いよいよ毎年恒例の“スイス 春の時計祭り”である「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(W&WG) 2025」まで1カ月を切った。出展ブランドの日本法人や時計店、そして同業の取材メディアなど時計業界関係者の皆さんは、さぞ慌ただしい日々をお送りかと思う。今回はそのW&WG2025以外に、同時期にジュネーブで開催される注目すべきほかの時計展示会とその概要をご紹介しよう。
Photographs & Text by Yasuhito Shibuya
[2025年3月8日掲載記事]
W&WG2025と同時開催の新作展示イベントも確定!
世界最大の時計宝飾フェアだった「バーゼルワールド」が、新型コロナウイルス感染症の流行によるいわゆる“コロナ禍”の影響に加え、出展ブランドの信頼を失って“消滅”したことで、2022年から世界最大の規模と内容を誇る時計フェアになった「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ(WATCHES AND WONDERS GENEVA:略称W&WG)」。2025年は「60ブランドの出展」で「4月1日(火)から7日(月)まで」、いつも通りジュネーブ空港近くの展示会場「パレクスポ」で、前半4日間は関係者向けのクローズドイベント、土日月の後半3日間は有料で一般入場も可能と、計7日間で開催されるのは、前回のこのコラムでご紹介した通りだ。
この時期に開催されるW&WG以外の主要な新作時計展示会は、以下の3つである。
(1)中堅ブランドから時計師ブランド、関連機器まで、多様性が魅力の「TIME TO WATCHES(タイム・トゥ・ウォッチズ)」
(2)独立時計師協会AHCI(通称アカデミー)の新作展示会「MASTERS OF HOROLOGY(マスターズ オブ オロロジー)」
(3)レマン湖畔の5つ星ホテル「ボーリバージュ・ジュネーブ」で開催される個別展示会
他にも小規模のものはあると思うが、主なものはこの3つと考えて間違いない。
W&WG会場から歩いてすぐになった「TIME TO WATCHES」
●開催場所: Villa Sarasin(ヴィラ サラシン)、W&WG2025会場のPalexpo(パレクスポ)から徒歩1分
●開催日時: 2025年4月1日(火)〜6日(日) 8:30〜20:00
※プレス登録はサイトのトップページの「Visit」バナーから「Accreditation(Pro)」にて。
https://www.timetowatches.com
かつてのバーゼル・フェアのような大規模ではないものの、その多様性を引き継いでいると言えるのが、2022年から2024年まで、ジュネーブのアートスクール「HEAD」を会場に開催されてきた「TIME TO WATCHES」だ。バーゼル・フェアをご存じの方には「昔のバーゼル・フェア5号館の雰囲気」と言えば分かっていただけるだろうか。
ただ昨年までは会場へのアクセスに問題があった、というか、会場にたどり着くのがジュネーブ初心者にはちょっとハードルが高かった。HEADはジュネーブ市内にあるものの、ジュネーブ市内の有名ホテルとW&WG会場間を運行しているシャトルバスのルートからは離れている。タクシーを使うか、Google マップで検索し、その指示に従って公共バスで会場近くのバス停にまで行く必要があった。
でも今年2025年は、会場へのアクセスが劇的に改善された。何とW&WG会場のパレクスポの敷地内にある、シャトルバスの乗降場所から見える階段を登るとアクセスできる「Villa Sarasin(ヴィラ サラシン)」という4階建ての建物に会場が変更されたからだ。
2025年3月8日の時点で、出展ブランドはジンやレゼルボワール、アントワーヌ・プレジウソなどを筆頭に個人時計師ブランド、ファッション時計ブランドや周辺機器ブランドまで、約77ブランドの出展が告知されている。W&WGに近い立地になったこともあり、出展ブランドは今後も増えるだろう。2023年には「このフェアはダメかな」と思ったが、おそらくWWGのサブ的なフェアとして今後も継続していく可能性が高いと思う。
独立時計クリエーター集団“アカデミー”の「MASTERS OF HOROLOGY」
●開催場所: L’ice Bergues Exhibition Centre, Place des Bergues 3, Geneva
●開催日時: 2025年3月31日(月)〜4月5日(土) 14:00〜23:00
※訪問予約はトップページの告知画像をクリックすると現れる「Schedule your visit」ボタンから。
https://www.ahci.ch
時計愛好家ならご存じであろう独立時計師協会AHCI(Académie Horlogère des Créateurs Indépendants/通称アカデミー)は、今年2025年に記念すべき創立40周年を迎える。したがって、オフィシャルサイトのトップページには「40th Anniversary」と記されている。
その展示会である「MASTERS OF HOROLOGY」の開催場所は昨年と同じ、ジュネーブの新市街と旧市街を結ぶモンブラン橋の新市街側すぐ近くの5つ星ホテル「フォーシーズンズ・ホテル・デ・ベルグ」の裏、モンブラン通りから1本裏側に入った建物「L’ice Bergues Exhibition Centre」である。
具体的に誰が出展するのかは記されていないが「今年のエキシビションでは、26名のAHCI会員、候補者、応募者の素晴らしい作品が展示されます」と告知されている。昨年は日本人正会員の浅岡肇氏が出展していた。もしかしたら、スイスのレジェンド時計師の皆さんに加えて、日本人のレジェンドにもお目にかかれるかもしれない。
(右)独立時計師のレジェンド、フィリップ・デュフォー氏。運が良ければ、こんな巨匠に直接お目にかかれるかも(写真は2024年)。
ホテル ボー リバージュ ジュネーブで開催される個別の新作展示会
【展示会情報】
●開催場所: Hotel Beau Rivage Geneva(ホテル ボー リバージュ ジュネーブ), Quai du Mont-Blanc 13, Geneva
●開催日時:3月30日(日)〜4月5日(土)
https://www.beau-rivage.com/en/agenda.html
ジュネーブ観光で有名なフェリー乗り場の前の5つ星ホテル「ホテル ボー リバージュ ジュネーブ」で開催される、さまざまな時計ブランドの新作展示会。地上階の「Salon Sarah Bernhardt」(伝説的女優サラ・ベルナールサロン)などホテル内のイベントスペースや、客室を借り切って行なわれる。
現時点でホテルのイベント案内にはまだ掲載はないが、話題のマイクロメゾンを中心に、ハイエンドな新進時計ブランドの作り手たちに直に会える貴重な機会である。開催期日はブランドごとに異なり、上記期間中の数日に限られている展示会もある。とにかく行ってみるしかないという、時計愛好家にとっては「ビックリ玉手箱」のような展示会だ。
もちろん、これ以外にもW&WGの期間中やその前後で、ジュネーブ市内の高級ホテルやブティックなどで独自の展示会を開催しているブランドもある。もしこの時期、ジュネーブに立ち寄られる方はぜひ散歩がてら、こうした展示会を訪ねてみることをオススメしたい。