Q:買ったばかりの機械式時計が遅れてしまうのですが、何が原因ですか?
時計が遅れてしまう原因
A:昔の機械式時計は、姿勢による精度への影響(姿勢差誤差)が大きいため、持ち主の使い方と合わない場合、大きく狂うことがあります。しかしこういったケースでは、例えば時計を保管するときの向きを変えるだけで、精度を戻せることがあります。
一方、現行品の機械式時計は姿勢差誤差が小さいため、使う人によって精度が大きく変わることはありません。むしろ遅れの原因は、大半が磁気帯びです。手帳タイプのスマートフォンカバーや、かばんの留め金、Apple Watchの充電器などには強力な磁石が内蔵されています。これらに近づけると、機械式時計は磁気帯びをし、精度が低下します。機械式時計の愛好家ならば、マグネット付きのものは持たないこと。筆者の個人的な経験を言うと、中古で販売されているほとんどの機械式時計は磁気帯びしています。
現行品の普通の時計ならば、約4800A/m(アンペア毎メートル)という耐磁性能を持っています。しかし今の強力な磁石の前では、このスペックではほぼ無意味です。
おすすめの耐磁時計
もし、日常生活の中で磁気帯びを気にせず機械式時計を使用したいという方には、耐磁時計をお薦めします。現行品で最も高い耐磁性能を持っているのは、オメガの「マスター クロノメーター」を搭載したモデルです。理論上、1万5000ガウス(=約119万4000A/m)以上の磁気にさらされても帯磁しません。ちなみに1万5000ガウスという磁気は、MRIの発生させる強力な磁場に相当します。まさに究極の耐磁時計と言えるでしょう。ほかの耐磁性能を持った代表的な機械式時計では、ボーム&メルシエの「クリフトン ボーマティック」が1500ガウス(11万9400A/m)、ロレックスの「ミルガウス」が1000ガウス耐磁(=約8万A/m)までの磁気に耐えることができます。一般的には、8万A/m以上の耐磁を持っていれば、日常生活で問題になることはほぼないでしょう。
時計が帯磁した場合の対処方法
時計が帯磁した場合は、時計店に持ち込んで磁気抜きすることをお勧めします。
※参考記事:知られざる高耐磁時計の真価 Part.1