ムーンフェイズ再発見[ムーンフェイズの精度を追求するA.ランゲ&ゾーネ【月面博覧会】]

2017.06.23

[2014]

リヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー
“テラ・ルーナ”

時分秒針が独立したレギュレータータイプの時刻表示は、ドレスデンの数学物理サロンに収蔵されている1807年製のクロックから着想を得たもの。小窓で月と曜日、閏年を表示し、アウトサイズデイトをアクセントにする。手巻き(Cal.L096.1)。80石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約336時間。18KPG(直径45.5mm)。2351万円。

軌道ムーンフェイズは、月の満ち欠けだけでなく、地球と月、太陽の位置関係を表現した機構。テンワが太陽を表しており、ゆっくりと自転する地球ディスクの周囲を、月が満ち欠けをしながら回転するという仕組みになっている。宇宙の神秘を閉じ込めており、眺めているだけで時間が過ぎる。


 かつて人類は月や星、太陽の規則的な動きをつぶさに観測することで〝時間という概念〟を生み出した。つまり、月の満ち欠けを示すムーンフェイズ機構は〝時間の起源〟を内包している、時計界で最もロマンティックな機構と言えるのではないだろうか。

 ところが、この規則的な月の満ち欠け自体を大きな時間の流れだと考え、徹底的にムーンフェイズ機構の精度にこだわってきたのがA.ランゲ&ゾーネである。

 精度追求の際に問題になるのは、天体の動くサイクルと人為的に定めた時間との誤差。新月→満月→新月の周期は約29.5日なので、通常のムーンフェイズ機構は59歯のムーンディスク(29.5日×2周期)を使って表示する。しかし本当の月の満ち欠けの周期は29・.305891…日なので、1年で約9時間の誤差が生じ、約3年で1日分の修正が必要となるのだ。そこでA.ランゲ&ゾーネでは、ムーンディスクの歯を増やすことで精度を追求した。通常モデルであっても、誤差は約1122.6年で1日しか生じないほど優れた精度を誇るが、1999年に登場したエミール・ランゲ生誕150周年限定モデル「1815ムーンフェイズ」では、1058年に1日しか誤差が生じない超高精度ムーンフェイズ機構を搭載した。そしてこの技術は、2014年に登場した「リヒャルト・ランゲ・パーペチュアルカレンダー〝テラ・ルーナ〟」にて、「軌道ムーンフェイズ機構」へとさらなる進化を遂げている。

 A.ランゲ&ゾーネにとって、ムーンフェイズ機構は飾りではない。月の満ち欠けは〝時間の起源〟であり、敬意を払うべき対象だからこそ、圧倒的な高精度を目指して研鑽を積んでいるのだ。

[新月]

[上弦の月]

[満月]

[下弦の月]

〝テラ・ルーナ〟の軌道ムーンフェイズ
そもそも月が満ち欠けをしているように見えるのは、月の移動によって太陽光に照らされる位置が変わるからである。そんな雄大な宇宙の法則を再現するのが、1058年に1日の誤差という超高精度機構「軌道ムーンフェイズ」の目的だ。3枚のホワイトゴールド製ディスクを使用しており、ブルーの特殊コーティングによって美しい宇宙や地球の姿を表現。2116個もの星を使って北半球の夜空を描くことで、さらなるリアリティを追求している。