創業270周年を迎えたヴァシュロン・コンスタンタンが手掛ける新しいグランドコンプリケーション。41機構を腕時計サイズのケースに収めた超大作だ。実機未見だが、先行資料からその横顔を探ってみよう。
Edited by Yuto Hosoda (Chronos-Japan)
[クロノス日本版 2025年5月号掲載記事]
41もの機構をケースに詰め込んだグランドコンプリケーション
本誌が書店に並ぶ頃、ちょうどジュネーブではウォッチズ&ワンダーズが開催されている。そこで正式発表されるヴァシュロン・コンスタンタンの超複雑時計が「レ・キャビノティエ・ソラリア・ウルトラ・グランドコンプリケーション ‒ラ・プルミエール‒」だ。同社は今年創業270周年。250周年時の「トゥール・ド・リル」、260周年時の「Ref.57260」に比肩し、それを凌駕する超大作であることは間違いない。
手巻きのベースムーブメント部分には、トゥールビヨンとスプリットセコンドクロノグラフ、そしてウェストミンスターカリヨンを備えたミニットリピーターが備えられ、この新しいストライキング機構だけで7件の特許が盛り込まれている。
GMTとワールドタイムを併載する時分表示には、ディファレンシャルギアを用いた個別の調整機構が備えられるようだ。時分表示の機構は、常用時/恒星時/太陽時の3つにそれぞれ専用の輪列が用意され、これらは裏表のダイアルを用いて、すべて同時に表示される。
ラ・プルミエールが搭載するCal.3655のハイライトとなるのは、天体表示機構とグレゴリオ暦の永久カレンダーをまとめたモジュール部分だろう。このモジュールは、太陽の位置、高度、南中、赤緯を表示するだけでなく、裏ダイアル側を用いて「天体の時間追跡」を可能にしている。一見すると通常の天空図を用いた天体表示にも思えるが、星座盤を切り取る窓の部分が通常位置からズレて配置されており、これ自体が回転するのかもしれない。世界初とあることからも、まったく新しいコンセプトの天体表示と考えてよいだろう。このあたりはジュネーブ取材後に改めてレポートしたい。
41を数える超複雑機構を、腕時計サイズにまで凝縮させた野心作。新規開発のストライキング機構を備え、厚さ2.8mmの天体モジュールは「プラグ&プレイ」システムと呼ばれる特許機構でベースムーブメントと連結される。手巻き(Cal.3655)。204石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。18KWGケース(直径45mm、厚さ14.99mm)。ユニークピース。