世界経済の逆風やいかに? 「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025」始まるってよ!

2025.03.31

2025年4月1日(火)〜7日(月)までの1週間、今年もスイス・ジュネーブで開催されるウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025。1年のうちで最も注目されるこの新作見本市を、今年も時計専門誌『クロノス日本版』では現地取材。一足早くスイス入りしている編集長の広田雅将が、開催直前に今年の傾向を分析する。

Photograph by Yu Mitamura
昨年開催されたウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの会場の、ロレックスブース。
広田雅将(クロノス日本版):文
Text by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
[2025年3月31日公開記事]


ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブが始まるってよ!

 2025年4月1日(火)〜7日(月)まで、スイス・ジュネーブでは時計の新作見本市「ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025」が開催される。例年通り、ジュネーブの見本市会場であるPalexpo(パレクスポ)を舞台とする本イベントは、時計業界関係者と時計愛好家の双方(一般公開日は4日〜7日と、例年よりも延びた)にとって、1年で最も注目される展示会となる。主催者の発表によれば、今年は過去最多となる約60メーカー(とブランド)が参加予定。ロレックスやパテック フィリップ、カルティエといった定番メーカーに加えて、なんと今年からはブルガリも参加することになった。

 もっとも展示会の拡大は、必ずしも時計業界の拡大基調を意味しない。むしろ今年見られるのは、昨年以上の保守的な傾向ではないだろうか。その一因となるのは、昨年末から加速した中国経済の減速である。新型コロナウイルス禍以降、時計市場の牽引を期待された中国だったが、不動産市場の低迷や若年層の高い失業率、そして消費マインドの冷え込みなどは、いわゆる高級品の需要停滞を招いた。昨年下半期に、中国の市場が半減したというニュースは、時計メーカーの動向に極めて大きな影を落としている。

ジュネーブ市を挙げてのイベントであるため、市内にはウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブの旗が掲げられる。

 アメリカ経済も楽観視できる状況にはない。中国の失速以降、代わって高級時計市場を牽引してきたアメリカだが、近年の政治経済を巡る不透明な状況は、消費者の心理に買い控え感を与えつつある。こうした主な市場の変化は、スイス時計産業全体にかなり慎重な姿勢を強いるだろう。

市場の変化がもたらす、新作時計への影響とは?

 その結果予想されるのは、2025年の新作時計は保守的な方向性に傾くということだ。まず考えられるのは、既存モデルのバリエーション違いである。過去に人気を博したモデルのカラー変更や素材違い、ブレスレットの仕様違いを加えた新作が目立つだろう。製造コストを抑えつつ、手堅く売れるには合理的な手法だが、消費者を飽きさせないような舵取りは非常に難しい。事実、各メーカーは、一時期あれほど一世を風靡したスウォッチ×オメガのコラボレーションが、たちまち失速したことを理解するに至った。

2024年に発表された、多彩な文字盤を持つ新作モデル。特にかつて表現が難しかった中間色や、光の干渉を生かした「構造色」を使ったものが目立った。

 一方でこういった状況にあっても、ケースの小型化というトレンドはいっそう広まりを見せるに違いない。かつて「クラシック」として敬遠されがちであった直径40mm以下のケースを持った時計は、近年、性別を問わず需要が増加している。ラグジュアリースポーツウォッチのブームが落ち着き、時計をファッションと捉える消費者層の拡大は、明らかにこの方向性にプラスとなった。また、この10年広がりを見せてきた文字盤の新しい表現は、今年も私たちの目を引くに違いない。


『クロノス日本版』編集長・広田雅将が注目するコト

 個人的に注目したいのは、ウォッチズ&ワンダーズの周辺で行われるサテライトイベントの充実だ。特に存在感を年々増してきた「タイム・トゥ・ウォッチズ」は、会場を新たにVilla Sarasin(ヴィラ・サラシン)に移転。パレクスポから徒歩1分という好立地は、参加者、来場者にとっての大きな刺激となるに違いない。ちなみにタイム・トゥ・ウォッチズに参加予定のブランドはなんと70以上。大手のメーカーが保守的に向かうと予想される中、このイベントに参加する小規模メーカーは相対的に自由な表現を試みるだろう。今年、私たち『クロノス日本版』編集部は、こういった周辺のイベントもより丁寧にリポートする予定である。

Photograph by Masayuki Hirota(Chronos-Japan)
スイス・ジュネーブ国際空港に到着した広田から送られてきた写真。ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブに例年出展しているヴァシュロン・コンスタンタンの目を引く広告だ。


世界経済の逆風が吹く中でも、欲しい時計を見つけよう! by ヒロタ

 2025年のジュネーブにおける展示会群は、景気減速という逆風の中にあって、各ブランドがいかにして自らの立ち位置を守り、あるいは変化に適応しようとしているか、といった戦略を垣間見る機会となるだろう。非常に舵取りの難しい期間に開催されるこのイベントは、加えて、各社の力量を見るものにもなるだろう。言い換えると、こういう時期だからこそ、面白いものが見られる可能性が高まる、ということだ。

 ちょっと真面目に書いてしまった。環境はどうであれ、今年も私たちは、自分たちが欲しくなるような時計を見つけていこうと思います!!! 欲しい時計が見つからない見本市は面白くないじゃないの! ということで、今年もよろしく、そして皆さんのフィードバックもお待ちしています!!!


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