【パネライ】アレッサンドロ・フィカレリにインタビュー。同社の戦略は「変化ではなく進化」

2025.04.05

47mm径の大型ケースと、往年のミリタリーウォッチを想起させるデザインを持つのが、2025年の新作である「ルミノール トレ ジョルニ」だ。近年、38mm径の「ルミノール ドゥエ」などを通じて、新たな顧客層の獲得に取り組んできたパネライにとって、これはひとつの方向転換とも見える。

広田雅将(本誌):取材・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
Edited by Yukiya Suzuki (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]


パネライ チーフ マネージング オフィサー、アレッサンドロ・フィカレリにインタビュー

アレッサンドロ・フィカレリ

アレッサンドロ・フィカレリ
パネライ チーフ マネージング オフィサー。2000年にルイス大学卒業後、ブルガリでプロダクトマネージャーとなる。05年にパネライ入社。11年にプロダクトディレクターとなり、21年より現職。現在はマーケティング、コミュニケーション、ヘリテージ、製品戦略を統括する。アンジェロ・ボナーティの時代からパネライを支える彼は、製品に一貫性をもたらすキーパーソンと言える。

「当社の戦略は、変化ではなく進化です」と語るのは、同社CMOのアレッサンドロ・フィカレリだ。「ルミノール ドゥエなどは、新興市場や女性層を含む新しいファンに向けた展開ですが、我々は同時に大胆さ、機能性、高い視認性といった、パネライのDNAにも注力してきました」。トレ ジョルニとは、原点への回帰というより、ブランドの核を再確認するための一手と言える。

 では、ムーブメントはどうなのか。「我々はミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、アニュアルカレンダーといった複雑機構を自社で開発している」と強調する一方で、「各モデルには目的に最適なムーブメントを搭載しており、自社製か外部供給かという区分にこだわることはありません」。薄いP.900がパネライの顧客層を広げたことは紛れもない事実だ。

 むしろパネライが注力するのは一連の「エクスペリエンス エディション」であるようだ。

「これは単なる販売ではなく、ブランドとの深いつながりを生む機会。マイク・ホーンとの冒険や、歴史的なアイリーン号での航海といった体験を通じ、所有者はブランドの世界観を深く体感できるのです」

 非常にユニークな試みだが、これらのモデルが短期間で完売するのは戦略の有効性を示すものだ。

パネライ「ルミノール マリーナ」

パネライ「ルミノール マリーナ」
2025年のウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで発表された新作PAM03312は、傑作PAM01312の進化版である。搭載するムーブメントはCal.P.900をベースにした新型Cal.P.980だ。サファイアクリスタルのシースルーケースバックが復活し、防水性能は500mに向上。ケースも若干薄く、軽くなった。この人気定番モデルの進化は、パネライの新たな方向性を示すものとなるだろうか。自動巻き(Cal.P.980)。23石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約3日間。SSケース(直径44mm、厚さ13.7mm)。500m防水。132万円(税込み)。

 素材戦略では、カーボテックやBMGテック、Ti-セラミテックなどの新しいマテリアルを継続的に投入。「素材ごとに機能が明確に定義されており、目的に応じた最適な選択をしています」。また、ケースサイズについては「コアは44mm。47mmのクラシックなモデルも継続しつつ、38〜40mmの需要にも応えています」と説明する。

 では、高級スポーツウォッチ市場におけるパネライの立ち位置をどう考えているのだろうか? 彼の回答は意外だった。

「我々はステータスよりも実用性を重視しています。すべての製品は極限環境での使用を想定して設計されており、ツールウォッチとしての信頼性を重んじています」

 イタリア海軍に供給していたブランドとしての誇りは、今なおパネライの核であるらしい。「私たちはイタリアのデザインとスイスのエンジニアリングを融合させたユニークな存在であり続けますよ」。

 であれば、今後のパネライには大いに期待できるのではないか?



Contact info:オフィチーネ パネライ Tel.0120-18-7110


【お詫びと訂正】
本記事は2025年4月4日に発売された『クロノス日本版』5月号(第118号)P.31に掲載したものです。この本誌でのページにおきまして誤りがございました。正しくは以下の通りです。読者の皆様ならびに関係者の皆様に、ここにお詫びして訂正いたします。

P.31 写真キャプション(説明文)モデル名
誤:ルミノール トレ マリーナ
正:ルミノール マリーナ

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