現在では手首に時計を着用するのは一般的であるが、100年前はそうではなかった。1914年に始まり1918年に終戦を迎えた第1次世界大戦では、飛行機、化学兵器、戦車など、それまでになかった多くのものが戦場に投入された。広く使われていた懐中時計に代わり登場した腕時計は軍事的需要を伴い、新しいものとして市民の生活に取り入れられた。兵士は腕時計を着用するという新習慣とともに戦場から帰還したのである。腕時計の歴史を語るということは、現代生活の一部ともなった発明について語るということでもある。ここでは、腕時計の歴史の中でも約100年間に見られる、10のマイルストーンについて語りたい。
1.ブライトリングのクロノグラフ
1915年にブライトリングは、デュボア・デプラの創業者、マルセル・デプラとの共同開発により、手首に着用できる腕時計クロノグラフの先駆けとなる1本を発表した。16リーニュのムーブメントを内蔵するこのクロノグラフはそれまでの懐中時計とは異なり、巻き上げ用のリュウズとは別に2時位置にクロノグラフ専用のプッシュピースを備えた。
2.カルティエのタンク
1919年にカルティエはタンクを発表した。ケースサイドの形状は第1次世界大戦で使用された戦車から着想を得たと伝えられている。
3.ルクルトとジャガーのレベルソ(LeCoultre & Cie. and Jaeger Reverso)
1931年、スイスのルクルトとフランスのジャガーの共作によってレベルソが誕生する。時計をケースのサイドにスライドさせて反転し、風防を外的衝撃から保護することができる(ふたつの会社は1937年に合併した)。
4.ジョン・ハーウッドによる巻き上げ機構
1926年にフォルティスが草創期の自動巻きローター搭載の腕時計を発表する。この巻き上げ機構を考案したのは英国人時計師、ジョン・ハーウッドで、そのベースとなったのは18世紀にアブラアン-ルイ・ペルレが懐中時計に搭載したものであった。
5.IWCの最初のパイロットウォッチ
1936年、その後のパイロットウォッチの方向性を決定づけるパイロットウォッチをIWCが発表した。この時計は経過時間を測定するための回転ベゼルを搭載していた。
6.A.ランゲ&ゾーネの工房が爆撃を受ける
1945年、当時のソビエト連邦軍の爆撃によってドイツ・グラスヒュッテにあったA.ランゲ&ゾーネの工房は、ほとんど壊滅状態となる。この出来事は、休戦協定が結ばれるわずか数時間前のことであった。
7.初めての自動巻きクロノグラフ
1969年、世界で初めての自動巻きクロノグラフが発表される。最初に市場を揺さぶったのはキャリバー6139を搭載したセイコーであり、もうひとつはゼニスの「エル・プリメロ」である。その次に挙げられるのはホイヤー・レオニダス、ブライトリング、デュボア・デプラ、ビューレン、ハミルトンの共同開発によるキャリバー11であった。
8.ジャン-クロード・ビバーとジャック・ピゲによるブランパン買収
1983年、ジャン-クロード・ビバーとムーブメント工房のフレデリック・ピゲを率いるジャック・ピゲが、消滅しかけていたブランドのブランパンを買収し、フレデリック・ピゲのムーブメントを搭載した機械式時計ブランドとして、再び世に送り出す。
9.SMH、現在のスウォッチ グループの誕生
1983年、財務的問題を抱えたスイス時計のコングロマリット、ASUAGとSSIHが合併してSMH(Société Suisse de Microélectronique et d’Horlogerie)となる。この会社は現在スウォッチ グループとして知られ、合併に関わったニコラス・G・ハイエックがCEOとなる。
10.ロレックスの自社開発ムーブメント搭載コスモグラフ デイトナ
ロレックスは自社製キャリバー4130を搭載した、新しいバージョンのコスモグラフ デイトナを発表。これによって、すべてのロレックスの機械式時計はすべて、自社製ムーブメントを搭載することとなった。