チューダーは今年もウォッチズ&ワンダーズ ジュネーブで、新作モデルを発表した。新しいコレクションの登場など、さまざまなトピックスがある中で、『クロノス日本版』編集の鈴木裕之が最も注目したのが「完全刷新」したという、新しい「ブラックベイ 58」である。
[2025年4月15日公開記事]
すべてが変わったチューダー「ブラックベイ 58」
「大きい1年」をテーマに掲げて、時代と逆行するように43mmケースの「ブラックベイ 68」をラインナップに加えた今年のチューダー。しかし我々にとっての大本命は、鮮やかなバーガンディーカラーに彩られた新しい「ブラックベイ 58」だ。このモデルは単なるニューカラーではない。すべてが新しく生まれ変わった第2世代機なのだ。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。64万9000円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。63万3600円(税込み)。

自動巻き(Cal.MT5400-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。SSケース(直径39mm、厚さ11.7mm)。200m防水。60万2800円(税込み)。
まず印象的なのは、やはりオールバーガンディーの意匠だろう。このカラーリングは直径41mmの初代「ブラックベイ」から、ややマット調のギルトダイアルとの組み合わせでベゼルカラーとして用いられてきたもの。チューダーフリークにはお馴染みとも言える色味だが、従来はあくまでベゼルの挿し色としてのみ用いられてきた。しかしブラックベイ・ファミリーがラインナップを拡充し、ブラックセラミックスやブロンズ、シルバーなどの異素材をケースに用いるようになった現在では、ダイアルまで含むオールバーガンディーの装いは、決して冒険的な試みではなくなった。チューダーの市場認知度が確固たるものになったればこそ、満を持しての登場である。
ここでわざわざ満を持して……と書いたのには少し理由がある。このオールバーガンディーが試みられたのは、今回が初ではないからだ。直接のモチーフとなったのは、1995年頃に試作された「サブマリーナー Ref.79190」で、ブラックとブルーは実際に市場投入されたものの、鮮やかなバーガンディーカラーはお蔵入りとなっていたのだ。目の細かなサンバースト地のダイアルは、プレスリリースの画像で見るほど彩度の高い印象はなく、程よいツヤ感を伴ったしっとりとした仕上がりだ。

「色」以外にもある、従来モデルからの変更点とは?
ケースサイズは直径39mmで、これは2018年のファーストローンチ以来、圧倒的なベストセラーモデルとなっている従来のブラックベイ 58と同じ。しかし厚みはやや抑えられ、11.9mmから11.72mmにシェイプされている。ブレスレットのバリエーションは、従来の3連スティールリベットとラバーに加え、新たに5連スティールも登場。39mmケース用の5連はこのモデルが初採用となるが、ケース自体のプロポーションが新規にアップデートされているため、ブルーベゼルの旧ブラックベイ 58用にトレードする、というのは少し難しいかもしれない(←未確認だけど)。さらにこの5連ブレスに加え、3連リベットにも“T-fit”アジャスティングシステムが採用され、最大8mmの微調整が可能になったこともうれしい。
搭載されるムーブメントは約65時間パワーリザーブを誇るCal.MT5400-U。末尾のスペック記号からも分かる通り、このモデルはMETAS認定によるマスター クロノメーターを取得している。マニュファクチュールのラインナップの中でもベーシックな位置付けとなる、3針のCal.54系ムーブメントがマスター クロノメーター仕様とされたのも、このバーガンディーが初だ。
リニューアルされたケースやブレスレット、そしてMETAS認定のCal.54系ムーブメントは、いずれ他のカラーバリエーションにもレトロフィットされるだろう。しかし今この瞬間において、第2世代のスペックを網羅したブラックベイ 58は、このバーガンディーモデルしか存在しないのだ。鮮烈なカラーリングよりも、完全刷新とも呼ぶべきアップデートの内実にこそ、このモデルの真価がある。