【お(た)くの細道】ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025日記 Day 2 ゼニスやA.ランゲ&ゾーネなど8ブランドを取材

2025.04.06

やあみんなこんにちは!『クロノス日本版』とwebChronos編集長の広田雅将だよ! 今年も世界最大の時計見本市、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2025が開催されるので、強制的に動員されることになった。「広田さん、またジュネーブ日記書くんですよね?」「おおん?」というわけで、今年も会場の様子、新作の超雑感などをお届けします!

【お(た)くの細道】ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025日記 前夜祭 by ヒロタ

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【お(た)くの細道】ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ 2025日記 Day 1 ブルガリ発、ホイヤー、カルティエ、ジャガー・ルクルト、グランドセイコー経由カルティエ行き

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広田雅将(クロノス日本版):写真・文
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2025年4月6日公開記事]


日清のカップ麺を食べて、ゼニスの取材へ

 2025年4月2日、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2日目。朝7時4分の電車に乗り、8時過ぎに会場のPalexpo(パレクスポ)着。朝食は食べられず。悲しく日清のカップ麺を食べる。

モルジュ駅。日本でいうと武蔵小金井みたいな感じ。治安はいいけど、夜になるとジャンキーが見られる。

 今回は8時45分から、ゼニスの新作発表。今年の目玉は、いうまでもなくゼニスのCal.135である。10年以上前から復活計画が進んでいたし、数年前から話は聞いていた超大作が、今年ついに形になった。まさかあの史上空前の名機が、完全復刻されるとは誰が予想しただろう?

ゼニス G.F.J

大きなお友達お待ちかねの、ゼニスのCal.135を搭載した「G.F.J.」。まさか復活するとはなあ。文字盤はギヨシェにアベンチュリン、マザー・オブ・パールという豪華さだが、思ったほど奇抜ではない.

比類なきエンジン。巻き上げヒゲを含めて完全復活。なんだった巻き味もオリジナルに近い。160本限定は実にもったいないではないか。だれかかって自慢してください!

 今回用意されたのは2モデル。直径39.15mmのケースで、レザーバンド付きか同素材のブレスレット付きだ。文字盤とムーブメントには、ゼニスの工場の外観を模した刻み模様が施されている。これは好みが分かれるだろうが、個人的にはあり。傑作Cal.135はオリジナルとほぼ同じだが、パワーリザーブが大きく伸び(オリジナルは40時間ぐらいしかなかった)、面取りが強調されている。価格はかろうじて600万円台だから、中身を考えればかなり良い。

ゼニス G.F.J

こちらはブレスレット付きのG.F.J.。実はレザー版よりこっちの方が好きだ。もちろん外装はすべてプラチナ製。重いけどバランスは非常に良いね。お金があったら欲しいわ。

ゼニス G.F.J

ブレスレット。昔懐かしい感じだが、カッチリした節度感は今のブレスレットです。これ単体で売ってくれないのかなあ。

W&WGのゼニスのブース内。今年は一転して、歴史を前面に押し出していた。新しいCal.135はいいぞ。


A.ランゲ&ゾーネのブースへ

 で、9時半からA.ランゲ&ゾーネのアントニー・デ・ハスにインタビュー。話題は新しい永久カレンダー付きミニッツリピーターについて。

A.ランゲ&ゾーネのブース内では職人さんが組み立てをやっていた。さすがに話を聞くわけにはいかず。

A.ランゲ&ゾーネのプレスカンファレンス。日本中の関係者がごそっと集ってました。発表してくれたのはティノ・ボーベさん。

新しい永久カレンダーミニッツリピーター。文字盤は4枚のブラックエナメルを重ねたもの。歩留まりはどうも最悪らしい。ティノさんいわく「実は文字盤のコストだけで、この会場にある多くの時計よりも高いのよ」。

永久カレンダーパーペチュアルの文字盤側。1カ月に1回転するリングが動くのは従来に同じ。しかし取り回しを変えて、リピーターが載るようになった。

 A.ランゲ&ゾーネは数年前、「リヒャルト・ランゲ」にリピーターを出した。僕はそれをいち早く見たが、最終的に製品版の音は確認できなかった。デ・ハスさんいわく「今回のリピーター自体はリヒャルトと同じ。ただし、永久カレンダーの取り回しを工夫して、リピーターが載るようにした」とのこと。感心させられたのは音の良さだ。最近のリピーターはパテック フィリップのようにケース内部に空洞を設け、できるだけ音を反響させるようにしている。しかしA.ランゲ&ゾーネは機械をできるだけケースに詰め込む。しかもケース素材は、音が響きにくいとされるプラチナだ。なぜ真逆の設計を採るのかと尋ねたところ「他社と同じことをやっても仕方ないでしょう?」とのこと。音量についてはまだ語れないが、音質は間違いなく良い。

デ・ハスさん自らが、図を書いてガバナーの説明をしてくれた。「機構自体は今までに同じ慣性式だ。しかし、厚みを減らして軸部のブレを抑えた」。

 もっとも、個人的に引かれたのは直径34mmサイズの新しい「1815」だ。昔のCal.L.941を載せたのかと思いきや、直径28.1mmのムーブメントを採用している。「これめちゃくちゃ話すことあるんだけどね」とのことだけど時間切れ。後ほど聞くつもり。ちなみにこれは300万円台で買えるので、時計オタク希望の星だ。

A.ランゲ&ゾーネ 1815

新型「1815」はめっちゃいい。直径34mm、厚さ6.6mmのケースには、新型ムーブメントが格納されている。


ローラン・フェリエ→ヴァシュロン・コンスタンタン

 終わった後、ローラン・フェリエの取材。相変わらず時計に、まったく抜けがない。新しいGMTモデルは、文字盤中央に置かれたエナメルのエレメントがドーム状に盛り上がっている。なぜこんな仕上げができたのかフェリエさんに尋ねたところ「すぐにエナメルを盛って焼くのだ」とのこと。禅問答みたいだが、彼が言うからそうなのだろう。外装に関していろいろ話す。「明るい色をPVDで施すのは流行っているけど、PVDの色は好きじゃないんだ」とのこと。レジェンドはそう考えてるのね。

ローラン・フェリエさん自ら新製品の説明をしてくれた。左はスイスプライムブランズのルカさん。御大はめっちゃ元気でした。

これは新作のGMTモデル。仕上げは言うことありません。中心のエナメルは、なんとドーム状になっている!「ドーム状にして、周囲のインデックスが浮かぶように変えたんだ」

ローラン・フェリエ GMT

搭載するムーブメント。相変わらず言うことございません。

ローラン・フェリエ オートマティック

こちらは3針のモデル。文字盤の彩色は、なんとラッカーで行っているとのこと。どうやってこのエッジを出しているのか謎だ。

 その後、ヴァシュロン・コンスタンタンでタッチ&フィールと撮影。270周年の超大作「レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション -ラ プルミエール-」は触れなかったが、それ以外は一通り見られた。今年はより一層仕上げ(とりわけ文字盤)に注力していて、マルタ十字があしらわれた。また、歴史を強調するべく、ムーブメントの受けには1920年代にあったコート・ユニークなる仕上げが見られた。あくまで私見だが、ヴァシュロン・コンスタンタンは、ここ5年ほどで、内外装の統一感を大きく高めた印象がある。

270周年のヴァシュロン・コンスタンタンは新作が目白押し。これは新作の「トラディショナル・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー」。リュウズの逆回しで、曜日以外を戻すことが可能だ。

ヴァシュロン・コンスタンタン トラディショナル

「トラディショナル・トゥールビヨン・パーペチュアルカレンダー」にはCal.2162 QP270が搭載される。受けの仕上げは、筋目状のコート・ユニーク。1920年代の手法が再現された。


昼食でプレスセンターへ。そこには疲れ切った各ジャーナリストが……

 ちなみにこの日は昼食をとる時間があった。プレスセンターに行ったところ激混み。動画配信の人たちがいるから、Wi-Fiもまったく使えず。立ち食いでサンドウィッチを食べる。2日目なのに各ジャーナリストは死にそうな顔をしている。初日はハーイ! と手を挙げていたのに、2日目以降は軽く手を挙げるか目礼するのみ。

昼食風景。プレスセンターが混みすぎて立ち食い。ラーメン以外のお味はよろしゅうございました。

たばこスペースでは、コーヒーが提供されている。バリスタのお姉さんいわく「会期中は1日に1200杯ぐらいは出るわね」とのこと。


ヴァン クリーフ&アーペルで、大作の数々を見る!

 15時から、ヴァン クリーフ&アーペル(以下、VCA)のCEOとなったカトリーヌ・レニエさんのインタビュー。彼女はジャガー・ルクルトで長期政権を築いていたが、そもそもはVCAに長く籍を置き、同社の躍進を見届けてきた。トランプの関係でビジネスの話はできないので、もっぱら創作の話のみ。「あなたの復帰は当然ですね」と水を向けると「まさにそうよね」と満面の笑みを浮かべていた。前CEOであるニコラ・ボスの直系とも言える彼女だから、今後もこの路線は尽くのだろう。でも、彼女はこうも語っていた。「将来的に、男性用のモデルも考えないわけじゃないのよ」。

ヴァン クリーフ&アーペルのブース。今年のテーマはパリ、だそうでございます。例年に比べて入りやすくなった。

ヴァン クリーフといえばオートマタ。昨年ほどのオートマタ祭りじゃないけど、目を引く大作は多数。

こちらはプラネタリウム。こういう大作をリリースし、しかも毎年確実に売れるのが同社のすごさだ。アルハンブラだけじゃないのよ。

こちらは新作の「レディ アーペル バル デ ザムルー オートマタ 」。機構は従来に同じだが、ダンスを楽しめるカフェ ギャンゲットで恋人たちの逢瀬を描いている。写真が示す通り、文字盤の表現はさらに進化した。


ノモス グラスヒュッテを取材していたら、ティノ・ボーベさんが乱入!?

 その語、ノモス グラスヒュッテを訪問。今年の新作である「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー」をチェック。3時位置に第2時間帯表示を設けたこのワールドタイマーは、かなり使いやすいし、何しろボタンの感触がいい。ノモスらしく色の数は豊富だがら、いろいろ選べるのも楽しい。「チューリッヒ」のワールドタイマーに比べてお値段はかなり控えめ。そしてノモスとしては例外的にまともなブレスが付いている。

ノモス クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー

ノモスのブースにて、今年のメインは「クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー」だった。カラフルな色を押し出したけど、むしろ見るべきはムーブメントだ。

ノモス クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー

ノモスは積極的にタッチ&フィールを行っている。新作の感触は想像以上にいいね。

ノモス クラブ・スポーツ ネオマティック ワールドタイマー

新作のワールドタイマー。現実的なサイズ、良質なブレスレット、そして優れた感触に富むムーブメントを載せる。

 時計を見ていたら、なんとA.ランゲ&ゾーネの「ラーメン大好き小池さん」こと、ティノ・ボーベさんがブースに来た。「ティノさん何してるんですか?」「いやさ、ウヴェ(ノモスのCEO:ウヴェ・アーレント)といろいろ仲が良いのよ」。んで、ふたりでキャッキャウフフと新作を見ていた。

ノモスのブースにて。左はA.ランゲ&ゾーネのティノ・ボーベさん、右はノモスのウヴェ・アーレントさん。ティノさんいわく「昔から仲良いのよ」。

 ノモスのオーナーである、ローランド・シュヴェルトナーさんにも挨拶。「クロノスがいちばん使っているSNSはどこ?」「Xです」「Xかあ、マスクかあ」。言いたいことは分かります。「今テスラに乗っているが、売ろうか迷っているんだよ」。シュヴェルトナーさん、さすがに返事はできません(笑)。


IWCは「インヂュニア」推し

 16時30分からIWCの撮影。今年は「インヂュニア」推しの年。個人的に感心させられたのは新しいインヂュニアのセラミックス。外装の質感をしっとりさせたのはいかにもIWC。そして、ムーブメントホルダーをギリギリまで薄くすることで、セラミックケースなのに直径42mmサイズを実現した。IWCはセラミックケースを太らせない配慮が際立っている。ちなみに今年、IWCは『F1』という映画のスポンサーをやるらしい。というわけで、会場にはその架空のF1コンストラクターである「APX GP」のマシンが置かれていた。

こちらはIWCのブース。F1カーと、撮影用の車が鎮座していた。入りやすさでいうと、会場随一かも。

IWC インヂュニア

IWCの新しい「インヂュニア」は、直径42mmのセラミックケースを持っている。可能にしたのは薄いムーブメントリング。1mmの厚さに、よくネジを立てられるよな。

IWC インヂュニア

「インジュニア 42」の外観には、ちょっと新しい仕上げが盛り込まれた。今回採用されたのは主に左から2番目。筋目仕上げの後にブラストを施すことで、ケース全体の筋目をわずかに抑えてみせた。機能的に見せるのは本当に上手い。

IWC パイロット・ウォッチ・トップガン

こちらは「パイロット・ウォッチ」“トップガン”の3針モデル。地味だけど個人的にはかなり好き。今のIWCは、時計全体のトーンとマナーをそろえるのが上手い。

IWC「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショックアブソーバー・トゥールビヨン・スケルトン XPL」

新しい「ビッグ・パイロット・ウォッチ・ショックアブソーバー・トゥールビヨン・スケルトン XPL」は、ムーブメント外周にBMGガラスのショックアブゾーバーを配して、1万Gもの耐衝撃性能を実現した。関係者いわく「ラバーもいいけど、寸法誤差を考えるとBMGはいちばんいいよ」とのこと。


マイスタージンガーのパーティーへ参加したのち、「記事にはできない」会食へ

 本来ならヴァン クリーフの撮影に行く予定だったけど、会食への出発が前倒しになったため断念。空き時間にマイスタージンガーのパーティーに寄った。なんと大先生こと、ギズベルト・L・ブルーナーもいる。スピーチをしたのは、かのアラン・シルベスタイン。今年コラボレーションを出すとのこと。ブレゲの1本針時計である、「スースクリプション」の魅力を大いに語っていた。となれば、新作には大いに期待したい。

マイスタージンガーのカクテルパーティーにて。左はCEOのマンフレット・ブレスナー、右は言わずと知れたアラン・シルベスタイン!

 その後会食。さすがにこの内容は書けません。豪奢なレバノン料理をいただく。終わって23時に部屋に戻る。

おまけ。エルメスのブースでは、前夜祭で見たショートフィルムが流れていた。日本の風景じゃねえかよ。脱力する。


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