『クロノス日本版』の精鋭?エディターたちが、話題の新作モデルを手に取り好き勝手に使い倒して論評する大好評の連載企画。
今回のテスト機は、ソニーが展開するハイブリッド型スマートウォッチ「wena wrist」。
想い入れある時計をスマートウォッチ化できるという、ブレスレットの実力は?
Text by Yuto Hosoda(Chronos-Japan)
急速に広まったスマートウォッチ
急速に広まったスマートウォッチ。言うまでもなくその原動力となっているのはApple Watchだろう。しかしながら、スマートウォッチというデバイスに対する明確な定義はいまだ定まっておらず、また「スマートウォッチとはこうあるべき」という世間の需要もはっきりと定まっていない状態だ。そのためさまざまなメーカーが、それぞれのアプローチをもって多種多様なプロダクトを投入しているのが現状と言える。
とはいえ、現在スマートウォッチのジャンルで成功を収めているものの多くは、本体そのものに通信機能やアプリケーションを備えているタイプだ。例として本誌「クロノス日本版」2018年1月号でも取り上げたタグ・ホイヤー「タグ・ホイヤー コネクテッド モジュラー 45」、ルイ・ヴィトンの「タンブール ホライゾン」などが挙げられる。そして、これらの多くはスマートフォンとの連携を前提としている。しかし、スマートウォッチ単独での使用を前提としたApple Watch 3が登場したので、このタイプのスマートウォッチの在り方も変わっていくに違いない。
しかしながら、先にも述べたようにスマートウォッチはさまざまな形態のものが存在している。そして上に挙げたようなものとも、それ以外のスマートウォッチとも一線を画す、独特の商品展開を行なっているのがソニーの「wena wrist」だ。今回はこのwena wristをしばらくの間装着する機会を得たため、その使用感をリポートしたい。
ソニーの「wena wrist」
ソニーが販売するwena wristはブレスレットに電子マネー機能や活動ログ機能を付帯させたハイブリッド型スマートウォッチだ。この製品の利点はブレスレット側にスマートウォッチとしての機能を集中させているため、どんな腕時計であろうともwena wristを装備さえしてしまえばスマートウォッチのように使用できる点にある。そのため機械式時計を好む人はもちろん、その日のスタイルやTPOに合わせて時計を選びたいという、腕時計というツールに対して想い入れを持っている人にこそ受け入れられるだろう。また、2017年8月に東京・渋谷区の代官山T-SITEで開催された「おもいでの時計店」(詳細はこちらの記事を参照)にてソニーが打ち出した、「思い出の時計を最新デバイスとして蘇らせる」というコンセプトが示す通り、デバイスの進化によって陳腐化しやすい大多数のスマートウォッチとは対照的に、wena wristは時計そのものを長く愛用できる点も魅力と言える。
ロンジン「レジェンドダイバー」に装着
前置きが長くなったが、本題に移る。まずインプレッションを行うにあたって、wena wristを装備する時計を選定する必要がある。wena wristのブレスレットは厚みがあり、少しマッシブなイメージであることから合わせるヘッドにスポーツウォッチを今回は選びたい。それもwena wristの「古くなった時計を最新デバイスで蘇らせる」というコンセプトに沿うように、アンティークウォッチを、といきたかったが、残念ながら条件に合う時計を自分は持ってはいなかった。そのため、前回のインプレッションから編集長に借りっぱなしのロンジン「レジェンドダイバー」を再度使用することにした。ケース径42mm のレジェンドダイバーならばガッチリとしたwena wristと組み合わせてもバランスが取れ、かつ見た目も1960年代に販売されていたオリジナルにそっくり、すなわちアンティークウォッチのような風貌だからだ。