Franz Linder
フランツ・リンダー
Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
リアルウォッチファンを
増やすのが
ミドーの役割です
「ミドーは中国でリーディングブランドになりました。しかし、日本は最も重要なマーケット。だから日本市場に再参入を果たしました」。そう語るのはミドーのプレジデント、フランツ・リンダーだ。
「中国ではクラシックなモデルが売れるが、『オーシャンスター』や『マルチフォート』のようなスポーティーなモデルは日本でも支持されるでしょう。これらはレトロな見た目を持つだけでなく、アイコニックでもあります」
今のミドーはスウォッチ グループの恩恵を受けて、良質な実用時計を作るに至った。加えて、彼が強調したように、ユニークなモデルが多い。実用時計だからといって、ユニークさを忘れていないところに、このブランドの面白さがある。しかし、2015年に再参入を果たして約3年ということもあり、日本での取り扱い店舗はまだ23のみだ。
「良い腕時計を作っていても、ビジビリティがないと認知されないので、取り扱い店舗を増やす予定です。ただ日本のマーケットは競争が激しいので、普及には時間が掛かるでしょう」。とは言いつつ、「取り扱い店舗をこの5〜10年で50〜100に増やしたい」と言うから、かなり野心的な計画だ。
「ブレゲなどのハイエンドブランドは居心地のよいブティックを作っていますが、私たちの顧客に望まれるとは限らないですね。というのも、ミドーはミドルレンジのブランドであり、普通の人々をターゲットにしているからです。普通の人にとって、ハイエンドなブティックの居心地は必ずしもよくないかもしれない。だからショップにドアは設けないつもりです。私たちはふらっと腕時計を見に来られるようなショップにしたいのです。顧客に対して、門戸は常に開けていたい」
今の時計作りを続け、入りやすいショップを増やせば、なるほどミドーは日本でも支持されるに違いない。しかし、もうひとつ気になる点がある。2017年の1月1日に施行された、新しいスイスネス法だ。「ムーブメントの60%以上、外装の60%以上がスイス製(いずれもコストベース)でなければスイスメイドを名乗れない」という法律は、スイスのエントリークラスに大きな影響を与えつつある。現に、いくつかのブランドはモデル数を減らし、またリシュモン グループは、スイス製ではなくオランダ製の「ボーム」というブランドを立ち上げた。同じエントリークラスにあるミドーはどう対応するのか?
「私たちはスイスブランドです。今やオランダで製造したノンスイスのブランドなどもありますが、腕時計に1000ドル払う消費者ならば、スイスメイドを選ぶのではないですか。ブランドはクォリティに注力すべきであって、スイスメイドは、そのひとつの基準でしょう。私たちは以前もスイスメイドの基準を満たしていましたし、これからも変わりません」
今後も、この価格帯とスイスメイドをキープすると語るリンダー。「最初に買った時計が、魅力的な機械式腕時計ならば、顧客はやがてリアルウォッチファンになってくれるかもしれません。そういう層を掘り起こすのが、ミドーの役割でもあると思っています」。
Contact info: ミドー/スウォッチ グループ ジャパン Tel.03-6254-7190