ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブでジャガー・ルクルトが発表した、2025年の新作時計を紹介する。今年も同社を代表するコレクションである「レベルソ」が拡充され、さまざまな新型モデルがリリースされた。
2025年新作①「レベルソ・トリビュート・ジオグラフィーク」
1931年に製造された「レベルソ」は、ポロの競技中に時計を守るために、ケースを反転させる仕様としたことが大きな特徴だ。1985年に復活し、以降、同社の代表的なコレクションとして人気を博している。
レベルソ復活後の1991年、誕生60周年という節目を境に、ジャガー・ルクルトはこのアイコニックな腕時計に複雑機構を搭載させていった。そんな歴史を象徴するかのような新作モデルが「レベルソ・トリビュート・ジオグラフィーク」である。
手巻き(Cal.834)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。18KPGケース(縦49.4×横29.9mm、厚さ11.14mm)。3気圧防水。世界限定150本。545万6000円(税込み)。
手巻き(Cal.834)。18石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦49.4×横29.9mm、厚さ11.14mm)。3気圧防水。330万円(税込み)。
本作はレベルソの複雑機構の歴史を象徴するとともに、もうひとつの歴史的タイムピースと紐付けることができる。1998年、ジャガー・ルクルトは初めて同コレクションをトラベルウォッチとして解釈した「レベルソ・ジオグラフィーク」を、1990年代に500本の限定生産で発売された、6つの複雑機構搭載レベルソのひとつとして発表しているのだ。そして2025年、「レベルソ・トリビュート」シリーズに初めて複雑機構が搭載され、“ジオグラフィーク”の名が冠されることとなった。
限定150本の18Kピンクゴールド製モデルとステンレススティール製モデルが用意されたこの新作タイムピースは、ジャガー・ルクルトの新開発ムーブメントCal.834を搭載している。一見するとミニマルな3針モデルにグランドデイトが配されたモデルと見て取れるが、ケースを反転させるとワールドタイムウォッチとなっており、24の主要都市のタイムゾーンを確認できるのだ。
このワールドタイムの操作がまたユニークだ。見た目に楽しいということもあるが、クレドールからスライドさせたケースの、12時側の側面に出てくるプッシュボタンによって操作するのだ。一般的なワールドタイムはケースサイドの見える部分にプッシュボタンが配されているが、アールデコ調のスタイルを崩すことなくこの機構を実現したのは、レベルソの仕組みならではと言えるだろう。
プッシュボタンをクリックすると、ディスクが1時間単位で素早くジャンプする。この仕様も一般的なワールドタイムとは異なる。通常は、都市がディスクに記され、基準としたい都市を12時位置に合わせる。24時間表示は固定されており、知りたい都市の箇所で何時かを読み取る。しかしジャガー・ルクルトはその関係を“反転”させ、時間表示側をディスクとして動かす仕様としているのだ。これらの機構を実現する新型ムーブメントは、モジュール追加ではなく、完全一体型のムーブメントとなっている。

ワールドタイムのみならず、3針とグランドデイト側の文字盤も独創性にあふれている。深みのあるブルーまたはチョコレートカラーの文字盤はサンレイ仕上げが施されており、光の当たり具合によってその表情を微妙に変える。ブルー文字盤の方は、24層のブルーラッカーを重ねて製造している。
また12時位置のグランドデイトも特筆すべき機構だ。このグランドデイト表示は2021年、同社のエンジニアが長方形のレベルソケースの限られたスペースに収められる、新しい形の日付ディスクを開発し、特許を取得したことで実現している。なお、2枚のディスクは重なっているのではなく隣り合っており、1桁の日付が終わる時、ディスクの小さなフックがもう1枚のディスクに引っかかって回転させることで2桁の数字へと送る。この構造によってディスク同士で高低差が出ず、視覚的な調和が生まれるのだ。

この特別なレベルソ・トリビュート・ジオグラフィークのうち、150本限定の稀少な18Kゴールドモデルは、1991年の6つの「60周年記念モデル」を収めた「ノナンティエム・コレクターズボックス」からインスピレーションを得た、特別なボックスとともに発表される。6つに区切られた各コンパートメントは独特なレベルソモデル専用となっている。
なお、SSモデルの方はカーサ・ファリアーノがデザインを手掛けたストラップが2本付属する。ブルーレザーまたはレザーとキャンバスのバイマテリアル製ブルーストラップが、交換可能なダブルフォールディングバックルとともに装着できる。18Kピンクゴールドモデルの方はゴールデンタン カーフレザーまたはブラックアリゲーターが付属し、交換可能なピンバックルとともに楽しめる。
2025年新作②「レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーター」
7つの特許取得発明を含む、完全一体型の新しいムーブメントCal.953を、メティエ・ラール™工房で製造したエナメル文字盤とともに手元で楽しめる新作モデルが「レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーター」だ。
手巻き(Cal.953)。72石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KPGケース(縦51.1×横31mm、厚さ12.6mm)。3気圧防水。世界限定30本。要価格問い合わせ。
この新しいレベルソも一見するとシンプルな2針、それでいて反転させると複雑精緻なムーブメントが目に飛び込んでくるというモデルだ。ジャガー・ルクルトが「時計職人がマスターするのが最も困難で、最も挑戦のしがいがある複雑機構」とみなしているミニッツリピーターが収められている。
ジャガー・ルクルトは1994年に「レベルソ・ミニッツリピーター」を発表している。以来、この小ぶりな長方形のケースにリピーター機構を搭載させるため、ゴングの形状を変え、そして生み出される音質を追求し、向上させる発明で数多くの特許を取得してきた。2005年のクリスタルゴングや2009年のトレヴュシェハンマーが、その代表例である。そんな豊かなチャイミング機構の伝統を持つ同社から打ち出される本作には、前述したクリスタルゴングやトレヴュシェハンマ、そしてサイレントインターバルを除去するサイレント・タイムラプス低減機構など、7つの既存特許が盛り込まれた。
スペースを取る“鳴りもの”でありながら、ケースサイズは縦51.1×横31mm、厚さ12.6mmのサイズ感を実現し、かつパワーリザーブも実用的な約48時間となっている。

美観が極限まで追求されている点も、ジャガー・ルクルトの卓越したウォッチメイキングの精神を感じさせる。本作の“表側”の文字盤は手作業でギヨシェ彫りしたバーレイシードパターンがあしらわれており、さらに新色となるティールブルーのグラン・フー エナメルが何層にも重ねられている。この文字盤は、ジャガー・ルクルトのメティエ・ラール™工房で行われ、ギヨシェ彫りには4時間、グラン・フー エナメルにはそこからさらに8時間が要されるのだという。
ケースを反転させるとオープンワークとなっており、リピーター機構の複雑な動きが見えることはもちろん、手作業で面取りや装飾が施された、優美なムーブメントのパーツを観賞できる。5時〜7時位置まで、ムーブメントの全幅にわたってハンマーを支えるブリッジはブルーラッカーで装飾された。
一方でこういったオープンワークは判読性が低くなる傾向にあるが、本作はミニッツトラックがあしらわれたブルーラッカーの外周やファセットカットされたインデックス、そして力強い針によって、時刻確認に難はなさそうだ。
ケース側面に取り付けられたリピーターを作動させるスライダーは、レベルソのアールデコ調のスタイルの邪魔をしていない。
本作にはブラックのアリゲーターストラップが付いている。なお、18Kピンクゴールド製のフォールディングクラスプは、驚くべきことに微調整機構付きだ。0.5ミリ単位での微調整が可能なダブルホイール機構を新たに備えたのだ。
本作も、ノナンティエム コレクターズボックスとともに発表される。限定30本とさらに稀少なモデルであるが、ジャガー・ルクルトのウォッチメイキングの現在地がよく分かる新作モデルと言えるだろう。
2025年新作時計③「レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド」
ミラネーゼリンクブレスレットを備えた「レベルソ・トリビュート・モノフェイス・スモールセコンド」も要注目だ。

手巻き(Cal.822)。19石。2万1600振動/時。18KPGケース(縦45.6×横27.4mm、厚さ7.56mm)。3気圧防水。642万4000円(税込み)。
ヴィンテージウォッチに見られる、メッシュタイプのミラネーゼブレスレット。しなやかで優美なこのブレスレットは、腕時計に独創性をもたらしてくれる。本作はこのミラネーゼブレスレットとグレイン仕上げが施されたゴールドカラーの文字盤を組み合わせることで、ヴィンテージ感と現代的なエレガンスを両立させている。
ケースは7.56mmと薄く、わずかにアップデートされたラグアタッチメントがブレスレットと一体化しているように見せているため、優美なラインを描いている。ケースにボリュームはないものの、18Kピンクゴールドの重みが心地よく感じられるだろう。

この優美なブレスレットには、スライド式クラスプが搭載されており、微調整可能だ。
搭載されるムーブメントは、レベルソの中でもベーシックな手巻きCal.822。パワーリザーブは約42時間となっている。
2025年新作④「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」
「レベルソ・トリビュート・デュオ・スモールセコンド」からは、2種の新しい文字盤が発表された。
手巻き(Cal.854)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦47×横28.3mm、厚さ10.34mm)。3気圧防水。212万9600円(税込み)。
手巻き(Cal.854)。19石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(縦47×横28.3mm、厚さ10.34mm)。3気圧防水。212万9600円(税込み)。
ブラックまたはブルーの文字盤がモダンな本作。ケースを反転させるとシックなシルバーグレー文字盤があらわになる。さらに表面が3針表示のみであったことに対し、裏面は時分針のほか、デイ・ナイト表示と24時間表示が備わった。つまり、裏面で第2時間帯表示をさせることができる。“デュオ”と名の付く通り、違った顔を表裏で見せてくれる腕時計となっている。なお、操作もシンプルで、クレドールからスライドさせたケース12時位置のプッシュボタンで1時間ずつ時針を進ませるだけだ。
どちらもステンレススティール製ケースで、ムーブメントは手巻きCal.854を搭載している。パワーリザーブは約42時間。2本のストラップが付属しており、文字盤に合わせたカラーのレザー、またはレザーとキャンバスのバイマテリアル製ストラップが楽しめる。