8年目を迎えた、銀座という街に相応しいエレガントなイタリア料理店。特別な時間を演出しながらも、温かなもてなしが人々を魅了する。
三田村優:写真 Photographs by Yu Mitamura
豚肉の肩ロースと皮付きのバラ肉を、ローズマリー、フェンネルなどと巻いて1日寝かせて馴染ませてから、じっくりと9時間かけて火を入れている。赤タマネギやラディッキオを添え、華やかな印象に。
「クロディーノ」という店名に、こちらの物語が込められている。オーナー黒田敬介氏は、フィレンツェの「エノテカ・ピンキオーリ」本店で研鑽を積んだ腕の持ち主ジョルジョ・ピンキオーリ氏に初めて会った日に付けられた愛称が、クロディーノ(小さな黒田)だった。帰国すると「エノテカ・ピンキオーリ」東京店の開業からシェフソムリエとして活躍。その3年後、当時20歳だった丸山孝一氏と出会い、共に歩み、「エノテカ・ピンキオーリ」東京店の約20年間の歴史に幕が閉じるのを見届けた。
それから「リストランテ クロディーノ」が開業するまでの3カ月間、丸山氏は、ペンナビーリという山間の街にある「イル ピアストリーノ」で働くためにイタリアへ渡る。初日の夜、営業が終わってスタッフが店で予期せぬ歓迎会を開いてくれた。その時に登場したのが豚を丸焼きや大きな塊でローストして、皆でシェアする「ポルケッタ」だった。「にぎやかに料理を囲んだ時間とその味は、鮮明に記憶に残っています。今もホームパーティーでもよく作りますが、やはり盛り上がりますね」とほほ笑む。
過日、とある食のイベントに同リストランテが参加した。そのイベントで設定されたテーマは、「シェフが自分のお祝いに食べたい一品」。丸山氏が選んだのは、自身の思い出が重なるポルケッタだ。しかし、ご覧の通り、一般的にイメージする丸太のような豪快な料理ではない。こちらは「リストランテ クロディーノ」で以前より愛されている定番メニュー。「塊で焼いたポルケッタを薄くスライスし、脂が固まらない心地よい温度で、サラダ仕立てにしています」。ポルケッタの個性を活かしながら、非常に軽やかな口当り、ぜひご体験いただきたい。この一皿からも伝わってくるが、最高峰やクラシックを心得ているからこそ、上質なカジュアルを表現できるのだ。
1975年、埼玉県生まれ。辻調理師専門学校フランス校卒業後、1995年に「エノテカ・ピンキオーリ」東京店入社。2000年にはフィレンツェ本店に7カ月間パティシエとして派遣され、2005年からは東京店のスーシェフとして腕を振るう。2011年、「リストランテ クロディーノ」銀座店のシェフに就任。
東京都中央区銀座3-4-17 銀座オプティカ6F ☎ 03-5579-9815
ランチ:金、土、祝日11:30〜14:00(L.O.)
ディナー:18:00〜21:30(L.O.)
定休日:日曜日、第1・第3月曜日
ランチ:1950円~、ディナー5850円~(いずれも税込み)