GPHG2024のチャレンジ賞を射止めたことで、耳目を集めた大塚ローテックから新作が発表された。ダブルレトログラード、ジャンピングアワーに続き、国産時計では初となるサテライトアワーが誕生した。

赤い矢印はディスクの進む方向を示したもの。第1回の抽選販売は、3月1日18時~23時に公式ECサイト(https://otsukalotec.base.shop/)で実施。自動巻き(MIYOTA90S5+自社製サテライトアワーモジュール)。25石+2ボールベアリング。2万8800振動/時。パワーリザーブ約40時間。SSケース(直径40.5mm)。日常生活防水。74万8000円(税込み)。
Text by Norio Takagi
吉江正倫:写真
Photographs by Masanori Yoshie
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年3月号掲載記事]
極小ベアリングが実現した、国産時計初のサテライトアワー
三つ又のアームの先端に吊り下げられた十字の数字盤のインデックスが順に切り替わってアワーを示し、同時にそれ自体が分針となる──これまでダブルレトログラードとジャンピングアワーを世に送り出してきた大塚ローテック、すなわち片山次朗氏が、新たに挑んだ時刻表示機構は、日本初のサテライトアワーであった。搭載機の名は、「5号改」。既存の「6号」と「7.5号」とは明らかに異なる上下のラグにボリュームを持たせたケースのフォルムは、2012年に発表されたブランド初の市販モデル、5号からの継承である。5号は、時・分をディスク表示としたレギュレーターであり、その進化形がサテライトアワーであるとの想いが、〝改〞との名に込められている。
いかにもメカメカしいダイアルデザインは、まさに片山氏の真骨頂と言えよう。そしてミニッツカウンターを右サイドに配置することで、袖口からわずかにダイアルが覗くだけで時刻の確認ができる使い勝手の良さも忘れてはいけない。サテライトアワー機構は、9時位置の下側に見える減速歯車で駆動する設計。その歯車を極めて薄く仕立て、バネを介した二層構造とすることで駆動車との噛み合いを自動で補正し、サテライトアワーには付き物の揺り戻し(バックラッシュ)を解消する工夫が、実にクレバーである。
数字盤は、8時位置のボールベアリングローラーによって切り変わる仕組み。十分な強度が得られる太い軸が使え、かつダイアル外周ギリギリに設置できるサイズのボールベアリングを、ミネベアミツミに発注し、同社はその要望を見事にかなえた。またディスク式のスモールセコンドには、同社の世界最小ボールベアリングが使われている。日本の優れた工業技術を、5号改は世界に向け発信する。