先日、バーガンディーカラーをまとったチューダーの2025年新作「ブラックベイ 58」を深掘りした『クロノス日本版』エディターの鈴木裕之が、今度は「もうひとつの注目株」として「ペラゴス ウルトラ」を取り上げる。鈴木がチューダー史上最強のスペックと言う、その実力とは?
Text by Hiroyuki Suzuki
[2025年4月19日公開記事]
最強スペックをまとった新しいチューダー「ペラゴス ウルトラ」

チューダーの新作ラインナップの中で、もう1本の注目株が「ペラゴス ウルトラ」だ。こちらは500m防水の「ペラゴス」とレフティ仕様の「ペラゴス LHD」、ミリタリールックの「ペラゴスFXD」、そして200m防水の「ペラゴス39」というコレクションラインナップに新たに加わる、上位スペック機という位置付けだ。ペラゴス ウルトラに盛り込まれた防水性能は一気に1000mまで達し、ペラゴスファミリーの中では最強のスペックを誇る。

自動巻き(Cal.MT5612-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。Tiケース(直径43mm、厚さ14.5mm)。1000m防水。83万9300円(税込み)。
ペラゴス ウルトラのケースサイズは直径43mm、厚さは14.3mmで、ペラゴスとの比較では、直径の1mmアップに対し、厚さは0.2mmの増加に留まっている。バーガンディーカラーの「ブラックベイ 58」や、同じく43mmケースを採用した「ブラックベイ 68」と同様に、今年のチューダーは“プロポーションとしての薄型化”を強く意識しているようだ。
チタンケースの採用がペラゴスのアイデンティティーのひとつだが、ペラゴス ウルトラでは、ケースとベゼル、ブレスレットにグレード2の純チタン、ケースバックにグレード5の合金チタンを採用することで、外装のオールチタン化が成し遂げられている。500m防水仕様のペラゴスがスティールバックだったことを思えば、これは大きな進化だろう。ミドルケースとケースバックでチタン素材のグレードを変えているのは、スクリューバックによる素材の喰い付きとカジリを防止するためだ。もちろん9時位置には、飽和潜水に対応するヘリウムエスケープバルブが備えられる。
ケースサイズの拡大に合わせて、スノーフレーク針はやや大振りにリデザインされ、蓄光性セラミックスによるモノブロックのアワーマーカーとの組み合わせで適切な判読性を確保。暗所では時針と秒針、アワーマーカーとベゼルのダイビングスケールがブルー、ベゼル12時位置の起点マーカー(ルミナスポイント)と分針がグリーンに発光し、経過時間の測定というダイビングウォッチ本来の性能には寸分の抜かりもない。バックル部のダイバーズエクステンションも新設計され、新たにロゴと同色のビジュアルインジケーターも盛り込まれた。

ムーブメントも最強スペック
搭載される「Cal.5612-U」は、ムーブメント単体でCOSC認定のクロノメーター、ケーシングされた状態ではMETAS認定のマスター クロノメーターを取得。最強スペックとなった防水性とともに、実用域をはるかに超える耐磁性まで保証されている。
さらにもうひとつ。このモデルがMETAS認定を取得しているということは、防水性に関して言えば表示深度+25%のスペックが求められるわけで、実質的には1250m防水が確保されていなければマスター クロノメーターを名乗れない。ブランドリローンチから間もない2009年に、同社は1200m防水の「ハイドロノート 1200」を発表しているため、今回のペラゴス ウルトラは「ペラゴス史上の最高峰」を謳っているのだが、実質的にはチューダー史上最強のスペックを誇るということになるようだ。