セイコー プロスペックスは、スポーツやアウトドアシーンでの使用を想定した本格機能を備えた総合スポーツウォッチシリーズだ。1965年に国産初のダイバーズウォッチを発表して以来、セイコーは極限の状況に耐えうる時計を開発し続けてきた。その歴史は鉄道時計や国際スポーツ大会の公式計時など、プロフェッショナル向けの計測機器を生み出してきた背景とも重なる。今回は、そんなセイコー プロスペックスの現行モデルについて、種類とともに特徴や用途を紹介する。
セイコーのダイバーズウォッチ誕生60周年を記念して2025年に発表された限定モデル。(左)自動巻き(Cal.6R55)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm、厚さ13mm)。300m防水。世界限定6000本(うち国内2000本)。19万2500円(税込み)。2025年5月10日(土)発売予定。(右)自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.3mm)。300m防水。世界限定6000本(うち国内2000本)。24万7500円(税込み)。2025年6月6日(金)発売予定。
セイコー プロスペックスとは?
セイコー プロスペックスは、ダイビングや登山、ランニングといったアクティブなシーンでの使用に特化したスポーツ&アドベンチャーウォッチのシリーズだ。プロフェッショナルの要求に応えるため、高い耐久性や防水性能、視認性を備えたモデルも展開されている。1965年に発表された国産初のダイバーズウォッチを代表とし、セイコーは極限の環境に耐えうる時計開発を続けている。
セイコー プロスペックスのコンセプト
セイコー プロスペックスの基本コンセプトは「挑戦者たちのための腕時計」だ。単なる時刻表示の道具ではなく、セイコーのブランド哲学のもと、プロフェッショナルの活動を支える機器として設計されている。
例えば、プロフェッショナルダイバーからも信頼される、セイコー独自の厳しいダイバーズウォッチ規格に準拠した防水性を備えたモデルや、セイコーの計時技術とデザイン哲学が生んだ究極の実用時計として、優れた視認性と判読性、計測機能を追求したモデルが提供されている。
セイコーの「専用時計」の歴史と開発背景
セイコーは時計を単なる装飾品ではなく、特定の環境や用途に適した「専用機」として開発してきた歴史を持つ。その代表例が1965年に発表された国産初のダイバーズウォッチだ。当時プロのダイバーが使用する時計はほぼ海外メーカー製だったが、セイコーに届いた一通の投書から、日本人の体格や潜水環境に適した独自設計のモデルを開発し、業界に新たな基準を築いた。
その後も鉄道時計や国際スポーツ大会の公式計時を担当するなど、精度や耐久性が求められる場面で活躍する専用時計を多数手掛けてきた。特に国際スポーツ大会の公式計時を担った経験は、セイコーの技術力を世界に知らしめる大きなきっかけとなった。こうした歴史が、セイコー プロスペックスの開発にも生かされている。

ユニークな試み「専用すぎる腕時計展」とは?
セイコーは近年、「専用すぎる腕時計展」という展示会を開催した。このイベントは、セイコーのデザインの新たな可能性を提案するというコンセプトの「power design project(パワーデザインプロジェクト)」の一環であり、このプロジェクトのデザイナーが新しい「専用腕時計」を提案するというユニークなものだ。第2回が2024年12月20~2025年2月16日まで開催され、「ヴァンパイア専用腕時計」「ゆで卵好き専用腕時計」などが展示された。
このユニークな展示とともに会場には、同社がこれまで開発してきた多種多様な専用時計が紹介されたことも、時計ファンの間で話題となった。展示されたのは、鉄道時計や航空計器、深海探査用の特殊ダイバーズウォッチなど、それぞれの用途に特化したモデルばかりだ。
このイベントのプレス発表では、セイコーの開発陣が「セイコーは専用時計の開発において、長年の歴史と技術を蓄積してきた」と語っている。まさにセイコー プロスペックスは、こうした専用時計開発の系譜を受け継いだシリーズといえるだろう。特定の環境や用途に適した時計を作るという思想は、今も変わらず生き続けている。
第1回目の記事:https://www.webchronos.net/features/109151/
第2回目の記事:https://www.webchronos.net/features/131532/
現行セイコー プロスペックスの種類
セイコー プロスペックスは、ダイビング、トレッキング、スポーツといったさまざまなシーンに対応する多彩なラインナップを展開している。各モデルは特定の用途に最適化されており、防水性能や耐衝撃性、視認性などに優れた設計が施されているのが特徴だ。ここでは、現在のセイコー プロスペックスシリーズに含まれる代表的なモデルを紹介する。
「マリンマスター」。プロフェッショナル仕様のダイバーズウォッチ
「マリンマスター」は、プロフェッショナル向けに設計された本格ダイバーズウォッチだ。特に「マリンマスター プロフェッショナル」は、1000m以上の飽和潜水にも対応するモデルも発売されるなど、極限の環境下での使用を前提に開発されている。
マリンマスター プロフェッショナルの特徴は、セイコー独自のモノコックケース構造を採用している点だ。ケースと裏蓋を一体化することで高い防水性能を実現し、ヘリウムガスの影響を受けない構造となっている。また、プロ仕様の時計でありながら、機械式とクォーツ式の両方のモデルが展開されており、用途や好みに応じた選択が可能だ。

1975年に誕生した「セイコー プロフェッショナルダイバー 600m」がこの飽和潜水仕様のモデルの起源。当時、世界初のチタンケースを採用したダイバーズウォッチとして注目を集めた。現在もその技術を受け継ぎながら進化を続けている。自動巻き(Cal.8L45)。35石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約72時間。Tiケース(直径45.4mm、厚さ16.0mm)。600m飽和潜水用防水。世界限定600本。71万5000円(税込み)。
「ダイバースキューバ」。日常でも使える本格ダイバーズ
「ダイバースキューバ」は、日常使いにも適した本格的なダイバーズウォッチだ。200m防水を基本とし、セイコーの厳しいダイバーズウォッチ規格に準拠した高い耐久性を備えている。プロフェッショナル用途の「マリンマスター プロフェッショナル」と比較すると、ケースサイズがコンパクトで、より幅広いシーンでの使用が想定されている。
このシリーズの最大の魅力は、セイコーダイバーズの伝統的なデザインを踏襲しながらも、カジュアルな装いにもマッチする汎用性の高さだ。また、機械式ムーブメント、Cal.6R54を搭載したモデルは、約72時間のパワーリザーブを誇り、実用性にも優れている。

セイコーダイバーズの歴史は1965年の国産初ダイバーズウォッチから始まり、現在もそのDNAを受け継ぐ「ダイバースキューバ」は、多くのファンに支持され続けている。自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径42mm、厚さ13.3mm)。300m空気潜水用防水。世界限定6000本。24万7500円(税込み)。
「スピードタイマー」。セイコーのクロノグラフ技術を受け継ぐモデル
「スピードタイマー」は、セイコーのクロノグラフ技術を集約したシリーズだ。その名の通り、計時計測を目的とした機能を備えており、モータースポーツや陸上競技などでの使用も想定されている。
このシリーズのルーツは、1969年に登場した「1969セイコー 5スポーツ スピードタイマー」にさかのぼる。当時世界で初めての垂直クラッチ機構を搭載した自動巻きクロノグラフムーブメント、Cal.6139を搭載して大きな話題を呼んだ。現在のスピードタイマーシリーズにもこの伝統が息づいている。

現行モデルでは、メカニカルクロノグラフムーブメント、Cal.8R系を搭載した機械式モデルと、ソーラームーブメントを採用したモデルがラインナップされている。いずれも高精度な計測機能を持ち、スポーツシーンだけでなく、ビジネスシーンでも活躍するデザインとなっている。自動巻き(Cal.8R48)。34石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約45時間。SSケース(直径42mm、厚さ14.6mm)。10気圧防水。35万2000円(税込み)。
「アルピニスト」。山岳用ウォッチとしての歴史と特徴
「アルピニスト」は登山家のために開発されたモデルで、優れた耐久性と視認性を備えている。シリーズの歴史は1959年の「ローレル アルピニスト」にまでさかのぼり、当時から山岳地帯での使用を想定した設計がなされていた。
現行モデルにはアルピニストの伝統的なデザインを踏襲した機械式モデルが展開されている。特徴的なインナーベゼルと簡易方位計測用の回転リングを備えているのが特徴だ。また防水性能も20気圧と高く、アウトドアだけでなくタフな環境下でも安心して使用できる。

登山向けウォッチとしての実用性とクラシックなデザインが融合した「アルピニスト」は、アウトドア愛好者のみならず、多くの時計ファンからも支持されている。自動巻き(Cal.6R54)。24石。2万1600振動/時。SSケース(直径39.5mm、厚さ13.6mm)。20気圧防水。14万9600円(税込み)。
「スーパーランナーソーラー」。ランナー向けの高精度ウォッチ
「スーパーランナーソーラー」は、ランニングやマラソン競技に特化したモデルであり、軽量かつコンパクトなデザインが特徴だ。ソーラー充電機能を備え、長時間の使用が可能なため、競技中のバッテリー切れの心配がない。
このシリーズにはラップタイム計測機能やストップウォッチ機能が搭載されており、トレーニングやレース中の正確なタイム管理が可能。視認性を重視したデジタルディスプレイを採用し、日中でも時間が見やすい設計となっている

ランナーにとって重要なのは、腕時計の軽さとフィット感だ。スーパーランナーソーラーはストレスのない装着感を追求し、長時間の使用でも快適な設計が施されている。競技者から趣味のランナーまで幅広い層に適したモデルである。ソーラー(Cal.S690)。プラスチックケース(直径43.7mm、厚さ8.5mm)。10気圧防水。1万8150円(税込み)。
使用シーンに合わせてセイコー プロスペックスを買おう!
セイコー プロスペックスは、ダイビング、登山、ランニング、フィールドワークなど、それぞれの用途に特化したモデルを揃えたシリーズである。プロフェッショナル仕様の「マリンマスター」から、日常でも使いやすい「ダイバースキューバ」、ランナー向けの「スーパーランナーソーラー」まで、選択肢は幅広い。
腕時計は単なるアクセサリーではなく、用途に応じて最適な性能が求められる道具でもある。たとえば、本格的なダイビングには飽和潜水対応の「マリーンマスター プロフェッショナル」が、登山には高度や方位計測機能を備えた「アルピニスト」や「ランドマスター」が適している。自分のライフスタイルや活動内容に応じたモデルを選ぶことで、セイコー プロスペックスの本領を発揮できるだろう。「専用時計」を数多く生み出してきたセイコーの哲学と技術はプロスペックスに受け継がれている。機能美と耐久性を兼ね備えた本格仕様の時計を求めるなら、セイコー プロスペックスは間違いない選択肢だと言える。