理由には、必要最小限の機能に絞った実用性の高さと、デザインの潔さにあるのではないだろうか。豊富なラインナップがそろい、素材違いや色違いを楽しめる気軽さもある。
高級時計を知る目も持つ椿鬼奴。日常に選んだのはカジュアル&実用性
X(旧Twitter)の投稿では仕事内容によって衣装とするブランドも使い分けていることが確認でき、椿鬼奴は身に着けるものに相当気を配っていることがうかがえる。そんな彼女の目にも、チープカシオは魅力的に映ったのだろう。

クォーツ。樹脂ケース(縦30.3mm、横24.6mm、厚さ7.3mm)。日常生活用防水。3300円(税込み)。
過去に放送されたテレビ番組「マツコ&有吉 かりそめ天国」の中では、夫の佐藤大と共に銀座の高級時計店で試着をして回る企画を実現。ジャガー・ルクルト、ヴァン・クリーフ&アーペル、セイコー、といったブランドのトゥールビヨン、レトログラードなどの複雑機構が搭載されたモデルを見学している。番組収録上とはいえ、そうした体験をした上で、チープカシオを敢えて選んでいることが興味深い。
椿鬼奴が着用しているモデル、Ref.LA670WA-1A2JFは、ストップウォッチ、タイマー、アラーム、カレンダー機能がついていて、重さはわずか26g、バンドはフリー式中留のメタルバンドである。そしてケースサイズは縦30.3mm×横24.6mm。この控え目なサイズ感が、ヴィンテージテイストを加速させる。
他にも「アップル ウォッチ ウルトラ」を所有していることがインスタグラムでも確認できることから、椿鬼奴はデジタル好きなのかもしれない。前述の通り、大のパチンコ好きなので、アナログダイアルよりもデジタル数字を直観的に好むと推測する。
飾らず、自然体な椿鬼奴のスタイルが、時計選びにもにじみ出ているようだ。