ウォッチズ&ワンダーズのブースの中でも、人気を誇るパテック フィリップのブース。2025年は注目の新作が多かったためか、特に話題を集めていた印象だ。王道は小径サイズが追加された「CUBITUS」や新しい「カラトラバ 6196P」だろうが、約8日巻きのパワーリザーブを誇る「カラトラバ 5328」も忘れてはいけない1本だ。デザインも新開発のムーブメントも◎な、伏兵的存在である。
自動巻き(Cal.31‑505 8J PS IRM CI J)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約192時間。18KWGケース(直径41mm、厚さ10.52mm)。3気圧防水。1119万円(税込み)。
細田雄人(クロノス日本版):文 Text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
[2025年4月16日公開記事]
パテック フィリップ新作の伏兵的存在「カラトラバ 5328」
毎年、時計愛好家の耳目を集めるパテック フィリップの新作。今年の注目モデルでいえば、小径サイズが登場した「CUBITUS」や超絶系テーブルクロックの「グランド・コンプリケーション 27000M」、スモークダイアルが話題を呼んだ「グランド・コンプリケーション 6159」、そしてオタク的には「カラトラバ 6196P」だろうか。
しかし、スイスの会場でこぞって日本人ジャーナリストが手に取り、感嘆の声を上げていたモデルがもうひとつある。それが「カラトラバ 5328」だ。「カラトラバ 5226」よろしく荒らされた文字盤とケースサイドを取り囲むように入れられたクル・ド・パリの仕上げを持つ、少しミリタリーチックなカラトラバである。
とはいえ、Ref.5226と今作Ref.5326の持つミリタリーテイストは若干異なる。3針+ディスク式日付表示のRef.5226文字盤がスレートグレー系のグラデーションだったのに対し、指針式の日付カレンダー&ディスク式曜日表示とパワーリザーブインジケーターを持つ5328はブルー系のグラデーションを採用。結果、大雑把な表現で恐縮だが、前者が陸軍っぽさを持つのに対して、後者はどちらかと言えば海軍チックな雰囲気を醸し出している。
マリンクロノメーターを想起させる文字盤デザイン
言うまでもなく、カラトラバ 5328が漂わせる海軍チックとは、“マリンクロノメーターらしさ”だ。もちろん、マリンクロノメーターの文字盤カラーは白が一般的である。しかし、12時側のパワーリザーブインジケーターと外周のカレンダー表示のおかげで大ぶりに見えるスモールセコンド、そして「8DAYS」という視覚的情報と、海の色を想起させるブルーグラデーションの組み合わせは、そんな錯覚を思わせるに十分だ。
手に取って間近で見ると、縁取られたインデックスと、それにしっかりリーチする分針のコンビネーションが高精度機らしい佇まいを放つ。その判読性の高さと荒らした文字盤による視認性の高さが相まって、手に取った瞬間、「これは使いやすそう」と感激したのを覚えている。
また、日付と曜日の瞬時切り替えも感動的だった。指針式の日付はもちろんのこと、ディスク表示の曜日も12時を差した瞬間にパシッと切り替わるのだ。普段よりカレンダー表示はない方が好みと公言しているが、前述の通り、スモールセコンドが大きく見えるなど今作のカレンダーに関してはデザイン的にもメリットが大きく、大歓迎だ。
新開発の手巻きムーブメントは、古典的なデザインがツボ
搭載されるCal.31-505 8J PS IRM CIJのデザインも個人的なツボである。ツインバレルの手巻きムーブメントはパルソマックス脱進機を採用する全くの新開発ながら、大きく取られた受けの形状から古典機のような風体を持つ。戻り角が入れられていないのは残念だが、言うまでもなく仕上げは高水準だ。
約192時間という超ロングパワーリザーブと直径32mmというスペックを考えれば、拡張性は高いはず。今後、ハイコンプリケーションのベースムーブメントとなるかも、という期待も自然と湧いてくる。
オタクが食いつく理由がある
もちろん、外装も文句なしだ。ミドルケースを1周するようにクル・ド・パリ装飾が入れられるよう、ラグを別体とした構造はカラトラバ 5226から不変。
冒頭でミリタリーテイストと評したが、この辺りのキャラクターは間違いなくドレスウォッチのカラトラバらしい。ケース厚も10.52mmと約8日間のロングパワーリザーブ機と思えない薄さで、そりゃ、広田編集長も食いつくわけだ。