ここ何年かで時計業界に広まっていたヴィンテージ風デザインの流行からは、歴史的な名モデルの現代的解釈版とも呼べるものがいくつか発表された。そのようなヒストリカルピースにインスパイアされた特徴ある腕時計を紹介する。
Text by Mark Bernardo
オメガ 「グローブマスター」
オメガ「グローブマスター」は、このブランドで最初にC.O.S.C.認定を受けた時計だが、オメガのプロダクトポートフォリオの中では技術的には新しいモデルに入る。しかしそのデザインは、1952年発表の「コンステレーション」を反映した"pie pan(パイ焼き用のパン)"ダイアルから着想を得ている。フルーテッドベゼルは1968年発表の別のコンステレーションからのものだ。直径39mmのケース(ステンレススティール、イエローゴールド、スティールとイエローゴールドのコンビ、そしてオメガ特許のセドナゴールドがある)はヘアライン仕上げが施され、ポリッシュ仕上げの斜めのエッジがラグをベゼルと繋いでいる。キャリバー8900はC.O.S.C.認定を受けているだけでなく、オメガとスイス連邦によって確立された計測機関で、1万5000ガウスの磁場においても正常に機能することが認められている。
チューダー 「ヘリテージ クロノブルー」
チューダーの「ヘリテージ クロノブルー」は、チューダーが1971年に発表したクロノグラフ「チューダー オイスターデイト ”モンテカルロ”」を再解釈したものである。「モンテカルロ」の愛称は、そのダイアルがカジノのルーレット盤を思い起こすデザインであるために付けられた。3時位置のスモールセコンドと9時位置の45分積算計を、それぞれ台形のブルーカラーが囲う特徴的なデザインだ。同色のスティール製ベゼルや、アクセントとなるクロノグラフ秒針と目盛りのオレンジ色、6時位置の日付表示など、オリジナルの意匠を色濃く継いでいる。リュウズはねじ込み式で、150mの防水性を確保する。
ブライトリング 「トランスオーシャン クロノグラフ 1915」
ブライトリングの「トランスオーシャン クロノグラフ 1915」はブライトリング誕生100周年を代表するモデルと呼べるもので、現代のクロノグラフとして引き合いに出されることも多い。1915年、創業者レオン・ブライトリングの息子ガストン・ブライトリングは、時間計測を目的に、スタート、ストップ、帰零までをプッシャーで行うクロノグラフの時計をデザインした。そのプッシャーはリュウズのちょうど上、2時位置に配された。この位置のプッシャーは手首に装着したまま状態での操作性に優れ、すぐに他モデルでも応用されていった。今回の限定モデルにはそうした誕生背景があり、文字盤と2時位置にプッシャーを備えるケースデザインは当時の「トランスオーシャン」コレクションの要素を保ちながら現代的解釈が加えられている。シルバーカラーの文字盤は2つ目の構成となっており、それぞれスモールセコンドのサブダイアルは9時位置、30分積算計は3時位置に配されている。搭載されているのは、C.O.S.C.認定を受けた自社製キャリバーB14だ。
ロンジン 「ロンジン パルスメーター クロノグラフ」
医療関係者が使用することを想定してデザインされた、ロンジンの「パルスメーター・クロノグラフ」は1920年代に発表された時計がベースとなっている。「ドクターウォッチ」と呼ばれるこの時計は、ラッカー仕上げのホワイト文字盤の外周部分に赤でパルスメーター・スケールが印刷されている。リュウズひとつで操作できるクロノグラフのスイープセコンド針を使って、測定者の脈拍を簡単に確実な方法で測ることができるのである。ステンレススティール製ケースに取り付けられた風防とケースバックはサファイアクリスタル製で、ETAによって開発されたロンジン専用のコラムホイール式クロノグラフムーブメントL788.2を搭載する。