時計史に燦然と輝く名門ブランド、ブレゲ。精緻な機構と優雅なデザインを両立させたその腕時計は、知性と品格を求める大人の男性にふさわしい逸品だ。本記事では、40代、50代を迎えた大人の男性におすすめしたいブレゲの腕時計を5本厳選。シンプルで洗練されたドレスウォッチから、スポーティーなクロノグラフまで、用途に応じたモデルを紹介する。

ブレゲとは?
時計愛好家なら誰もが知る名門ブランド、ブレゲ。1775年の創業以来、数々の革新技術を生み出し、時計業界を牽引してきた。その優れたクラフツマンシップと洗練されたデザインは王侯貴族から現代の実業家に至るまで、多くの人々を魅了し続けている。ブレゲの時計は単なる実用品ではなく、時代を超えて受け継がれる「芸術作品」とも言えるだろう。
ブレゲの歴史と伝統 ─ 時計業界の革新者
ブレゲの歴史は時計製造の進化の歴史といっても過言ではない。創業者のアブラアン-ルイ・ブレゲは、1775年にフランス・パリのシテ島で時計工房を開いた。当時の時計はまだ不正確で装飾性が強かったが、彼は精度を追求し、機能性と洗練された佇まいを両立させた時計を生み出した。
特筆すべきは、1801年に特許を取得したトゥールビヨンだ。これは重力による誤差を補正して精度を向上させる機構であり、現在の高級時計にも多く採用されている。またシンプルなリピーター機構や衝撃吸収装置であるパラシュート機構を発明し、耐久性と機能性を飛躍的に向上させた。
ブレゲの顧客にはフランス皇帝ナポレオン・ボナパルトや、王妃マリー・アントワネット、作家アレクサンドル・プーシキンなど、歴史に名を残す著名人が名を連ねる。特にマリー・アントワネットのために製作された「ブレゲ No.160(マリー・アントワネット)」は、史上最も複雑な時計のひとつとして知られている。このようにブレゲの時計は単なる時間を知る道具ではなく、知性や地位の象徴として受け継がれてきたのだ。
現在ブレゲはスウォッチ グループの傘下に入り、その伝統と職人技を守り続けている。革新と伝統を融合させた時計作りは、今なお多くの時計愛好家を魅了し続けている。

ブレゲの特徴 ─ クラフツマンシップと技術革新
ブレゲの時計には、他のブランドにはない独自のデザインと技術が詰め込まれている。最大の特徴は、創業者が確立したブレゲスタイルとも呼べる要素が現代のモデルにも色濃く受け継がれている点だ。以降ブレゲの代表的な特徴を紹介する。
ブレゲ針
ブレゲ針とは、先端に円形の装飾が施された繊細なデザインの針を指す。このデザインは視認性の向上だけでなく、時計にエレガントな印象を与える役割も果たしている。
ギヨシェ装飾
文字盤に施されるギヨシェ(手彫り装飾)は、ブレゲの時計の大きな特徴のひとつ。熟練職人が手作業で彫刻し、光の反射による美しい表情を生み出す。この技術は単なる装飾ではなく、光の反射を抑えて視認性を向上させるという機能的な役割も持つ。
コインエッジ装飾
ケースの側面に施されたコインエッジ(細かい刻み模様)もブレゲを象徴する意匠だ。これによって手にしたときの質感が向上するのみならず、クラシカルな印象を強調する。
シリコン製ヒゲゼンマイ
近年ブレゲは伝統的な職人技に加えて最新技術も積極的に取り入れている。その一例がシリコン製ヒゲゼンマイの採用だ。従来の金属製ゼンマイと比べて磁気の影響を受けにくく、経年劣化が少ない。これによって時計の精度と耐久性が大幅に向上した。

先端にオープンワークを施したブレゲ針やダイアルのギヨシェ彫り、ケース側面のコインエッジなど、洗練されたクラシカルなデザインエレメントを随所にあしらっているのがブレゲのタイムピースの特徴。写真は2022年にリリースされた「クラシック 7337」。自動巻き(Cal.502.3 QSE1)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径39mm、厚さ9.95mm)3気圧防水。763万4000円(税込み)。
このように、ブレゲは伝統と最新技術を融合させながら時計作りを進化させてきた。単なる高級時計ではなく長く愛用できる実用性も兼ね備えている点が、ブレゲの魅力だ。
ブレゲの代表的なコレクション ─ 「クラシック」「マリーン」「トラディション」「タイプXX」
ブレゲは多様なライフスタイルに合わせたコレクションを展開している。それぞれのモデルが異なる魅力を持ち、シーンに応じた選択が可能だ。
「クラシック(Classique)」
ブレゲの伝統を色濃く反映したコレクションが「クラシック」だ。洗練されたデザインと高度なムーブメントが融合し、フォーマルな場面に最適。手巻き、自動巻きのモデルがラインナップされ、いずれのモデルもエレガントな雰囲気を演出する。

「クラシック 5177」はコレクションの特徴を明快に表現するモデルのひとつ。ブルーのグラン・フー エナメルダイアルをはじめ、ブレゲ針やケースサイドのコインエッジなどの特徴的エレメントを備え、上品な雰囲気を漂わせる。自動巻き(Cal.777 Q)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWG(直径38mm、厚さ8.8mm)。3気圧防水。422万4000円(税込み)。
「マリーン(Marine)」
「マリーン」とは、ブレゲがフランス海軍の公式時計を製作していた歴史を背景に持つスポーティーウォッチコレクションである。耐久性に優れたチタンケースを採用したモデルも多く、スポーティーながらもエレガントなデザインが特徴。

「マリーン 5517」ではギヨシェ彫りで表現された波模様のダイアルや、海洋信号旗のモチーフをあしらった秒針など、海を想起させるディテールを随所に施す。自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。18KWG(直径40mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。869万円(税込み)。
「トラディション(Tradition)」
ムーブメントをスケルトン仕様で楽しめる、機械式時計の芸術品とも言える「トラディション」。18世紀の懐中時計を彷彿とさせるデザインと最新の時計技術が融合している。機械式時計のメカニズムを堪能したい人に最適である。

時刻表示とクロノグラフの駆動系統を独立させることで、それぞれの精度を高めた「トラディション インディペンデント クロノグラフ 7077」。審美性を追求したシンメトリックなレイアウトからは、ブレゲの高い技術力も感じ取れる。手巻き(Cal.580DR)。62石。2万1600振動/時(時刻)。3万6000振動/時(クロノグラフ)。パワーリザーブ約55時間。18KWG(直径44mm、厚さ14.1mm)。3気圧防水。1413万5000円(税込み)。
「タイプXX(Type XX)」
「タイプXX」は、1950年代にフランス空軍向けに開発されたパイロットウォッチをルーツに持つコレクション。機能性と洗練されたデザインを両立した、アクティブな大人の男性に最適な時計だ。

1955年からフランス空軍、58年からは海軍航空隊に供給された軍用モデルの特徴を再現しつつ、現代的にアップデートされた「タイプ 20 2057」。自動巻き(Cal.7281)。34石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。
大人の男性におすすめのブレゲ5選
ブレゲは長い歴史の中で数多くの名作を生み出してきた。しかしすべてのモデルが同じように魅力的というわけではなく、選ぶべき時計はライフスタイルや価値観によって異なる。特に50代の大人の男性にとって、腕時計は単なる時間を知るための道具ではなく、品格やこだわりを象徴する存在だ。
「クラシック 5157」Ref.5157BR/11/9V6

自動巻き(Cal.502.3)。35石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約45時間。18KRG(直径38mm、厚さ5.5mm)。3気圧防水。333万3000円(税込み)。
ブレゲの「クラシック 5157」は、シンプルな中に極上のエレガンスを宿したドレスウォッチだ。余計な装飾を排しながらも随所にブレゲならではの意匠が施された、完成度の高さを実感できる1本だ。
直径38mmのケースはローズゴールド(またはホワイトゴールド)で構成され、薄型のフォルムが特徴だ。厚さはわずか5.4mmという驚異的な薄さで、シャツの袖口にも自然に収まる。文字盤にはブレゲ独自のギヨシェ装飾が施されており、光の角度によって繊細な模様が浮かび上がる。
搭 載されているのは自動巻きムーブメントのCal.502.3。このムーブメントは超薄型でありながら高い精度を誇り、シリコン製ヒゲゼンマイの採用により耐磁性と耐久性にも優れる。またブレゲならではのゴールド製ローターも美しく仕上げられており、サファイアクリスタルの裏蓋を通してその動きを堪能できる。
クラシック 5157はビジネスシーンやフォーマルな場面で真価を発揮する。過度な装飾を排した洗練されたデザインは、成熟した大人の魅力を引き立てる。50代の男性にとって、一生モノの相棒となるにふさわしいモデルだ。
「マリーン 5517」Ref.5517TI/Y1/5ZU

自動巻き(Cal.777A)。26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約55時間。Ti(直径40mm、厚さ11.5mm)。10気圧防水。292万6000円(税込み)。
「マリーン 5517」は、ブレゲのスポーツウォッチコレクションであるマリーンの中核をなすモデル。スポーティーでありながらブレゲらしい上品さを兼ね備えたモデルだ。
ケースにはチタンが採用されており、直径40mmのサイズながらも非常に軽量。ケース側面にはブレゲならではのコインエッジ装飾が施され、スポーツモデルでありながらクラシカルな雰囲気を漂わせる。文字盤には深みのあるブルーが採用され、手作業によって施されたサンレイ仕上げが光差す海中を想起させる。
マリーン 5517には自動巻きムーブメントCal.777Aが搭載されており、パワーリザーブは約55時間。シリコン製ヒゲゼンマイを採用することで磁気の影響を受けにくく、日常使いにおいても安定した精度を発揮する。
スポーティーなデザインと軽量なチタンケースの組み合わせは、アウトドアアクティビティやカジュアルなシーンで活躍する。とはいえブレゲらしいエレガンスも備えているため、ビジネスカジュアルにも相性が良い。アクティブな大人の男性に最適な1本だ。
「マリーン クロノグラフ 5527」Ref.5527TI/G2/TW0

自動巻き(Cal.582QA)。28石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。Ti(直径42.3mm、厚さ13.9mm)。10気圧防水。407万円(税込み)。
「マリーン クロノグラフ 5527」は、マリーン コレクションにラインナップされるクロノグラフモデル。スポーティーな機能性とブレゲならではのエレガンスを兼ね備えたタイムピースだ。
ケースは直径42.3mmのチタン製で、軽量かつ高い耐久性を誇る。ケースサイドにはブレゲの象徴であるコインエッジ装飾が施され、スポーティーながらも上品な仕上がりだ。文字盤はサンレイ仕上げを施したスレートグレーで彩られ、ブルーダイアルとは異なるエレガンスを放つ。
搭載するムーブメントは自動巻きのCal.582QA。フライバック機能を備えたクロノグラフで、瞬時にリセットして再計測が可能だ。視認性の高いサブダイアルは、9時位置に30分積算計、6時位置に12時間積算計、3時位置に
カジュアルな服装にはもちろん、ビジネスやフォーマルシーンでも違和感なく着用できるデザインが魅力。スポーティーさとエレガンスを両立したマリーン 5527は、大人の男性にふさわしいクロノグラフモデルと言える。
「タイプXX 2067」Ref.2067ST/92/3WU

自動巻き(Cal.728)。39石。3万6000振動/時。パワーリザーブ約60時間。SS(直径42mm、厚さ14.1mm)。10気圧防水。288万2000円(税込み)。
「タイプXX 2067」は、ブレゲの航空時計の伝統を受け継ぐモデルだ。1950年代にフランス空軍のために開発された「タイプXX」シリーズの最新作であり、軍用時計の機能美とブレゲならではの洗練されたデザインが融合している。
ケースは直径42mmのステンレススティール製で、適度なボリューム感がありながらも快適な装着感を実現。文字盤はブラックを基調とし、大型のアラビア数字インデックスとスーパールミノバ加工が施された針により高い視認性を約束する。
搭載するムーブメントは自社製のCal.728。コラムホイール式クロノグラフを採用してスムーズな操作性を実現。さらにフライバック機能を備え、瞬時のリセットと再計測が可能だ。パワーリザーブは約70時間、シリコン製ヒゲゼンマイを採用することで、耐磁性と精度の安定性を向上させている。
軍用時計のDNAを色濃く残しながらも上品な仕上がりとなっており、カジュアルなスタイルはもちろん、ジャケットスタイルにも馴染む1本。伝統と革新が融合したクロノグラフとして、アクティブなライフスタイルを送る大人の男性に最適なモデルといえる。
「トラディション 7057」Ref.7057BB/G9/9W6

手巻き(Cal.507 DR1)。34石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約50時間。18KWG(直径40mm、厚さ11.7mm)。3気圧防水。503万8000円(税込み)。
「トラディション 7057」は、ブレゲの時計製造の伝統を体現するモデル。ムーブメントを前面に配したスケルトン仕様のデザインが特徴で、時計のメカニズムそのものを楽しめるタイムピースだ。
ケースはホワイトゴールド製で、直径40mmのサイズは手首への収まりも良好。文字盤はオフセンターの時分表示を採用し、ムーブメントの動きを視認しながら時間を確認できる仕様になっている。もちろん、ケースサイドにはコインエッジ装飾が施され、クラシックな雰囲気も覗かせる。
搭載するムーブメントは手巻き式のCal.507DR1。ブレゲ独自のシリコン製ヒゲゼンマイを採用して耐磁性と耐久性を向上。パワーリザーブは約50時間で、時計の心臓部であるテンワ(バランスホイール)の動きを楽しむことができる
このモデルは、実用性はもちろんのこと、機械式時計の芸術性を追求したモデル。そのため機械式時計のメカニズムに興味がある人にとっては、所有する喜びを強く感じられる1本となるだろう。まさにブレゲの伝統とクラフツマンシップを存分に味わえる「タイムピースの芸術作品」といえる。