時計の夜光塗料が光らなくなった。その理由は?

2021.06.06

Q:時計の夜光塗料が光らなくなったのですが、なぜ?

 暗がりでも時間を読み取りやすくしてくれるのが、夜光塗料。でも、古い時計の中には、すでに光らないものもあります。理由は、自発光のトリチウムを使っているため。放射性物質のひとつであるトリチウムは、崩壊しながら発光するβ線を放射し、やがて発光しなくなります。その期間は約10年間。トリチウムを使った時計は、文字盤の6時位置に「T」マークがあります。なお、トリチウムはかなり安全な物質ですが、基準の厳しい日本では、β線の総放出量を25マイクロキュリー(=925キロベクレル)以下にすることが求められていました。このようなトリチウムを使った場合、文字盤6時位置下の表記は「T25」となります。

 一方、今使われている夜光塗料には、自発光ではなく、外からの光を蓄積して発光する蓄光塗料が多く用いられます。そして、その大半は根本特殊化学のN夜光(ルミノーバ)です。これら蓄光塗料の素材は、主にアルミ系。そのためトリチウムのように崩壊することなく、熱や水にも強いです。また、経年劣化によって塗られた塗料の色が変わることもありません。ただし、蓄積した光を放つので、時間がたつとだんだん光量は落ちてきます。その場合、事前に光を十分に当てておくとよいでしょう。

 なお、かつてルミノーバでは緑色の蓄光塗料しか作れませんでしたが、技術の進歩に伴い、今では白の蓄光塗料や、赤、黒といったものも見られるようになりました。一部のルミノーバを使った時計には、文字盤に「L」の表記が入れられています。

スーパールミノヴァ®︎をダイアルに使用するパネライ「ルミノール サブマーシブル1950 アマグネティック スリーデイズ オートマティック チタニオ - 47mm」。潜水時間に関する表示要素を青色の塗料で、それ以外の要素を緑色の塗料に塗り分けることで視認性を向上させた。