G-SHOCKの2025年新作「FINE METALLIC SERIES」を実機レビュー! 新開発のバンドを搭載した“スピード”モデル

2025.03.29

「FINE METALLIC SERIES」のRef.GM-5600YM-8JFを実機レビューする。本作は、ステンレススティールケースとタフシリコンバンドを採用した2025年新作だ。タフシリコンバンドは耐摩耗性に優れる新開発のバンドであり、本作では蒸着処理によってメタリックな輝きを与えられている。

GM-5600YM-8JF

野島翼:写真・文
Photographs & Text by Tsubasa Nojima
[2025年3月29日公開記事]


まるでフルメタルのようなG-SHOCKの新作、「FINE METALLIC SERIES」が登場!

 今回レビューを行うのは、カシオのG-SHOCKから「FINE METALLIC SERIES」として打ち出された、2025年新作モデルRef.GM-5600YM-8JFだ。1983年、今までに類を見ない耐衝撃ウォッチとして誕生したG-SHOCK。落としても壊れない、複数の樹脂パーツと中空構造による耐衝撃性は、消防士や工事現場作業者、自衛官など、危険と隣り合わせの職業に就く人々に、いつでも正確な時刻を知る自由を与えた。また、着色と成形が容易な樹脂パーツは、さまざまなカラーリングやデザインのモデルを生み出すことにもつながり、ファッションアイテムとして若者を中心に絶大な支持を得るに至った。

 その後も、当初は不可能と思われていたフルメタルの外装を持つ「MR-G」や、女性向けの「BABY-G」などの派生コレクションを生み出し、技術面では光発電のタフソーラー、電波受信機能、スマートフォンリンク機能など、利便性を向上させるための機能を開発、搭載してきた。G-SHOCKの歴史は、常に革新性とともにあったのだ。そしてその精神は、新作であるFINE METALLIC SERIESにも受け継がれている。ベゼルからバンドまで、全体を金属質な光沢に包まれたFINE METALLIC SERIESには、蒸着処理を施した斬新なシリコンバンドが装着されている。

 FINE METALLIC SERIESは現在、アクション映画『スピード』で主演のキアヌ・リーブスが着用したことで知られる通称“スピード”の「5600」系と、8角形のベゼルになぞらえて“カシオーク”と呼ばれる「2100」系のモデルがラインナップされるが、本記事でレビューを行うのは5600系のモデルである。

カシオ「G-SHOCK」Ref.GM-5600YM-8JF
全体に金属光沢をまとった、「FINE METALLIC SERIES」の新作。新開発のタフシリコンバンドを採用している。クォーツ。樹脂×SSケース(縦49.6×横43.2mm、厚さ12.9mm)。20気圧防水。3万7400円(税込み)。


ステンレススティール製のスクエア型ケース

 5600系は、初代「5000」系を踏襲したスクエア型のケースを採用している。初代「DW-5000C」については、文字もロゴもない商品形状だけで、2023年に特許庁による立体商標に登録されたことが記憶に新しい。“CASIO”や“G-SHOCK”のロゴがなくとも、形状だけでそれが何であるか分かるということが、公に認められたのである。

 本作の特徴は、ケースにステンレススティールを採用している点にある。鍛造、切削、研磨を通じ、凹凸の多い複雑な形状を作り上げ、樹脂では味わえない高級感を与えている。その内側に収められているのは、ムーブメントを保護するガラス繊維強化樹脂製のケースだ。シャープなエッジや磨き分けによって生み出される立体感は、本作の大きな魅力と言えるだろう。特にフラットなトップベゼルには縦方向のヘアライン仕上げが施され、エッジもキリッと立っている。光が当たった際に浮かび上がるベゼルが、精悍な印象を与えてくれる。トップベゼルには“PROTECTION”と“G-SHOCK”の文字が刻まれているが、黒の墨入れなどはされていないため、あまり目立たずクールさを際立たせている。

GM-5600YM-8JF

ステンレススティールケースと、シルバーの蒸着処理を施したバンドが、見事な一体感を見せる。見た目に反して軽量であるのも特徴だ。

 ケースサイドには4つのプッシュボタンが備わっており、これらを用いて各種操作を行うことができる。ボタンの背が低いため、激しく動いても誤作動を起こすようなことはないだろう。ケースサイドのバンドとの接合部付近には、ステンレススティールのアウターと内部の樹脂製ケースを固定するためのネジが備わっている。これ自体は他の5600系にも見られるものだが、その多くがプラスネジであることに対し、本作では六角穴のネジを採用している。好みによるだろうが、筆者個人の感想としては六角穴の方がスタイリッシュな印象を受ける。ケースバックはステンレススティール製。4本のプラスネジによってケースに固定されている。


メタリックな蒸着処理を施した樹脂バンド

 FINE METALLIC SERIESの目玉が、金属光沢を湛えたシリコンバンドだ。正式には“タフシリコーンバンド”と言い、裏面をシリコン樹脂、表面をウレタン樹脂の2層構造とすることで、装着感と耐摩耗性を向上させたものである。本作ではこの構造を利用し、シルバーの蒸着処理を施すことで金属光沢を生み出しているのだ。

 サイドから見ると、ブラックのシリコンとの境目を確認することができる。指で触ってみると、シリコン側はしっとりとしたなじみのある感触であり、ウレタン側はつるりとした感触である。樹脂製のバンドは、長年使用することでひび割れや破断が発生することが珍しくない。実際の耐久性は長期間使用しなければ分からないが、感触としてタフシリコーンバンドは従来の樹脂製バンドに比べて強靭な印象だ。

 バンドの蒸着処理は、ステンレススティール製ケースの色味とほぼ同じように見える。結果、ケースとバンドとの強い一体感が生み出され、まるでフルメタル化のように錯覚するのだ。金属のような高級感と樹脂製バンドのしなやかさと軽やかさを兼ね備えたタフシリコーンバンドは、G-SHOCKの新たな武器となることだろう。

GM-5600YM-8JF

タフシリコーンバンドは、裏面をシリコン樹脂、表面をウレタン樹脂の2層構造としている。ウレタン側はツルツルした質感だ。

 バックルと遊環は金属製。恐らくステンレススティールだろう。G-SHOCKのバックルは、曲線を取り入れたデザインのものが多いが、本作に取り付けられているのは直線基調のデザインのものだ。遊環は、“G-SHOCK”のロゴが配された表面のみヘアライン仕上げが施されている。着用時に机などと擦れることが多い箇所であるだけに、傷が目立ちにくい仕上げは好ましい。

GM-5600YM-8JF

バックルだけではなく、遊環も金属製。細かな部分だが、全体の統一感と高級感を高めることに一役買っている。


クールな反転液晶を装備

 ダイアル部には、スクエア型の液晶が配されている。黒地に白文字が浮かび上がる、いわゆる反転液晶である。反転液晶は黒が基調となる分、通常の液晶に比べてスタイリッシュに見えるが、照明の具合や角度によっては視認しにくくなるというデメリットがある。本作も例に漏れず、明るい場所では問題なく使えるものの、少し暗い場所や斜めから見た場合には読み取りに苦労する。購入する前には、しっかりと実物を確認することをお勧めしたい。視認性とファッション性のどちらを重視するか、ユーザーの好みを踏まえて選択すれば間違いないだろう。

 とはいえ、暗所での視認性が絶望的かと言えば、そうではない。4時位置のボタンを押下することで、液晶の9時側からLEDライトを照射することができるのだ。時刻を確認したいときにライトを起動すれば、難なく使用することができる。

 G-SHOCKならではの多機能性も魅力だ。時刻表示の状態では、月、曜日、日付も表示され、これらには閏年や月の大小を自動的に判別するフルオートカレンダー機能が搭載されている。時刻表示の状態で8時位置のボタンを押下するごとに、アラーム、タイマー、ストップウォッチと機能が切り替わる。優れた耐衝撃性からスポーツシーンでも着用しやすいG-SHOCK。これらの機能を活用すれば、トレーニングもはかどることだろう。


しなやかな装着感と金属質な高級感を両立

GM-5600YM-8JF

コンパクトな5600系だけあり、手首への収まりも良い。反転液晶とヘアライン仕上げのトップベゼルの組み合わせが、クールな印象だ。

 大ぶりなケースを持つモデルの多いG-SHOCKだが、その中において5600系はややコンパクトな部類に入る。厚さも12.9mmと、一般的なアナログのスポーツウォッチと比べて、大きく変わらない。実際に着用してみてもその印象は変わらず、しなやかなタフシリコーンバンドと相まって、長時間の着用でもストレスを感じさせない。ステンレススティールケースとタフシリコーンバンドとの見た目の統一感は見事であり、少し目を遠ざければフルメタルモデルのように見える。あえて気になる点を挙げるとすれば、ケースとバンドの間に隙間ができてしまうことと、指紋などの汚れが目立つことくらいだろうか。

 視認性に関しては先述した通り。見やすさを重視するならば、通常の液晶を搭載したモデルを選択するのが良いだろう。その場合、同じくFINE METALLIC SERIESに属する、ゴールドカラーのRef.GM-5600YMG-9JFなどが候補になる。反対に、ルックスを重視するのであれば、本作は最適な選択肢となる。

GM-5600YM-8JF

見た目こそ金属だが、装着感は既存のシリコンバンドとほぼ同じ。そのしなやかさは、装着感の向上にも寄与する。


G-SHOCKが切り開く、新たな可能性

 耐衝撃ウォッチの絶対王者と言っても過言ではないG-SHOCKは、1983年の初代発表当時より既に高い完成度を誇っていた。しかしながら現在においても世界中のファンを熱狂させ続け、新たな層を虜にしているのはなぜだろうか。それは、G-SHOCK自体が常に進化を続け、ファンの期待を超えるサプライズを提供し続けてきたからではないだろうか。

 耐衝撃性を高めるための新構造の開発のみならず、利便性を高める新機能を追加し、多様なデザインを生み出し、新素材を取り入れ、著名なブランドやアーティストとのコラボレーションを果たすことで、腕時計の楽しみ方に無限の可能性があることを証明して見せた。FINE METALLIC SERIESでは、しなやかで耐摩耗性に優れながらも金属質な光沢を獲得したタフシリコーンバンドを投入することで、これまでに成しえなかった腕時計の表現を可能とした。G-SHOCKはこれからも歩みを進めていくことだろう。その行く末を楽しみにしていきたい。



Contact info:カシオ計算機お客様相談室 Tel.0120-088925


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