やあみんなこんにちは!『クロノス日本版』とwebChronos編集長の広田雅将だよ! 今年も世界最大の時計見本市、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ2025が開催されるので、強制的に動員されることになった。「広田さん、またジュネーブ日記書くんですよね?」「おおん?」というわけで、今年も会場の様子、新作の超雑感などをお届けします!
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
[2025年4月7日公開記事]
Day3は朝食にありついてから、F.P.ジュルヌの本社工房へ
2025年4月3日、ウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブ3日目。今日はなんと朝食の時間があった。ホテルのレストランでサンドウィッチを食べる。ジュネーブのホテルよりずいぶんマシで、電車移動がなければ、ジュネーブの定宿はここにしたいぐらいだ。朝7時34分の電車に乗り、トラムを乗り継ぎ、8時半過ぎにジュネーブ市内にあるF.P.ジュルヌの工房着。新作を(といっても1点しかないのだが)を見る。
もっとも、その新作はただ事でない。「クロノメーター・フルティフ」は、ブレスレットを含めてタングステン・カーバイド、文字盤もなんとブラックエナメル製だ。加えてムーブメントも面白くて、4番車がセンターにあるダイレクトセンターセコンド輪列を採用している。F.P.ジュルヌでは初とのこと。F.P.ジュルヌらしさが横溢しているのは、輪列をコンパクトにまとめることで余白を作り、その上下にパワーリザーブとムーンフェイズを加えたこと。スペースの魔術師は一層冴えた感がある。もっとも、F.P.ジュルヌの工房はこれを作れるのだろうか。公称の年産は1000本だけど、実際はもっと少ないのだ。
再びW&WG会場へ!
10時に取材を終えた後、タクシーで慌ててPalexpo(パレクスポ)に移動。別チームが撮影している、ジャガー・ルクルトに乱入。ミラネーゼブレスレット付きの「レベルソ」は傑作じゃないですかね。それと、ワールドタイマーこと「レベルソ・トリビュート・ジオグラフィーク」もいい。値段は上がったけど、ジャガー・ルクルトの外装は大きく底上げされた感がある。いいなあ、老舗復活かも。どうでもいいけど、開発責任者の浜口尚大さんとは、4月下旬に対談します。お楽しみに。


ジャガー・ルクルトに30分滞在した後、モンブランCEOのローラン・レカンのインタビュー。今年同社が推すのは「モンブラン アイスシー オートマティック デイト ゼロ オキシジェン」。ベゼルがブルーの2トーンになったほか、ケースサイズも直径38mm、厚さ12.3mmと小さくなり、まともなISO 6425に準拠したダイバーズウォッチになった。「日本を含むアジアには受けるでしょう」とのこと。他にもいろいろ話したが、政治的に微妙なので内容は記さず。個人的に引かれたのは、ミネルバの年次カレンダーである「モンブラン 1858 ジオスフェール アニュアルカレンダー リミテッドエディション – 30」。一見地味だが感触、仕上げともにいい。
W&WG会場からホテル デ・ベルグへ
その後、再びタクシーに飛び乗り、市内にあるホテル デ・ベルグに移動。移動だけで痩せそうです。ユニバーサル・ジュネーブの話を、ディレクターのグレゴリー・ブルタンから聞く。彼がロジェ・デュブイの開発責任者だった頃から話を聞いているので、余計な前置きがいらないのはありがたい。いろいろすっ飛ばして深い話を聞く。ガチガチにNDAを結んでいるので写真も撮らず。「僕が最初に買ったのは、実はユニバーサルのマイクロローターだった。ユニバーサルに来たのは運命だと思うよ」。ブルタンはマイクロローターマニアだったのか!!! 日本で飲む約束をして退散。
またまたW&WG会場へとんぼ返り……
その後再び、タクシーでパレクスポに移動。その後、かろうじてプレスセンターで昼食をとる。秘密の調味料を持ってきたので、これでラーメンのリベンジ。意外とイケるんじゃないでしょうか、知らんけど。集ったジャーナリストたちはいよいよ殺伐としている。
14時から、IWCの開発責任者であるステファン・イーネンに話を聞く。今年は外装に特化していたため、彼の本領たるムーブメントの話題は少なかった。「CEOのグランジェ・ヘア(編集部注:クリストフ・グランジェ・ヘア)にケースを薄くしろと言われるんだな、これが大変なんだよ」とのこと。もしシリコン製ヒゲゼンマイを採用したら、「インヂュニア 35」は買うかもしれない、と伝えたところ「シリコンの研究は続けているよ」とイーネンは答えた。ともあれ、彼がいる限りIWCは信頼できる。
その後、ヴァシュロン・コンスタンタンのプロダクション&イノベーションディレクターであるサンドリン・ドンガイさんへのインタビュー。「外装にもより力を入れるようになったのは、前のCEOであるルイ・フェルラが来て以降でしょうね」。デザインも分かる、製法も分かる彼女は強い。でもって、女性用が良くなったのも納得だ。「今回の270周年には、文字盤にグラフィカルに改めたマルタ十字をあしらっています。製法はギヨシェ、エンボス(つまりプレス)、そしてマザー・オブ・パールにはエングレーブ」。製法が違うのに、仕上がりをほぼそろえてきたのはさすがヴァシュロン・コンスタンタンとしか言いようがない。
16時15分からはIWCのタッチ&フィール。十分触りきれなかった新作を堪能する。感心させられたのは、リュウズのガタのなさ。最近いろんなメーカーがリュウズ周りの遊びを詰めているが、その中でもIWCはピカイチじゃないか。一通り聞いたので、記事のネタには困らないかも。「でもなぜ、ショックアブソーバーにBMGガラスを使ったんですか?」「むしろあれを外装に使う方が信じられないよ」。
IWCとパルミジジャーニ・フルリエ経由でウブロ行き
その後、所用があり会場内を回る。パルミジジャーニ・フルリエのブースで、コンセプトCEOのヴァレリアン・ジャケと会う。「今年ジェイコブに行った?」「いやまだですけど」「今年の4軸トゥールビヨンは面白いよ、ぜひ見て」。後に見たけど、確かにこれはヤバい。
他、関係者たちと会った後、ウブロの取材に合流。新作を一通り見る。
ウブロはド派手なイメージが強いけど、毎年のように内外装に手を加えている。「ビッグ・バン」20周年の今年は、なんと初代モデルをほぼ忠実に復刻した。もっとも搭載するのは、新しいムーブメント「ウニコ2」で、ケースの素材もチタンになった。部品の噛み合わせが良くなったほか、樹脂(ウブロはカーボンと言っているが)の成形も良く、何しろ感触が改善された。プッシュボタンの押し心地は、ウニコ2搭載機の美点だろう。ちょっとこれは欲しいかも。
ブライトリングとの会食後、また40分かけてホテルへ
その後、ジュネーブ市内に移動して、今やユニバーサル・ジュネーブとギャレ(僕らはギャレットと呼びたい)を傘下に収めたブライトリングとの会食。気の置けない感じでゆるゆる酒を飲む。情報交換と言うよりも雑談。
食事を早々に終え、トラムに乗ってコルナバン駅に行き、電車で40分揺られてモルジュに着く。23時頃。0時に就寝する。さすがに時計見過ぎて、頭混乱してきたぞ。