ロレックスと時間をずらして発表が行われた、チューダーの2025年新作時計。もっともロレックスの兄弟分というキャラクターは、現在ではそう目立っていない。チューダーの独自性を発揮した、最新モデルの数々をまとめて紹介する。
Text by Chieko Tsuruoka (Chronos-Japan)
[2025年4月1日掲載記事]
チューダー2025年新作①「ペラゴス ウルトラ」
チューダーの「ペラゴス」に、新しいコレクションが追加された。1000mもの防水性能を有した、「ペラゴス ウルトラ」である。

自動巻き(Cal.MT5612-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。Tiケース(直径43mm、厚さ14.5mm)。1000m防水。83万9300円(税込み)。
水中探索に適したツールウォッチとして展開されてきたペラゴス。これまでの500m防水モデルや9時位置にリュウズを配した“レフティ”仕様のモデルなどは、このツール感を強調するのにふさわしい腕時計であった。
しかし今回発表されたのは、この500m防水をはるかに超える1000m防水モデルだ。飽和潜水に伴う過酷な環境に対応するために設計されており、ペラゴスらしい幅広の逆回転防止ベゼルとともに、いかにも堅牢性を感じさせる仕上がりとなっている。
高い防水性を象徴するかのように、ケース直径は43mmと大ぶりだ。とはいえ従来のペラゴスのケース直径は39mmまたは42mmで、従来品と比べて特別にボリューミーというわけではない。また厚さも14.5mmと、ダイバーズウォッチとしては標準的だ。チューダーウォッチのケースは全長が短いことと、軽量なチタンを使っていることから、装着感は決して悪くないだろう。ケースは新設計で、チタン合金と純チタンを組み合わされている。
さらに従来品よりも文字盤を拡大し、針はより太く、インデックスも大型化された。分針と12時位置のルミナスポイントにはグリーン、そのほかにはブルーの蓄光塗料があしらわれたことともに、どんな場所でも高い視認性を発揮することがうかがえる。

再設計されたというブレスレットもチタン製。なお、優れた装着感に寄与する一因として、チタン製ブレスレットには“T-fit”フォールディングクラスプが搭載されていることも挙げられる。このクラスプは工具なしに微調整することができる、チューダー独自の機構である。クラスプには蓄光塗料マーカー付きのビジュアルインジケーターを搭載しており、暗所でもブレスレットの設定状況が一目で確認できるようになっているのも便利だ。
ケースとの接続にはチタン製エンドリンクが採用されている。さらにブラックのラバーストラップが付属しており、このストラップは110mmまで延長可能なエクステンションパーツが備えられている。
さらに特筆すべきは、ペラゴスにもマスター クロノメーター認定ムーブメントCal.MT5612-Uが搭載されたことだ。「ブラックベイ」から採用が始まったこの規格、ペラゴスの1000m防水というハイスペックにふさわしい仕様と言える。1万5000ガウスの高耐磁性に代表される高性能ムーブメントで、パワーリザーブも約65時間と実用的だ。
販売価格は税込み83万9300円である。
チューダー2025年新作②「ブラックベイ 68」
同じくマスター クロノメーター認定ムーブメントを搭載させ、さらにコレクション最大となる43mm径ケースが採用された新作モデルが2種、登場した。
自動巻き(Cal.MT5601-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径43mm、厚さ13.6mm)。200m防水。各66万3300円(税込み)。
「ブラックベイ 68」と名付けられたふたつの新作モデル。時計業界では小径ケースがトレンドとなっているものの、「あらゆる手首にフィットする、多彩なサイズ展開のニーズに応える」ために打ち出したという。ちなみにブラックベイのコレクション名には、しばしば数字が付けられる。この数字は自社のアーカイブに基づいたものとなっており、本作は1968年、チューダーのアイコニックな“スノーフレーク針(日本ではイカ針とも)”が誕生した年であり、さらに翌年には正式にカタログ入りした。ブランドにとってこの記念すべき年を冠した本作は、さらにブランドのもうひとつのシグネチャーであるチューダー ブルーを取り入れていることも、大きな特徴だ。もちろんシルバー文字盤も優れた視認性を審美性を両立しており、好みによって選びたい。
このように本作はチューダーの長い歴史を大切にする一方で、新しさも取り入れられている。例えばブレスレットはリベットスタイルではなく、新たに採用された、スッキリとした見た目を有したものが採用されているのだ。
販売価格は各66万3300円(税込み)。マスター クロノメーター認定ムーブメントCal.MT5601-Uによる高耐磁性、そしてパワーリザーブ約70時間の実用性を備えているため、デイリーウォッチにも最適な新作モデルと言える。
チューダー2025年新作③「ブラックベイ 58」
直径39mmというサイズ感が人気を博す「ブラックベイ 58」に、バーガンディーカラーをまとった新作モデルが3種、登場している。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。64万9000円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。63万3600円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。60万2800円(税込み)。
これまでもブラックベイにはレッドカラーをベゼルにあしらったモデルが長くリリースされてきたが、本作ほど深みのあるバーガンディーは、近年のモデルではなかった。さらにベゼルのみならず文字盤にもこのカラーがあしらわれたことで、強いキャラクターを確立している。
新しいカラーリングとはいえ、ブラックベイ 58の、アーカイブから引き継いだ意匠は健在。また、ブラックベイではなかった色合いではあるものの、1990年代の「サブマリーナー」Ref.79190では使われていたという。ちなみにブラックベイはベゼルにセラミックスではなくアルミ素材を用いているため、レトロな雰囲気を醸し出すことに一役買っている。

搭載するムーブメントは、マスター クロノメーター認定のCal.MT5400-Uだ。
5列リンクブレスレット、3列リンクブレスレット、ブラックラバーストラップの3種類が展開され、すべて“T-fit”クイックアジャストクラスプが備わっている。
チューダー2025年新作④「ブラックベイ プロ」
ロレックスの「オイスター パーペチュアル エクスプローラーII」の歴史をほうふつとさせる意匠が特徴的な「ブラックベイ プロ」より、新たにオパライン文字盤のモデルが3種追加された。

自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。200m防水。61万8200円(税込み)。
自動巻き(Cal.MT5652)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm)。200m防水。各57万2000円(税込み)。
ブラックベイ プロが登場したのは2022年。初出時は精悍な、そして初代エクスプローラーIIの文字盤であったブラックカラーのみが展開されたが、今回新色が追加された形だ。24時間針はイエローに彩られており、レトロな印象の強かったブラックベイ プロに、ポップでモダンなアクセントが加わっている。アワーマーカーはセラミックス製で、ブラックの縁取りによって、強い光源下でもインデックスがオパライン文字盤に埋没せず、見やすいだろう。
ベゼルは変わらず、ステンレススティール製で、直接24時間スケールが印字されている。サテン仕上げのこのメタルベゼルとドーム型サファイアクリスタル製風防が、ヴィンテージなツールウォッチといった様相だ。
意匠はレトロだが、性能は現代的。本作に搭載されるムーブメントCal.MT5652はCOSCクロノメーター認定の自動巻き式で、パワーリザーブ約70時間を備えている。また時針は逆戻しも可能なジャンピングアワー式。さらに3時位置にデイト表示が設けられており、ローカルタイム用の時針に連動しているが、時刻調整中にこの針を深夜0時に逆行させると、デイトが前日にジャンプする仕組みとなっているのだ。
ラインナップされたのはブレスレットモデル、イエローのライン入りファブリックストラップモデル、レザーとラバーライニングによるハイブリッドストラップの3種類。ブレスレットモデルには、チューダー独自の“T-fit” アジャスティングシステムが搭載されている。
チューダー2025年新作⑤「ブラックベイ クロノ」
2025年はチューダーにとって、初代クロノグラフを生み出してから50周年の節目となる。この節目の年に発表されたのが、新しい「ブラックベイ クロノ」である。
自動巻き(Cal.MT5813)。41石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。81万6200円(税込み)。
自動巻き(Cal.MT5813)。41石。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径41mm)。200m防水。83万1600円(税込み)。
ブラックベイ クロノは2017年、チューダーのクロノグラフモデルとして誕生したコレクションである。こう聞くと新しいと感じるかもしれないが、チューダーは1970年にブランド初のクロノグラフウォッチを製造している。当時はETA7750を搭載していたが、現在は自社製ムーブメントCal.MT5813を採用。パワーリザーブ約70時間という、現代的な実用性を獲得した。
さらに今年、5列リンクのブレスレットを備えることでドレッシーな印象も獲得したモデルが誕生。なお3列リンクのモデルも刷新されており、“T-fit”クイックアジャストクラスプが搭載された。
価格は3列リンクのモデルが81万6200円、5列リンクのモデルが83万1600円となっている(税込み)。