2020年6月23日公開記事
Q:機械式の時計に使われるエボーシュとは何ですか?
A:今はムーブメント専業メーカーが作った汎用ムーブメント
そもそもエボーシュ(ébauche)とは、フランス語で「下書き」「草稿」「素描」を意味し、時計の世界ではムーブメントの半製品をこう呼びます。
今はムーブメント専業メーカーが作った汎用ムーブメントのことを指します。現在、エボーシュを作るメーカーには、ETA、セリタ、ソプロード、コンセプト、シーガル、ミヨタ、セイコーインスツルなどが挙げられます。そして、それらが製造するエボーシュの多くは、各時計メーカーの量産モデルに使用されます。
しかし、中には高級時計に載るようなエボーシュばかりを製造するメーカーもあります。そして、その中で最も知られているのが、エルメスやリシャール・ミルなども採用するヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエです。なお、リシュモン グループは傘下のヴァル フルリエが製造するエボーシュに改良を加えて、“自社製ムーブメント”とする場合が多いです。また、スウォッチ グループの時計メーカーも、グループ内のエボーシュメーカーの協力を仰ぐことで、エボーシュを改良した、独自のムーブメントを載せるようになりました。他のメーカーに同じムーブメントが提供されていない場合、“自社製ムーブメント”と見なして良いでしょう。
スウォッチ グループ傘下のロンジンは、同じグループに所属するETAのエボーシュを改良した専用ムーブメントを採用する。手の入れ方を考えると、ETA製エボーシュというよりも、ロンジンの独自ムーブメントと呼ぶにふさわしい。写真はETA7750のクロノグラフプッシャーをシングルプッシュ式に改め、コラムホイールを加えてクロノグラフ機構やパワーリザーブを改善したCal.L788.2。