ラッパー、プロデューサー、そしてBMSGのCEOとして音楽業界に革新をもたらすSKY-HI(スカイハイ)。メジャーとアンダーグラウンドの垣根を越え、自由なスタンスで独自の道を切り拓く彼の手首には、航空計器にインスパイアされたベル&ロスが輝く。ハイエンドでありながら軽やかな佇まい。時代の先端を行く両者が共鳴した理由とは。

Text by Yukaco Numamoto
土田貴史:編集
Edited by Takashi Tsuchida
[2025年11月2日掲載記事]
自由なスタンスで独自の世界を切り拓くSKY-HI
男女混合ダンス&ボーカルグループ「AAA」(トリプル・エー)のメンバーSKY-HIは、シンガーソングライターとしての顔を持ち、過去にはインディーズレーベルBULLMOOSEを主宰、トラックメイカーとしてはSOURCEKEY名義でも活躍する。ひとつのスタイルにとらわれず、これまでのアーティスト像にはない特異なスタンスで、音楽業界に新しい風を吹き込んでいる挑戦者だ。
その姿勢が象徴的に表れたのが、2020年に自ら1億円を投資して開催したボーイズグループ発掘オーディション「THE FIRST」である。当時、日本で音楽の才能に優れた人材がK-POP市場へと流出していく現状を危惧し、そうした才能が活躍できる場所を設けたいと、マネジメントレーベル「BMSG」を設立した。
半年にわたるオーディションから選ばれた7人組ユニット「BE:FIRST」が誕生すると、BMSGは設立4期目で純利益20億円を達成。その手腕は音楽業界にとどまらず、ビジネス界からも熱い視線を集めることとなった。
私財を投じてオーディションを行うことへの不安はあったと語るSKY-HIだが、その根底には音楽業界への揺るぎない情熱があった。「日本の芸能界的にも、音楽業界的にも、あと自分の心身的にも、これやらないともうダメだと思ったんで」。そう語るインタビューからは、彼の覚悟と使命感の強さが伝わってくる。
ジャニーズJr.時代からAAAを経て、経営者へ
SKY-HIの音楽人生は、意外なところから始まった。中学生の頃にジャニーズ事務所に履歴書を送り、ジャニーズJr.として活動していた時期もあったのだ。やがてラップに強い興味を持つようになり、エイベックスのオーディションをきっかけに2005年、AAAのメンバーとしてメジャーデビューを果たす。同じエイベックスグループに所属するアーティストのバックダンサーなども務めながら、着実にキャリアを積み重ねていった。
AAAは2020年の年末以降、活動を休止している。新型コロナウイルス感染拡大により、様々な音楽活動やエンターテインメント活動が自粛される中、SKY-HIがとったのは自宅からの生配信だった。そして2020年9月26日、自身の実家から行った配信ライブで“才能を殺さないために”をスローガンとした芸能事務所「株式会社BMSG」設立を発表。困難な時代にあっても、いや、困難な時代だからこそ、新たな才能を育てる場を作ろうとする彼の行動力には目を見張るものがある。
今年も年末に向けて各種音楽イベントが準備される中、ますます多忙を極めているだろうSKY-HI。すでに「COUNTDOWN JAPAN 25/26」などへの出演も決定しており、その活躍から目が離せない。
航空一家で育った環境がベル&ロスとの縁に
そんな多忙な日々を送るSKY-HIだが、彼のインスタグラムには、ベル&ロスの腕時計を楽しむシーンが投稿されている。日本国内限定99本で販売されたアンバーカラーの「BR05 GMT AMBER」を着用し、ダイアルカラーと同じトーンのニットと合わせてリラックスしたムードを醸し出している1枚だ。
彼の父は元パイロットであり、母は元キャビンアテンダント。子どもの頃には父に小型機に乗せてもらった思い出があるSKY-HIにとって、航空機にインスパイアされたベル&ロスの店内は、ただならぬ親近感を感じる空間だったに違いない。
時代の気分に寄り添う時計、BR 05 GMT AMBER

自動巻き(Cal.BA325)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約42時間。SSケース(直径41mm、厚さ11.07mm)。100m防水。日本限定99本。68万2000円(税込み、発売当時)。
SKY-HIが着用する「BR 05 GMT AMBER」は、2022年に日本限定で発売されたモデルだ。日本の伝統色である琥珀色(アンバー)を組み合わせたカラーリングが特徴であり、その落ち着きと華やかさが同居した色合いは、まさに日本の美意識を体現している。
BRシリーズが登場したのは2005年。航空計器をモチーフとした特徴的なスクエアケースにラウンド文字盤が納められ、4隅にビスで留められたデザインは一目でそれと分かる個性を放つ。ミリタリーテイストが感じられながらも洗練された都会的な雰囲気も漂う、ブランドの核となるコレクションだ。基本のデザインコードを長年崩すことなく、多くのファンの心を掴み続けているところも特筆に値する。
SKY-HIはかつて、こう語っている。「時代のムードもありますが今、お洒落を楽しむときは、人に圧を与えず抜けや軽さを出すのかを意識しています。ただ、ヌケ感や軽さは軽薄さと隣り合わせだから、バランスが難しい。その意味でいうと、この時計はハイエンドな時計本来の重さがありつつも爽やかさが感じられる……」
ベル&ロスに強い共感を持っていることがうかがえるコメントである。そのうえ航空計器を思わせるダイアルデザインが自身のルーツと重なり合うのである。それは、単なる時計選びを超えた、深い縁なのかもしれない。
時代の流れを敏感に感じ取りながらも自分を貫くBRシリーズとSKY-HI。そのあり方は、まさに共鳴し合うかのようだ。本流を歩みながらも決して重くならず、洗練された軽やかさを纏う。
あらゆる側面で時代の先端を行く両者だからこそ、惹かれ合うのは必然なのだろう。



