TUDOR ARRIVAL!
1970年代までは輸入されていたが、以降、日本市場とは縁のなかったチューダー。しかし2018年の10月、待望の再上陸を果たすこととなった。メインとなるのはスポーツモデルの「ブラックベイ」と「ペラゴス」。改めてその歩みを振り返るとともに、両コレクションの概要を解説したい。
広田雅将(本誌):取材・文 Text by Masayuki Hirota (Chronos-Japan)
長年、日本への入荷が待ち望まれていたチューダー。ロレックスのディフュージョンと見られがちだが、実のところ、現代のチューダーはロレックスとはまったくの別物といってよい。2007年のグローバルリローンチ以降、チューダーは時計好きをくすぐるディテールを盛り込む一方、実用時計としての基本を磨き続けてきた。
大きな誤解をされているが、チューダーは1926年2月に、スイスの腕時計メーカーである「ヴーヴ ドゥ フィリップ ヒュンター」が、ロレックスの創業者であるハンス・ウイルスドルフの代理で設立した会社だった。彼は、その商標を36年10月15日に自身の名義で再登録、46年3月6日に〝モントレ チューダー SA〞を設立した。その際に重要だったのは、すでに時計メーカーとしての名声を得ていたロレックスが、チューダーの技術的、審美的、機能的な要素を担保し、加えて、供給とアフターサービスも担ったことだった。
「私は、何年もの間、ロレックスの技術と信頼を持って、価格以上の価値を持った腕時計を創りたいと思ってきた」(ハンス・ウイルスドルフ)
ウイルスドルフが考えたのは、ロレックスと同等の信頼性と異なる価格を持つ腕時計だった。1952年、チューダーは「チューダー オイスター プリンス」を発表。ウイルスドルフは、広告の中でこう述べている。「私は、チューダー プリンスに、私が他のいかなる時計にも使うことを許可しないふたつの利点を、ロレックス同様に持たせようと決めました。つまりは、著名で独創的な防水性のあるオイスターケースと、独自の自動巻き機構〝ローター〞です。(中略)私はこの時計を推奨できることを誇りに思います」。
(右)1954年、チューダーはダイバーズウォッチの「オイスター プリンス サブマリーナー」(Ref.7922)を発表した。写真のモデルは、翌年追加された「オイスター サブマリーナー」(Ref.7923)。自動巻きのCal.390ではなく、手巻きのETA1182を搭載し、58年には200m防水へと進化する。
(右)「オイスターデイト “モンテカルロ“」(Ref.7169/0))は、チューダーにとって第2世代のクロノグラフであり、以降の祖となったモデルでもある。ムーブメントにはバルジューの234を採用。1976年にはバルジュー7750を採用し、「チューダー プリンスオイスター デイト」となった。