腕時計のスペック表記で見かける防水性能「m」と「気圧」表記の違いとは?

2023.02.03

今ではほとんどの時計が防水性能を備えているが、ブランドやモデルによって、○○気圧防水や○○m防水といった防水性能の表記が2種類ある。この表記の違いとは何なのかを解説しよう。

2020年11月23日公開記事
2023年2月3日更新


1気圧防水≒10m防水?

ヴィンテージモデルや複雑なコンプリケーションを除き、現行品の時計は防水性能を備えたものがほとんどだ。薄型のドレスウォッチは3気圧、実用性を重視したツールウォッチは10気圧、本格的なダイバーズウォッチであれば300mなど、ブランドやモデルによってさまざまだが、少なくとも非防水であるものは非常に少ない。

防水のためのパッキンが入っていないような非防水の時計は、主にヴィンテージウォッチである。仮に防水性を持つモデルであっても、古いものであればパーツの劣化により防水性能を保っていないものが多い。汗をかく夏を避け、雨の日は着けないなどの配慮が不可欠だ。

 時計のスペック欄を見ると、防水表示にはメートル表記と気圧表記のふたつがあることに気づくだろう。簡単に言えば、m表記はどのくらい潜れるか、気圧はどのくらいの圧に耐えられるか、を表す。1気圧≒10m防水と考えれば、10気圧防水の腕時計は、約100m防水性能がある、とみなしてよい。

 では、10気圧、100m防水の腕時計は、本当に100m潜って問題ないのか。理論上は可能だが、実際は難しいようだ。

 というのも、潜って動いた際には、静止している時の水圧以上の圧力が掛かるため、腕時計へ生じる実際の負荷は、水深以上に高くなる。そのため多くのブランドは、可能な限り高い防水性能を与えようとしている。

オーシャン2000

極端な例のひとつが、1982年にIWCがポルシェデザインとのコラボレーションにより生み出したダイバーズウォッチ「オーシャン2000」だ。ドイツ軍向けに作られたもので、軽量なチタンを外装に採用していることが特徴。軍の要請により2000mもの防水性能を実現し、当時としては画期的なダイバーズウォッチだった。本来の用途は、数十メートルの水深で使われるにもかかわらず、である。

 このように、水圧を考慮すると10気圧防水、100m防水で使えるのは、せいぜい水遊び程度が限度だろう。それ以下の防水性能、例えば30mや3気圧防水などの腕時計は、基本的には防汗程度の性能と考えるべきだ。

 もし本格的にアウトドアや水回りで着用したいなら、こういった「防水時計」ではなく、ISOとJISが定義する「潜水時計」を使うべきだろう。これらは本格的なダイバーズウォッチの見た目を持ち、防水表記がメートルという特徴がある。

潜水時計

JIS(日本工業規格)とISO(国際標準化機構)では、潜水時計に対する定義が明確に定められている。「JIS B 7023」および「ISO 6425」では、100m以上の防水機能を有していることが数ある要求事項のうちのひとつとして挙げられている。写真は300mの防水性能を持つパネライ「ルミノール サブマーシブル1950 アマグネティック スリーデイズ オートマティック チタニオ - 47mm」を着用してアイスダイビングをしているシーン。


防水性能は高いに越したことはない

 日常生活において腕時計を着用するうえで、防水であることは必須と言ってもよい。気をつけていても水に接触する場面は多く、手や顔を洗ったり、外出先で消毒をしたり、突然雨に打たれることもあるだろう。

 精密な機械を積んだ腕時計は、本来水分に弱いものである。水分が内部に入ってパーツが濡れたり、水分が蒸発して水蒸気になると、金属製のパーツは錆び、オイルは本来の性質を発揮できなくなる。特にはオーバーホールだけでは済まず、パーツの交換が必要になる事態も発生する。

ケースバック

着用するうえで、その時計の防水性能を知っておくことも重要だ。防水性能は時計のケースバックに記載されていることが多く、日常生活用の防水表示はbar(バール)やatm(アトム)、潜水用の防水表示はm(メートル)やft(フィート)で表記される。左はブライトリング「ナビタイマー B01 クロノグラフ」。12時位置に「3BAR」の表記があり、3気圧防水を表す。また右のオメガ「シーマスター アクアテラ」は、6時位置に「150m/500ft」と2種の表記がある。

 防水性能を持った時計であっても、衝撃や磁気などと同様に、水分に気を遣って着用することが望ましい。ライフスタイルに合わせて時計を使い分けるなど、ある程度の配慮が必要だ。


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